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懐いてた年下の女の子が三年空けると口が悪くなってた話  作者: 古河新後
4章 盆休みケンゴ編 灼熱の中で輝く

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第46話 シズカ←尾行←尾行←国尾

 駅から直接行ける大型ショッピングモールには、全国でも有名なファッションブランド店が入っている。


「悪いな、ノリ。おかげで助かった」

「気にすんな。にしても亮、お前が服装に気を使う時代がくるとはね」


 大宮司亮は親友の七海智人に頼って、服を買った帰りだった。


「外に出る時はいつもTシャツだったクセに。やっぱあれか? 鮫島ちゃん絡みか?」

「違う。明日、親父の実家に帰るから少しは外行きの服を用意しろってな」


 買った服は無料サービスで自宅に配送して貰っていた。


「じゃあ、何着も要らねぇだろ」


 大宮司の意図を理解している七海は、少しだけからかう様に告げる。


「……まぁな」

「はは。互いに険しい道のりだが、頑張ろうや」


 二人とも好きな人には、別に好きな人がいる。しかし、若い者の恋はそれだけで諦められる程に単純ではなかった。


「お?」


 すると七海の足が止まった。


「どうした? 飯食って帰るんだろ?」


 また、可愛い娘でも見つけたか? と大宮司は視力4.5の七海が300メートル圏内の美女を的確に捕まえる事を知っていた。


「今、すんげー可愛い女の子が駅前に座ってた」

「そうか。お前の眼はいつも通りだな」

「それが、チャラい男達に連れて行かれた」

「知り合いだろ?」

「いや、女の子の方は良く解ってない感じだったな」


 大宮司には少しばかり嫌な予感が走るシチュエーションだ。


「一応、様子を見に行くか」

「もち」


 例の美少女は駅の近くにある駐車場へと男達と共に行く。

 その後を少し遅れて二人はつけて行った。






「あ?」

「どうしたの? ケイ」


 盆休みを利用して、久しぶりに二人で出掛けた七海恵(ななみけい)鬼灯詩織(ほおずきしおり)は駅に入る手前で立ち止まった。


「智人のアホがいた」

「弟くん? 一人?」

「いや、亮も一緒だったな」


 ああ、友達の。とシオリは手を合わせてケイの視線の先を追う。


「ったく……」


 昔からやたらと能力を持て余す弟に縄を引いているのはケイの役目である。

 ケイにとってノリトは何かとボールを追いかける大型犬のような存在だ。目を離すとすぐにどっかに行く。


「様子を見てくる」

「私も行くわ」


 シオリにとってノリトは初めて会った時から、面白い子、と言うイメージが定着していた。


「アホやってたら即止めに入るぞ」

「通報係りをやります」


 少しだけ非日常な事に首を突っ込むシオリはどことなく楽しそうだった。






「おいおい、マジか。ガチの通報案件だな」


 最後尾で愚弟を追いかけたケイは、シオリと共に物陰から駅の駐車場を覗いていた。

 チャラい男達は後に追い付いた、ノリト、リョウのペアと退治している。


「あのメッチャ可愛い女の子が発端か」


 ノリトに負けず劣らずの視力を持つケイは眼鏡越しでも的確に様子を捉える。ちなみに眼鏡は伊達。


「ケイ、ノリト君って強いの?」

「リョウよりは弱いけど普通に強いぞ。だが、それが逆にブレーキの効きを悪くしてる」


 あらゆる事を人並み以上にこなすノリトは天才児(ギフテッド)と称される程。その為、自制心と言うモノが中々芽生えない。


「ったく……誰が後片付けすると思ってんだ。父さんと母さんに押さえつけて貰わねぇと……」


 ぶつくさ言っていても、結局は弟の事が心配なのだとシオリは理解して、ケイに微笑む。


「俺が様子を見てくるから通報は待ってくれ」

「気をつけて」


 ケイは荷物をシオリを預ける。

 駅の近くには交番があるので、110番すれば5分とかからずに来るだろう。


「ちょっと待ってくれ、姉御達」

「きゃ?!」

「うお?!」


 背後からの気配の無い声にシオリは驚き、ケイは思わず上段蹴りをかました。

 食らった当人は、コン、と言いたげに少しだけ首が動いた程度である。ちなみにケイの蹴りはコンクリートを砕く威力を持つ。


「国尾くん?」


 良く見ると、仕事帰りなのかスーツ姿の国尾がそこには立っていた。サイズが合わないスーツの肩は完全に破れている。


「国尾、テメェ。気配消して話しかけるんじゃねぇよ!」

「騒ぎになると困ると思いましてね。姉御、ここは俺に任せて貰えませんか?」


 確かに女であるケイが出て行っても円満解決は難しい。

 特にリョウとノリトは高校三年生で、警察の厄介になるのは今の時期では致命的に成りかねない。


「確かに……リョウは一回レッドカード貰ってるからなぁ」


 リョウの事はノリトよりも昔から見てきた事もあり、ケイにとってはもう一人の弟のような存在だった。


「よし行って来い、国尾。そのガタイで突っ込めば何とかなるだろ」


 ケイが軽くボディを殴ると、国尾の身体から鋼の様な感触が帰って来た。


「ツッコム……か。いいね!」


 カッと笑顔になる国尾。スイッチが入ったご様子。


「国尾君、怪我には気をつけてね」

「はっはっは! 無問題(モーマンタイ)!」


 ぴっ、と親指を立てて国尾は若者達の元へ、ずんずん、と出撃するように歩いて行く。

うほ

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