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第421話 そんなワケなかろう

「端的に言うとね、その子が純粋な好意を持ってテツと関わりたいと思っている可能性はゼロじゃないと思う」


 皆が否定的な考えの中、オレは決めつけによる事故の恐れを指摘する。


「ふむ、その根拠はなんじゃ?」

「オレがそうだったからね」


 テツは元々はレスキュー隊員。被災地から人を救う最前線の男だった。テツが気づいているかは知らないが、件の彼女を助けようと動いたのは、かつての職場で培われた性分だったのだろう。

 ここに居る経緯はまったくの謎だが、染み付いた心持(こころも)ちはそう簡単に離れるモノではない。


「きっと、その子はテツの本心から助けようとする気持ちを受け取ったんじゃないかな?」

「なるほどのぅ」


 IQ200越えのサマーちゃんはメンバーの過去を知るのでオレの言いたかった事を察してくれるハズ――


「フェニックスよ。そんなワケなかろう」


 アレェー?


「良いか? 人はあらゆる要素を情報として変換し己に降りかかる物事を一定の確率で千差万別するのじゃ」

「…………」

「客観的に考えて、10代の女子高生が40代の中年に好意を持つなどあり得ない事じゃろう。例え、テツでなくとも普通なら美人局以外あり得ん」

「まぁ……その意見も解るけどさ……」

「確かにお主と、隣に住んでる巨乳JKの様な関係は無いワケではない。しかし、それはお主の性質と巨乳JKが求めるモノが天文学的な確率で合致したに過ぎん」

「くふふ。フェニックスのパターンは相当な偶然(レア)と言う事ですねぇ。本来なら赤の他人となる巨乳JKと関わるなど、夢と二次創作以外に存在し得ないのですよ」

「改めて巨乳JKが隣に住んでるとか口に出されるとムカつくなぁ。死ねよ」


 うわぁ、クソボロに反論された。ビクトリアさんに関してはド直球に“死ね”って言われた。

 それにしても皆、巨乳JK、巨乳JKって言い過ぎだろう。彼女には鮫島凛香っていう名前があるの! まぁ、巨乳JKだけどさ。


「鳳、殿」


 するとオレの肩にテツが手を置くとカッと眼を見開いた。


「これ、は! 小生の為だけではな、い! 将来の広き女児の青春、を! このテツが曇らせる事は不本意なの、だ!」


 コイツ……全部投げ捨てやがった。


「ここはキチンと解らせてやらねばのぅ」

「くふふ。身の丈に合った関係と言うモノをね」

「ねぇテツー、その子可愛い?」

「写真は撮れなかった、が! 相当な美! 少女だっ、た!」


 ワイのワイの、と例の女子高生をどう料理するかで話し合い始める面子。


「……そっかぁ。オレとリンカちゃん関係って相当にレアなんだぁ」


 すまねぇ、名の知らぬ美少女JK。オレには『ハロウィンズ』を止められねぇ。


「ある程度はケンゴさんの資質による引き寄せもあったとは思うが、やはり運の要素は強かったと思うぞ」


 最後はショウコさんにダメ出しされてしまった。






「カレンさん。今日はありがとう」

「なんのなんの。こっちも楽しかったからさ」


 カレンはリンカを夕刻に傾いて来た駅まで見送っていた。


「ホントにカレンさんのおかげて何とかなったよ……」

「あっはっは。それにしても、エイのヤツはとんでもない所と仕事をやってるモンだ」


 『スイレンの雑貨店』。まるで遊園地のアトラクションの様な雰囲気の店だった。店主も含めて、あの商店街に古くから存在しているだけはある。


「それと、少しはわかったんじゃない?」

「なにが?」

「自分の要望を通す大変さ」


 まだ、リンカには馴染みの無い事だが、社会に出れば嫌と言う程に直面する事案だ。そして、それが十全で通ることはほとんど無い。


「アンタ達は今から心身共に大人になっていく時期だからね。子供である内に色んな経験を積んでた方がいいよ」

「うん。わかってる」


 一人で歩いて行く為の経験を少しだけ得たリンカを見てカレンもその手助けを出来たのは嬉しく感じた。


「まぁアンタの場合は精神的によりも肉体的な経験の方が早そうだけどね」

「……外でそんな事言うのはやめて」

「はっはっは。別にソレは悪い事じゃないんだよ。問題は快楽を優先して後先考え無いことさ」

「カレンさん……」


 自分の過去を失敗例としてカレンはリンカに助言する。


「でも、アンタとケンゴなら大丈夫か。避妊はちゃんとしなよ? 後、アンタから誘うならゴムは持っていく様に」

「だ、だから! もー! 帰る!」

「あっはっは。ケンゴの事も、少しは許してやんなよ。アイツはああ言うヤツだからさ」

「……うん。知ってる」


 昔から何一つ変わらないケンゴの事を誰よりも嬉しく感じているリンカは年相応の笑みでカレンに応えた。そして、駅の階段を上がる。


「カレンさん」

「ん?」


 カレンは新しい飴を開けると口に咥えつつリンカを見上げる。


「今度、皆でどこか行こうよ」

「お、良いねぇ。子供達の方はアンタが説得してよ。親チームの方は私がそれとなく話してみるからさ。今からなら、年末とかに予定を合わせられるんじゃない?」

「わかった」


 また、連絡するねー、とリンカは手を振って駅へ入って行った。

 そんな彼女を見送りつつカレンも踵を返す。


「やれやれ。ついこの間までケンゴの後ろに隠れてたのにねぇ」


 子供の時間が流れるのは早いモノだ。


「……駄目だこりゃ。ダイキを抱き締めに行こう」


 久しぶりにリンカと触れ合い、別れで寂しい気持ちになったので、家に帰る前に息子成分の補給をする為に白亜高校へ向かう事にした。

「ダイキ」

「お母さん? どうしたの?」

「部活中に呼び出してごめんなー」

「別に良いけど……ってわっ!?」

「……よし、補充完了。部活、頑張んなよ。それじゃ、私は帰るから」

「あ……急に抱きしめるなんて、びっくりした……」

「おーとーなーしー」

「うわ!? 嵐先輩!? 気配もなく背後から!?」

「今の美人お姉様は誰だ!? お前に姉ちゃんが居たのか!?」

「い、今の……母ですよ……チョーク絞まってます……」

「こいつは寮内裁判だな。包み隠さず話すんだぞ!」

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