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第395話 コロスコロスコロスコロス

「敵情視察って……ファミレス?」

「これでも店長だからね。他からアイディアを盗むのは昔からの常套句だよ」


 駅近くのファミレスに入ったリンカとカレンは、席につくと各々で注文した。


「それで。今回の同伴にセナでもケンゴでもなくて、アタシを選んだ理由は?」


 カレンは今回の件を改めて訪ねる。息子(ダイキ)からもリンカから頼みたい事があると言われただけで、その中身は知らずに承諾したのだ。


「えっと……あまり他に人に話して欲しくないんだけど……」


 リンカはバッグから、ヒカリから借りている『スイレンの雑貨店』のカタログをカレンの前に出す。


「雑誌? ヒカリの所のヤツじゃないね」

「実は――」


 前に魔女に罠にはめられて、色々とコスプレさせられた事をカレンに話す。

 カタログ雑誌を開いて自分の写真のページを見せながら説明した。


「あっはっは。何それ。面白いじゃない」

「全然面白くないよ。もう……」


 カレンはカタログ雑誌に載ってるリンカのコスプレ写真をパラパラと見る。


「でも、結構ノリノリな感じするよ? 写真のアンタ」

「いや……必死だったの。だって、億とか言われたらさ」


 ドリンクバーのオレンジジュースをずずず、と飲みながらリンカはぼやく。


「セナには見せたの?」

「絶対にからかわれるから見せてないよ」

「見せてやんなよ」


 カレンはアイスココアを飲みながら言う。


「アタシやセナはドタバタしてるから、アルバムとかを作る暇は無いの。だからね、こう言う雑誌はその代わりになる」


 前にリンカが『谷高スタジオ』の雑誌に載った時、セナはそれを持ってカレンに報告に来たくらいだ。


「それに、アンタ中学生の頃は本当に危なっかしかったからね。アタシ達もどうにかしようと思ったけど、アンタが無理に隠してる感じがしたから、下手に構えなかったんだ」


 ケンゴの居なかった三年間。カレンは深く関わった事はなかったが、セナからは度々相談を受けていた。


「こう言う事を自分から進んでやってるって知るだけでも親ってのは嬉しいモノだよ」

「……」


 カレンに言われてリンカは、母にこの事を黙って居た事を少し後悔する。

 今思えば中学生の頃は回りの迷惑も考えず、ただ塞ぎ込んでいた。


「お母さんに教えてあげようかな……」

「そうしな、そうしな」


 少し反抗期なのかぁ、あたし。カレンの言葉に己を見直したリンカは、ふと、あることを思い至る。


「カレンさん」

「なーに?」

「カレンさんは……あたしのお父さんの事、お母さんから何か聞いてない?」


 何故、父は一度もあたしとお母さんの元に現れないのか。どうしても知っておきたかった。


「そうだねぇ。ママさんチームではより、子供達への事情を優先する必要性から自分達の身の上の隠し事は無しだからね」

「! じゃあ、あたしのお父さんは――」

「セナが話さないんだったら、アタシからは何も言えないよ」


 リンカは自分の父親の話題を思いついた時、それとなくセナへ問うが彼女はいつも、ふわりとかわしていた。


「でも、悪い事だから話さないんじゃない。アンタがしっかりと受け止められる年齢になったらちゃんと教えてくれるだろうさ」

「……まだまだ子供って事かぁ」

「いいじゃん、子供。今のうちだけだよ。そう言うことが出来るのは」


 カレンは雑誌を閉じてリンカへ返す。


「そう言や、ケンゴにはコレ見せたの?」

「お隣さんには絶対に見せたくない」

「なんで? ケンゴ、好きそうだけどねぇ。バニースーツ」

「そ、そんな事……わかんないし……」

「まぁ、アイツはどんな姿でも受け入れてくれるよ。そう言うヤツだからねぇ」

「……それはわかってる……でも! なんか、衣装で関係を深めたくないから……それに――」

「それに?」

「なんか嫌」

「反抗期だねぇ」


 こりゃケンゴも苦労するワケだ。カレンは若者達の一喜一憂を、けらけらと笑いながらココアを啜った。






「……ビクトリアさん」

「なにさ」


 オレは迎えに来てくれたショウコさんとビクトリアさんに導かれる様に後に続いていた。


「ビクトリアさんも、『ハロウィンズ』の1人なんですよね?」


 と、事実確認の為に質問したオレの顔面にビクトリアさんの靴底が寸止めされる。後数センチで当たる蹴りが、ON○ PIECEのサ○ジみたいに鼻先に止められていた。


「外でさぁ。軽々と『ハロウィンズ(ウチ)』の名前を出すの止めてくんない? どこから漏れるかわかったモンじゃない」

「す、すみません……」


 凄みのある視線がサングラス越しに睨んでくる。

 ビクトリアさんの動きに全く反応出来なかった。彼女はオレよりも身長は高く、下半身もアスリートの様にガッチリしている。

 彼女の蹴りは寸止めだったが、歯茎が見えるくらい顔に風圧がかかった。七海課長に匹敵するかもしれん。

 直に蹴られたら顔なんて無くなっちゃうよぉ。


「ビクトリア、少しやり過ぎだ。彼は私の恩人だし、サマーにも認められている。敵ではない」


 ショウコさん。庇ってくれてありがとう。でも、火に油を注ぐ感じにならないかしらん。


「やだなぁ、ショウコ。冗談だよ、冗談! アンタの大切な人をアタシが蹴るワケないだろ?」


 わぉ! ショウコさんにはすっごくフレンドだね! もう、何て言うか、肩まで抱き寄せちゃってさ!


「なら安心だ。ケンゴさん、冗談だそうだ」

「そーそー、冗談だから。冗談……だからね」


 眼が冗談って言ってねぇ。隙あらばオレの顔面を蹴る事に躊躇いは無い眼をしておられる。まずいなぁ。どうしよう。お腹いたい、とか言って帰っちゃおうかなー。


「ケンゴさん。私は正直な所、君に会えて嬉しい」

「ショウコさんも元気そうで何よりだよ。新しい環境にはすっかり馴染んでるみたいだね」

「皆、良い人だ。サマーは可愛いしな。聞いてくれ、最近サマーに大根を食べさせる事に成功したんだ」

「サマーちゃんって大根ダメだったん――」


 と、オレは射殺しそうな程の視線をビクトリアさんから向けられている事に気がつく。


 コロスコロスコロスコロスと恨めしそうだ。

 あー、うん、なるほどね、ビクトリアさんはショウコさんに矢印向いてるのね。


「積もる話は、着いてから聞くよ! 案内して案内、ハイ案内ぃ!」

「相変わらず変なテンションだな。確かにビクトリアは目立つからな」

「酷いなー。ショウコ」


 ショウコさんに話しかけられて、ぱっ、と上機嫌になったビクトリアさん。オレへのKILLモードが解けた様でほっと一安心。

 うぅ……コイツは過酷な1日になりそうだ。

ビクトリアはブラジル人

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