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懐いてた年下の女の子が三年空けると口が悪くなってた話  作者: 古河新後
26章 流れる雲

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第352話 思い出して来たよぉ~

 トントントン。と言う、一定のリズムの音でオレは意識を刺激され何度か瞬きをして、眼を覚ました。


「――――ふぉ?」


 頭の上にはタオルにくるまった保冷剤が乗せられ、頭の中はだいぶクリアになっていた。

 場所は居間。タオルが敷かれ、その上で仰向けになっている。

 あー、えっと……下半身のタオル以外は全裸だけど……オレは風呂に入ってたのか? ちょっと、記憶が……んー、きたきた。思い出して来たよぉ~


 じゃんけん。

 混浴風呂。

 目隠し。

 ショウコさん(全裸)。

 洗われる。

 ショウコさん(髪)。

 洗う。

 ショウコさん(背中)。

 洗う。

 ショウコさん(上目遣い)。

 虹の彼方へ。

 暗転(どうなったか不明)。

 居間で目を覚ます。≪NEW≫←いまここ。

 記憶にショウコさんの裸の比率多いな、オイ。それだけ、桃色の修羅場だったってことか。


「気分はどうだ?」


 と、ショウコさんが台所から覗いてくる。

 一瞬だけ裸エプロンに見えたオレは一度、頭を振って再度確認すると、パジャマだが彼女はきちんと服を着ている。

 まだ、オレの中に色欲が残ってやがる。油断は出来ねぇな。


「何か迷惑かけたみたいで……」

「びっくりしたが……無事な様だな」


 そう言って、ショウコさんは台所へ戻る。

 どうやら野菜を切っていた様だ。この額の上の保冷剤枕も彼女が作ってくれたのだろう。


「あの……ショウコさん」

「ん?」

「オレは……意識が飛んだ後に、君に何かした?」


 ショウコさんのトントンが止まる。あ、やっべ。やっぱり何かやっちまったか……


「正直、驚いた」

「……何をされたの?」


 オレはオレを裁かなくてはならない。その為には色々と状況の把握が必要だ。

 所詮この世は血で血を洗う殺し合い。ショウコさんの様な、か弱い女性が生きて行くには法を頼りにしていくしかないのだ。


「その……なんだ。アレなんだな。男の人ってのは……気を失っても反応は残るものなのだな」

「え? 何を言って――」


 と、オレはそこでショウコさんがナニを見たのかを察した。

 ああ……ナルホドネ。身体はネ。意識がトんでも、きちんと反応はしてたワケだネ。つまりネ。この下半身がMAXになってたってことだネ。ウンウン。


「しかし、頭に保冷剤を乗せると元に戻ったぞ。何ともまぁ不思議なモノだな」

「すみません……」

「気にすることはない。生理現象だろう?」


 淡々としたショウコさんの口調は本当に何もなかったのだと思わせた。

 た、助かった……のか。オレは乗り越えたのか……?


「私は残りは自分で洗ったから、ケンゴさんも入り直すといい」

「そうするよ」


 とにもかくにも……完全に山場は越えた! 社会的も死ぬような事は起こらなかった、最良の結果だ。いやっほぅ!


「……本当にあんなモノをいれられるのか?」


 ショウコさんはボソリと呟いたが、これ以上の山場はもう起こらないと思っていたオレは気づかなかった。

 台所の下の戸棚に隠した、避妊具をショウコさんが見つけていた事に――






 名倉は警察の事情聴取も終わり、普段の予定よりも遅い時間にホテルに戻り、黒船と轟に明日の予定を確認した後に自分の部屋にった。

 そしてスマホが鳴っている事に気がつく。


『父上』

「どうしたんだい?」


 相手は娘からだった。今は信頼出来る人物に預けている。


『いくつか話しておきたい。事がある』

「何かな?」

『今後はケンゴさんの所じゃなくて、別の所で世話になる事になった』

「それは私の会社の斡旋かい?」

『いや』

「それでは、『谷高スタジオ』かい?」

『それも違う。今回の件で知り合った友達だ。ストーカーの件が完全に終わるまで身を寄せる事になった』

「ふむ。しかし、お父さんとしては賛同は出来ないね。面識の無い者にお前を預けたくはない」


 名倉の考えは親として当然の反応である。

 既に二度目の誘拐があった事を真鍋から報告を受け、ケンゴ、国尾、茨木、そして他の協力者の活躍で事なきを得たと聞いている。


「私が鳳君にお前を託したのは彼なら信頼出来るからだ。それは解るね?」

『ああ。だが……その分、ケンゴさんの事も危険にさらしてしまった。きっと次も同じことが起こっても彼は迷い無く助けに来てくれるだろう』

「なら――」

『父上。私は彼に傷ついて欲しくて、側にいるんじゃない』


 ショウコは初めてだった。父の提案を否定し、自分の意思を貫こうと思ったのは。


『だから私は彼の元を離れる必要がある。そう思ったんだ……』


 最後に弱々しくなる言葉に、名倉は娘も相当に考えて出した決断なのだと察する。


「……そうか。お前が決めたならお父さんは何も言わないよ」


 名倉はそんなショウコの意見を尊重した。それどころか、娘の成長を改めて見る事が出来て嬉しかったのである。


「だが、身を寄せる“友達”に関しては私も直接顔を見させてもらうよ」

『? 電話で良いと思うが』

「お前の身辺を預けるのだ。生活環境や習慣、場所も全て把握しておきたい。出張から帰ったらすぐに向かうから、移動したら住所と連絡のつく番号を聞くように」

『ああ。わかった』


 それじゃあね。と、名倉はスマホを切ろうとしたら、ああ待ってくれ、とショウコの慌てる声に耳へ戻す。


「なんだい?」

『日本で初めて父上と顔を合わせた時、“自分の気持ちが変わらずに、もっと一緒に居たい異性と巡り会った時、事を起こす前に連絡をしなさい“と、言ったのを覚えてる?』

「覚えているよ」


 二年ほど前だが、その時はあまりにも衝撃的な話だったのである程度は鮮明に覚えている。


『今回の本題はその件の連絡だ』

男なら仕方ない

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