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第408話 まずはバニーガールから

「コスプレですか?」

「そー、あれ? 言ってなかったっけ?」


 オレはそもそも話の主旨を理解していなかった為に、雑誌の事をカレンさんに聞くと、コスプレ雑誌である事を教えてもらった。

 つまり……撮影とはコスプレの事? ショウコさんとカレンさんが撮らせてもらうのって――


「イッヒッヒ。まずはバニーガールから行こうかね」

「集合集合。ショウコさん集合ー」

「む」


 トコトコと儀式の祭壇に連れていかれそうなショウコさんを呼び止める。


「ショウコさん、いいの? コスプレで写真を撮られるワケだけど……」

「普段とは違う服で撮られるだけだ。気にする事では無いと思うが?」


 そう言えばショウコさんは“S○Xは運動”とか言う人だったね。彼女は経験無き行動は全て客観的に結果しか見ないのである。

 まぁ、モデルと言う仕事をしている事もあって水着撮影もあるだろうし、布面積がそれ以上の衣装撮影なら特に気にしないのかも。


「オレがとやかく言うことじゃなかったね。呼び止めてごめん」

「ちなみに、ケンゴさんはどんな衣装が好きなんだ?」

「え? オレ? 猫耳が乗ってればなんでも良いよ」

「……」


 あっ。本音が出ちゃった。ショウコさんの眼は……感情が読み取れないなぁ。チラリとリンカを見た気もする。

 しかし、コスプレとなれば……実現するかもしれない。あの夜に観測出来なかった、究極の映像を!


「……猫耳なら私の事を――」

「ん? なに?」

「いや……なんでもない。ささっと着替えてくる」


 くるっと背を向けて、イッヒッヒと待機する魔女に案内されたショウコさんは奥の部屋へ入って行った。

 店内はさほど広くないので、奥が衣装棚兼更衣室になっているのだろう。撮影はどこでやるんだろうか?


「じゃあ、お婆さん。アタシもバニーで良いの?」

「イッヒッヒ。最初はそうしようかね」

「オッケー」

「オッケーで良いんですか……」


 バニーガールは、最初のコスプレとしては随分と上級者向けだと思うのはオレだけかな?


「ちなみにお婆さん、どこで撮るのさ」

「イッヒッヒ。ここしか広い空間が無くてね。ここで撮るよ」

「よかったな、ケンゴ。バニーガール見れるぞ」

「え!? あ、いやっ! うん! 撮影場所がここしかないなら仕方ないですよね! でも、撮影中はトイレとか実家から電話で席を外しちゃうかもなぁ! だからリンカちゃん……たこ焼き返しでオレの命を狙うの止めてくれない……?」

「チッ」


 ショウコさんとカレンさんのバニーガール。見たい。凄く見たい。多分、凄くエッチだと思う。でも、リンカ様の殺意の方がコワイ……


「じゃあ、アタシも着替えて来るかな。お婆さん、衣装はあるんだよね?」

「イッヒッヒ。全種三着ずつあるよ」


 それを聞いてカレンさんも奥へ歩いて行った。






「何て言うか……まぁ、複雑な事になったね、リンカちゃん」

「…………」


 待っている間、リンカはどことなく落ち込んでいる様子だったのでオレは話しかけた。


「……こんなつもりでカレンさんに同行をお願いしたワケじゃないのに……」


 納得したとは言え、負い目は振り払えないらしい。優しい人間の責任感は中々に融通が効かないのである。


「カレンさんは、君の事を実の娘のように思ってるんだよ。子を護るのは親の勤めさ」

「そしたら……あたしはとんだ不良だな」

「そんな事無いって。自分が目上の立場なら、下の人は護らないとって気持ちは当然の事だよ。特にママさんチームでの、君やダイキやヒカリちゃんは皆の子供みたいなものだからね」

「…………」


 まだ、リンカは納得出来ない様だ。オレも目上として、三人の事は妹弟の様に思っているので、もう少し助言をしてあげよう。


「夏にさ、海で獅子堂課長とお孫さんのルリちゃんに出会ったじゃない?」

「ああ」

「リンカちゃんはルリちゃんと遊ぶ時に、一緒に楽しむよりも、第一優先は彼女の安全だったでしょ?」


 水泳の練習でルリちゃんが一瞬だけ波に呑まれた時に必死になったのがその証拠だ。


「今のカレンさんは、その時のリンカちゃんと同じ気持ちだよ」


 見返りなんて考えずに護りたいと思える気持ち。カレンさんからすればリンカを含める他二人も護りたい対象なのだ。優先順位をつけるなら、流石に息子(ダイキ)一番だろうけど。


「……そうなんだな」


 リンカの曇った表情が少しだけ和らいだ。どうやら理解してくれた様だ。

 オレはふと、カウンターに眼をやるとそこには件の雑誌がポツンと置かれているのが眼に入る。


「ちなみに、リンカちゃん」

「なんだ?」

「この雑誌ってどこで手に入れたの? 三冊しか無いなら、この店に関連する所から貰ったの?」

「それは――」


 と、そこでリンカは何か思い出した様にハッとする。


「文化祭の交渉もしなきゃ……」


 ぼそりとリンカはそう言うと、カメラをゴソゴソと準備している婆さんの元へ。

 そして、しばし会話。イッヒッヒと婆さんが笑う度に、リンカは驚いたり、落ち込んだり、うぅ……と言ったり、それでもめげずに話を続けて要件はまとまったようだ。

 そして、そのまま奥の更衣室へとぼとぼと歩いて行った。


「…………え? ちょっ……え?」


 困惑するオレ。イッヒッヒ。と言う魔女の声が店内に響く。

未来は変わらないねぇ。イッヒッヒ。

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