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第410話 契約成立ッッッ!!

 三人が奥の部屋に行き、オレは一人残されていた。

 じっとしているのも性分ではないので、簡単に店内を見歩いていると、


「なんだ、この扉?」


 南京錠のかけられた古い扉を見つける。なんと言うか……とてつもないプレッシャーが扉から漂い出ていた。

 ナニか居る。そう感じさせる存在感を受けて不思議と目が離せない。


「イッヒッヒ。興味あるかい?」


 むむ。背後から魔女の声。オレは振り向くと、カウンターにいる婆さんがこちらを見ていた。


「一体、なんなんですか? この部屋は」

「世界の秘密が封じられているのさ。イッヒッヒ」


 世界の……秘密? ワールド・シークレットと言うことか……随分と仰々しいじゃないか。凄く興味ある!


「イッヒッヒ。けど、その扉を開けるには資格が必要なのさ」

「資格? 鍵じゃないんですか?」

「南京錠はただの飾りだよ。入れる者は扉に導かれる。イッヒッヒ、ニイさんにはその資格が無いみたいだねぇ」


 なんだよ、そのRPGみたいな設定は。


「ちなみに、資格のある人って?」

「覚えてる限りだと、神島譲二(かみしまじょうじ)雛鳥録(ひなどりろく)阿見笠流(あみかさながれ)黒船正十郎くろふねせいじゅうろう真鍋聖(まなべこうき)夜行黒斗(やこうくろと)、アーサー・スタンリー、白亜零(はくあれい)、鮫島嬢。流雲嬢はもう少しって所だねぇ、イッヒッヒ」


 漫画で良くある、シルエットだけが背景に浮かぶ強キャラ紹介みたいな言い回し。しかも、上げられた人物の半分は知ってる人だし。ショウコさんはもう少しって……何を基準に選んでるのか全くわかんねぇ!

 しかもよりにもよってジジィとロクじぃの名前も出た。やはり、この婆さん。ただ者では無いらしい。


「リンカちゃんもですか?」

「イッヒッヒ。前に来たときに、気に入られたみたいでねぇ。資格無き者以外は、近づかない方がいいよ」


 オレは改めて扉を見る。物々しいオーラがまるでオレを品定めしているかの様……って、そんワケないか。

 気になるが、店のシークレットを扱っているのなら変に首を突っ込むべきではあるまい。今日はビクトリアさんに殺されかけただけで、トラブルはお腹一杯だぁい。

 それよりも――


「お婆さん」

「イッヒッヒ。なんだい?」

「そのカタログ、見ても良いですか?」


 ドドドド、とオレはカウンターに寄ると置かれた雑誌に視線を向ける。それはリンカが執拗に気にしていた物。コスプレのカタログであると聞いている。


「イッヒッヒ。ただの興味本位じゃないねぇ?」

「……オレは見届ける必要があるんです」

「イッヒッヒ。何をだい?」

「リンカちゃんの行動の起点となっているこの雑誌……それに何が掲載されているのかを!」


 コレは必要な事だ。オレの知らない所で何かが行われていた。リンカも女子高生だ。隠し事の一つや二つはあってしかる年齢。だからこそ、これはその一つを知るチャンスだ!


「イッヒッヒ。ニイさんや。アンタは、鮫島嬢の何なんだい?」

「仮面ラ○ダー」

「イッヒッヒ。ノータイムで恥ずかしげもなくそう返すかい」

「資料の閲覧許可を願います!」


 別にやましい事なんて何もない。でもさ、気になるじゃん。リンカちゃんのバニーガール姿なんで、不思議の国でも行かないと絶対に拝めないからね。

 別にやましい事なんて何もない(大事な事なんで二回言うよ!)。将来、セナさんの身体への進化を約束されたリンカちゃんの今の姿のバニーガール。これは、今時期しか脳内フィルターに記憶する機会はないのだ。

 つまり、このチャンスを逃せば、一生後悔するってこと! 恥じらう姿であれば尚オッケー。


「イッヒッヒ。鮫島嬢にもっとも信頼されてる様な男から恥もなくそんな提案をされるとはねぇ」

「男には引けない意志があるんです!」

「堂々と言うもんだねぇ。逆に清々しいよ。イッヒッヒ」


 まずい。これ以上の舌戦はリンカ達が着替え終わってしまう。

 そうなればオレは強制退室。店の外で撮影が全部終わるまで体育座りで蟻と雲を数える作業に準じなければならない。


「リンカちゃんの意志なので、雑誌は持ち出しません。ただ、オレはほんの数ページ捲り、バニーガールのリンカちゃんを見たいだけなのです」

「もう、本心を隠さなくなってきたねぇ。イッヒッヒ」


 お婆さんに交渉できる材料は何も持ち合わせて居ない以上、説得をするしかない。時間ギリギリまでオレは諦めないぞ!


「イッヒッヒ。なら、全てを解決する案を提示しようじゃないか」

「……聞きましょう」


 なんだ……? この魔女は何を語る?


「撮影を手伝ってくれるかい? 人手があった方が効率が良いからねぇ。イッヒッヒ」


 なんっと言う悪魔的囁き! 確かに、人を撮影すると言う行為はカメラマン一人ではスムーズに行かないだろう。無駄に時間がかかるのは誰も得しない。だが! 嘗めるなよ! リンカは高校生なんだ! 身内でも異性であるオレの視線は何よりも恥ずかしいハズ! ならば、オレはスピードワ○ンの様にクールに去るのがリンカのためなのだ。


「その提案は――」

「イッヒッヒ。この雑誌を一つニイさんにやろう。鮫島嬢には破棄したと言う事にしてねぇ」


 この婆さん……オレの事を嘗めてやがる! そんな……そんなリンカを裏切る様な提案にオレが乗ると思っていやがる! なんて……なんて――


「え? 本当ですか? 是非手伝わせてください」

「イッヒッヒ。これでWin-Winだねぇ」


 素晴らしい提案をしてくれるのか。オレは某史上最強の親子喧嘩終了時の様な固い握手をお婆さんとかわす。


 これにて契約成立ッッッ!!

既にケンゴの性格を把握する魔女

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