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第402話 雰囲気作り担当

「いや、まぁ。結構喋っちゃったねぇ」

「カレンさんが根掘り葉掘り聞くから……」

「アッハハ。ケンゴが帰ってきてから今まで、そんな事が起こってたなんてさ。全然知らなかったよ」


 リンカはケンゴが帰国してからの約4ヶ月の出来事を詳細に聞かれていた。

 夏祭り、撮影、海、ユニコ君、ダイヤの来国、大宮司道場、社員旅行、ショウコの同棲。


「まさかねぇ。て言うかケンゴのヤツ、女引っ掛けすぎだろ」

「あたしもそう思う……」

「アイツ、おみくじ引いたら間違いなくヤバい事書かれてただろうよ」

「……」


 おみくじ。そうだ、今年は彼が居るのだから、一緒に初詣も行こう。いや、その前にクリスマスがあるなぁ。


「リンカ。あんたのアドバンテージは、家が一番近い所だからね。しっかり、活用しなよ」

「うっ……うん」


 とは言え、もっと根本的に彼を前にすると口調が悪くなる所を直さないとなぁ……


“お前は元気そうだな”


 そう言って何事も無かったかのように話しかけてきた事を思い出す。

 ……やっぱり止めた。人の気も知らないで、そんな事を言ってくるなんて……思い出しすとイライラが沸き上がって来る。


「……嫉妬深いなぁ……あたし」


 自己嫌悪に陥るも、誰よりもずっと近くで彼を見てきたのだ。その隣に居たいと思うのは悪いことではないと思いたい。


「お、居たねぇ。ユニコ君」


 例の商店街へ入ると、ユニコ君が風船を配っていた。あたしもカレンさんの後に続く。


「何かキッカケがあれば良いんだけどなぁ」


 昔みたいに、お兄ちゃん、と呼びたい。でも、うーん……


「さっさと、用事を終わらせてケンゴにバニースーツでも見せてやんなよ」

「うん……って! 着ないよ!? 着ない! 着ない!!」

「アッハハ」


 そんなこんな話していると目的の場所――『スイレンの雑貨店』の看板が見えて来た。






「『スイレンの雑貨店』……ショウコさんは行った事あるの?」

「ああ。一度、サマーに連れられて来店した事がある。道案内は任せてくれ」


 サマーちゃんの指示をこなすべく、オレはショウコさんと徒歩で『スイレンの雑貨店』へ向かっていた。

 店のある場所はユニコ君の商店街。伝説が生きる、聖地に古くからある店らしい。


「店内は感じたことの無い雰囲気の店だった。まるで生物の腹の中に居るような……そんな所だ」

「へー」


 視たものをそのまま感じ取り、口から出すショウコさん節。彼女の言動は完全な感覚型で、本心はそのまま口から放たれるのだ。

 そんな彼女が、腹の中に居る、と言うのは本当にそんな雰囲気があるからなのだろう。


「でも、意外だったなぁ。ビクトリアさんもついて来るかと思ったけど……」

「彼女は苦手らしい。店も、店主も」


 ショウコさんは厄祓いの側面もあるから、ある程度は耐性があるのかな? そういや、海外支部のヴェイグもインディアナシャーマンだったっけ。


「それにしても、サマーちゃんの所は本当に賑やかだね。毎日退屈しないんじゃない?」

「ああ。面々は色々と役割があるらしい。中でもビクトリアは護衛だそうだ」

「あんだけ強ければそりゃそうか……」


 並みの人間ではビクトリアさんの相手は出来ないだろう。目測では七海課長と同クラスと見ても良いかもしれない。どっちが強いのかは分からないけど。


「テツは移動や物資の搬送を担当し、レツはプログラムと電子系統関係だそうだ」

「ほほぅ」


 そう言えば、女郎花のタンカーへ乗り込む時の装備は全部テツが運んでたな。


「後、ミツと言うメンバーも居る様だが、私は会った事はないな」

「その全員を取りまとめるのがサマーちゃんってワケね。年齢の割には本当にしっかりしてるよね」

「サマーはIQ200を越える天才だそうだ。ユニコ君『Mk-VI』と『Mk-VII』は彼女がマザーに頼まれて作ったらしい」

「ほほ? マジ?」


 メンバーもヤバいが、そのリーダーは頭一つ突き抜けていた。そう言えば……ショウコさんの救助の為に訪れた際に、説明を受けたVR空間はサマーちゃんがプログラムを作ったって言ってたっけ。


「サマーが日本に来たのは今から六年前で、その時はビクトリアと“ミツ”しか居なかったそうだ」

「テツとレツは後の介入なのね」


 サマーちゃんが超天才かぁ。アニメや小説で良くある、ロリ上司がスーパーガールであることは中々のテンプレ。それにリアルで遭遇するとは思わなんだ。


「何でも『ジーニアス計画』とか言う事案の生き残りらしい。それ以上は知るのが危険だと言って教えて貰えなかったがな」

「そう言うのって……本当にあるんだ」


 謎の組織の謎の計画。この分だと007もリアルで存在してそうだ。日常に暮らしているオレらの知らないで所で何度も世界は危機と救済を繰り返してるのだろう。


「サマーは只者ではないが、それでも小さな女の子だ。私たちがきちんと護ってやらなければな」

「そうだね」


 まぁ……戦力的にはビクトリアさん一人で 十分そうだけど。オレは雰囲気作り(ムードメーカー)を担当するとしよう。ショウコさんは野菜担当。


「こうやって考えると、私が一番の部外者だな」

「そんな事はないよ。ショウコさんの事はサマーちゃんも大事に考えてる。見ればわかるよ」


 嫌いな野菜をきちんと食べるのはショウコさんの思いを無下にしないサマーちゃんの心意気だろう。


「うむぅ……その辺りは経験が無いから良く分からないな」

「オレは昔から小さい子の相手が多かったからね。そう言うのは長年の経験が必要かも」

「ケンゴさんは良い父親になれるな」

「うーん。でも、一番身近な女の子の扱いは未だに未知の領域なんだよね……」


 女子高生+反抗期=口が悪い。

 この方程式はきっと成り立つだろう。娘を持つ世界中のお父さん達、オレも人類最大の謎に挑戦しています。


「それは……例の隣に住んでいると言う、鮫島凛香さんの事か?」


 ショウコさんは少しトーンを低く冷静な声色に変わった。

 彼女は結局、リンカとは顔を合わせる前にサマーちゃんの所へ行ったので、二人は未接触のままだ。


「え? ま、まぁ。そんなトコ」


 でも、夏祭りや夕飯にも誘ってくれるし、部屋にゲームしに来るし、心底毛嫌いはされてないと思うんだけどなぁ……


「困ったらいつでも相談してくれ。女である身として、何かアドバイスが出来るかもしれない」

「その時は頼りにさせてもらおうかな」


 そんな話をしながら歩いていると『スイレンの雑貨店』が見えてきた。すると、店の前に――


「あれ? カレンさんに……リンカちゃん?」


 オレの声に気づいた二人はこちらを振り向いた。

次は修羅場

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