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第466話 ……スタンドバトルか!

 この公民館は元々、小さな避難所として建てられたらしい。


 約6~7人が生活できる環境が整っており、1階建てで共同広間と台所は同じ空間にある。トイレは男女で分けられているが風呂は一つしかない。

 風呂が一つはかなり不便であるが、人が常に住む事は考えてられてない故の経費削減らしい。


 今は避難所と言うよりは、行事なんかで用意した小道具の収納倉庫みたいになっている。


「まぁ、風呂があるだけマシだよなぁ」


 オレは天月さんが出たのを聞いて、男性陣で最後の入浴者として風呂に入る。

 熊吉は仕留めたとは言え、まだ巨熊は残っている。明日である程度の結果を見るまでは現状維持が良いだろう、と言うばっ様の判断だ。


「あーこれよ、これ。超久しぶり」


 田舎風味の碁石の様なタイルに二人で窮屈になる広さは懐かしさの極み。浴槽に関しては足を伸ばせる程度には広いが基本的には一人用だ。


「ふむふむ。OK」


 シャンプーやボディソープなんかのコンディショナー関係は女性用と分けられている。

 わざわざ、男は使うな! と張り紙まである始末。男は石鹸が置かれているので、これで洗顔と身体を擦れって事らしい。


「そういや、管理室に死ぬ程石鹸あったな」


 文明が発展し過ぎたせいで中々消耗されない石鹸は今や日陰で眠る。しかし、こんな時には大活躍なので、生産が細くなっても無くなる事は無いだろう。


「よし」


 女性陣も控えているで、オレは最後に浴室をある程度は洗ってから出る予定だ。

 外からの客にやらせるのは、って判断なんだろう。昨日までは男性陣の最後ではジジィがやってたらしく、平等に労働する様は心からリスペクトしてますよ。


「♪~♪~」


 オレは男用に用意された500円のシャンプーでワシャワシャと頭を洗っていると、


「ケンゴ様……少々よろしいでしょうか?」


 おん? この声は……アヤさんか。まぁ、ケンゴ様、なんて呼ぶのは世界で彼女くらいだし。


「ちょっと待って。今頭洗ってて超絶身動き取れないから」


 何か聞きたい事でもあるのだろうか。特に重要な事で無ければ後にしてもらおう。

 オレは泡が目に入らない様に視界がブラックアウト中。


「……少々……失礼してもよろしいでしょうか?」

「別に良いけど。ちょっと待って。もう頭は洗い終わるからさ」


 手探りでシャワーのお湯を捻る。自動で適温が出る、謎にハイテクな部分な感謝しつつ泡を洗い流してアヤさんの用件に向き直る。


「どうしたの? 何か分からない事でも――」

「…………」


 振り向くとそこには顔を赤くして、胸の上からをタオルで隠したアヤさんが立っていた。WHY? なぜ君がここに?


「……え? オレ……そんなに長湯しちゃった?」


 いつの間か、キング○リムゾンを食らって、女性陣も我慢できない程に長湯してしまったらしい。これが……スタンドバトルか!


「い、いえ……お背中をお流しに来ました!」


 意を決した様にそう言うアヤさん。

 ナンデ? ナンデそうなるの? ……オレは状況を理解するのに頭がフル回転。全ての思考を状況認識に回す。


 オレは椅子に座った状態なので、アヤさんを見上げる形だ。

 綺麗な肌やタオル越しでもわかるスタイルは、ショウコさん程にグラマラスでは無いものの、整った美を体現した別次元の美しさを感じる。恐らく、普段から姿勢が良いからなのだろう。

 腰周りや程よい大きさのお尻は安っぽいタオルでは少し湿気ただけで透けているので中々にエロい。

 なんか……凄く抱き締めたくなるような感じ。実際に抱き締めると凄く柔らかいンダロウナー。いかんいかん。


「アヤさん」

「はい!」


 緊張してるね。オレもね平常心を装ってるけど、頭と心臓は恐ろしい速度で処理が行われてる。最近、PS5に没頭していた事もあり、自家発電が出来てなかった。中々にヤバい状況だ。


「これ、ばっ様の入れ知恵?」


 あのばっ様ならやりかねない。て言うか……年頃の生娘に何やらせてんだ、あのババァ!


「……トキお婆様から与えられた任務です!」


 そんな、コエちゃんを救出に行く時と同じ目をする場面じゃないのよね。アヤさんは口調からも普段は真面目な感じがするからなぁ。


「アヤさん、流石に冷静になって考えて見て。他のお客さんが居る状況で……これ見られたら言い訳できなくない?」

「…………」


 浴室に裸の男女が二人。悟られるだけでアウトだ。ゲンじぃならまだしも、七海課長に知られた日なんか、もーダメ。更にユウヒちゃんやコエちゃんにも知られると、変態の烙印を押されるだろう。

 社会的にも里でもオレの立場はアウトだぁい!


「も、申し訳ありません! ケンゴ様への配慮が足りていませんでした!」

「わかってくれましたか。じゃあ、君は浴室から出て、服を着て、ばっ様にオレが“洒落にならない”って言ってたって伝えといて」

「わ、わかりました」


 オレもあのババァが悪魔の生まれ変わりと言う事を忘れていたぜ。油断してるとすぐにこう言う事してくるんだよなぁ。


 いつもはジジィが居るから矛先はそっちへ向いてるけど、居ないからって純真無垢なアヤさんを玩具にしやがって。絶対に許さん! ショッ○ーめ!


「そ、それでは失礼します!」


 アヤさんは律儀に頭を下げる。あ、谷間見えそう――ってマジで今回ヤバいな……。なんの対策も練ってない所にポンと事件を放り投げてくるババァは今宵最大の黒幕(フィクサー)だ。矛先(ジジィ)が目を覚ますまで、僅かにも隙は見せらんねぇ。


「なんだよ。もう女の番か」


 アヤさんが浴室から出ていこうとした時、脱衣所の外扉を開けて中を覗き込む七海課長の姿をオレらは目撃する。

キングクリムゾンは生涯で一度はくらう

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