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第419話 ラジオ体操

 あーたーらしい、あーさがきた。きぼーおのあさーだ――


 オレは、某黒い玉に喚ばれて始まる異星人デスマッチのオープニングBGMを正しい形で聞き、そのまま体操に移行していた。


「ユニ(いち)、ユニ(に)、ユニ(さん)――」


 『Mk-VII』の動作確認として、装着しつつラジオ体操を行う。これならば変な音を立ててもご近所さんには誤解されないだろう。

 ちなみにラジオ体操は全身を満遍なく動かし、身体の調子を整える健康体操として知られている。

 小さい頃は折角の夏休みに、朝から鬱陶しい行事だと嫌悪していたが、社会人になり、久しぶりにやってみると、中々に“効く”様になっていた。

 やれやれ。歳は取りたくないねぇ。


「ふ、む! 『Mk-VII』は! 壊れていない様だ、な!」

「くふふ。カツも手加減をしてくれたのですかねぇ?」

「まぁ、本気で何発か蹴ったけど、フルパワーじゃなかったからね」


 アニメTシャツを着たテツも含めて『ハロウィンズ』の面子がオレのラジオ体操を観察している。

 最初は恥ずかしかったが、全身を『Mk-VII』で覆われている事に加えて体操に集中すれば気にならなくなった。何より――


「いち、に、さん、よん――」


 ラジオ体操に興味を持ったショウコさんが隣で一緒にやってくれていた。実の所、結構危ないんですよ。何故なら――


「ごー、ろく、しち、はち――」


 肩を回したり、身体を捻ったり、跳躍すると、ばるんばるんと揺れるのだ。

 それは自らに刻まれたDNAの罪と言えよう。周囲にとっては大いなる祝福となりえるが、身体を動かすと言う一点においては当人には災いと言わざるえない。


「ふっ、ふっ、中々に、身体を動かす、のだな」

『ユニコーン(動かしながら喋ると息が切れるよ)』

「はは、インカムが、ないと、何を、言ってるのか、わからん、な」


 息を切らすショウコさんの隣で同じように体操するオレは『Mk-VII』の凄さを実感していた。本機のアシスタントが働いているのか、全く疲れを感じないのだ。

 全方位モニターのフルフェイスでもあるおかげで、横目でチラリとショウコさんのショウコさんを見ても誰にもバレない! 最高だぜぇ!


「お前らはショウコを見るなよ」

「くふふ。流雲嬢は賓客。その様な目で見るのは拙僧の流儀に反しますねぇ」

「心配は無用、だ! 小生はその域を既、に! 越えてい、る!」


 レツは動きによる負荷をタブレットで見つつ、テツもVRゴーグルで『Mk-VII』の動きをドローンの俯瞰視点から記録している。


 『ハロウィンズ』の面子はビクトリアさん以外はショウコさんに気を使っているようだ。ふむ、ならばその役割はオレが引き継ごう、テツ、レツよ――


「フェニックス。お前の視線はこっちでも観測してるからね」

『…………ユニィ(すみません)』


 ビクトリアさんの前で『Mk-VII』を脱ぐとその瞬間殺されちゃうなぁ。『Mk-VII』ってレンタルできるかしら。






「ふぅ、良い感じに身体を動かせたな。身体の可動域も満遍なくほぐれた様だ。普通にストレッチをするよりも調子が良い」


 ラジオ体操を終えて『Mk-VII』の負荷集計中。オレはフェイスだけを外して待機の最中に軽く汗を掻いたショウコさんと会話する。


「座ったままやるパターンもあるからね。足の悪い人にもお勧めできるよ」

「そうなのか? 違うパターンにも興味があるな」


 ショウコさんはラジオ体操にはまった様だ。健康女子まっしぐらだね。


「短い時間でこれほどに身体を整えられるとは。何故、国内で1日の習慣にされていないのか不思議なくらいだ」

「毎朝、ラジオで流れてはいるけど、基本は自由参加だから。夏休みの小中学生のには義務だけどね」

「夏休みだけなのか?」

「健康的な側面より、休みでも平日はキチンと朝早く起きましょう、っていう教育機関の心遣いかな」

「ほう。考えられているのだな」

「休みの日ってどうしてもだらだらしちゃうからねー」


 それは大人になっても変わらないが、子供の頃からソレを癖にすると色々と問題も起こるらしい。


「だから、7月の後半から8月一杯は、近くの公園で子供たちが集まってラジオ体操してるよ」

「覚えておくか。来年は私も参加しよう」


 ショウコさんがラジオ体操に参加……うーむ。このショウコさんのショウコさんを見た幼子たちの性癖開花が目に見えるぜ。こりゃ、胸派勢力がどんどん成長するな、ガハハ!


「フェニックス」


 と、オレはビクトリアさんの投げるフェイスパーツを受け取る。それなりの勢いだったが『Mk-VII』のアシストで容易くキャッチできた。


「ショウコの胸ばっか見やがって。試験が全部終わったら覚悟しとけよー」

「……ユニィ……」


 思わずユニコ君語が出た。オレも少しずつユニコ君に汚染されつつあると言うことか……


「ケンゴさんそんなに気になるなら、存分に触ってくれても構わないぞ」

「気持ちだけもらっとくよ……」


 その大いなる実りを触るには目の前に地獄の番兵がいるので対価を支払わなければならない。蹴り死と言う対価を……


 オレはフェイスパーツを被る。暗転から全天視界へ。この起動は結構好き。MSの起動みたいでワクワクするなぁ。さて、次は何をするんだろうか。


「鳳、殿」


 テツから通信。次の指示はそっちからか。


「個人的な相談なのだが。少々良いか?」

「え? 別に良いけど……」


 何か普通の喋り方なテツに違和感。それだけ真面目な話ってことか。でも、通信回線を使う事か?


「オレよりもサマーちゃんや他のメンバーの方が良いんじゃない?」

「この件に関してはおそらく、ナツよりも君の方が経験は深いだろう」

「物事の解決においてIQ200を越えるサマーちゃんよりオレを選ぶ理由は完全に皆無なんだけど……」

「では、単刀直入に聞こう。女子高生の扱いとは……どうすれば良いのだ?」

「…………ユニコ?」


 またユニコ君語が出ちゃった……何があった? テツよ。

揺れたモノに目が行かないヤツはホモ

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