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懐いてた年下の女の子が三年空けると口が悪くなってた話  作者: 古河新後
3章 ザ・サマー

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第32話 サマー・オブ・シー

「宿題は順調?」


 夏休みの日々。仕事を終えて帰ってきた母にいつも通りに夕食を用意して迎えた。

 すると、母は冷蔵庫からビールではなく珍しく麦茶を片手に夕食の席に着く。


「うん。他にやることないし」

「あらあら。それじゃ駄目よ~。高校生の夏は三年しか無いんだから」

「そんな事言ってもね」


 本当に宿題以外にやることがない。社会のレポートも結局は無難な事で落ち着いたし、外に出る用事も今のところは入っていないのだ。


「ケンゴ君とはどこか行かないの?」

「……何でそこでお隣さんの名前が出てくるのさ」

「ふふ。さて、何ででしょう?」


 母の意味深な笑顔。まぁ……そのお隣さんに気があるのは口に言わなくても母にはバレてるだろう。


「あっちは平日は仕事だよ。疲れてるのに休みの日も連れ回すのは大変じゃん」

「そう。それじゃ、お母さんが誘っちゃおうかしら」

「……何に?」


 あたしの反応を待っていたかのように母は微笑む。


「海」






 金曜日の終わり。少し残業をして帰ると、リンカが扉の前でスマホをしながら待っていた。なんか既視感を覚える。


「どうしたの?」

「明日休みか?」

「そうだけど」


 特に用事も無いので、クーラーを全開にお菓子でも食べながら映画を見て自堕落に過ごそうと思っていた。


「海行くぞ」


 というわけでオレは今、浜辺に水着姿で太陽の直射日光に晒されている。


 セナさんも休みという事で海に行く事を提案してきたらしい。

 しかし、レンタカーを借りてきた所を見ると大分前から考えていたイベントのようだ。オレは荷物持ち兼ボディガード。


「意外と難しいな……」


 来たのは入門料を取られるレジャー施設である。海に面した建物の中にはプールがあり、雨天や冬でも健康ランドとしての側面も持つ。

 外は徒歩5分で海。打ち寄せる波や、日焼けを楽しむ者はこちらに出てくるだろう。

 更衣室は施設内を使用し、外に面した売店で飲食が可能。パラソルや水具も借りられるので基本的には持ち込む必要はない。


 そしてオレは借りたパラソルを立てる事に苦戦していた。突き刺せば簡単かと思いきや、穴を掘って固定せねば波風で簡単に飛んでしまう。


「ふー、これだけで汗をかくなぁ」


 目の前にある海に今すぐに飛び込みたい衝動に駆られるが、二人が来るまで待機しておかねば。


「お待たせー、ケンゴ君」


 麦わら帽子と水着。上着にパーカーを着たセナさんと、風に麦わら帽子を飛ばされないように抑えながらリンカが歩いてくる。

 未だに若々しいセナさんはリンカと並んでも姉妹のように見えなくはない。


「う……お……でっ……」


 思わずそんな声が出る程のボリュームだ。どこがとは言わないが、服を着ていても強調されるのなら、脱いだらそりゃヤバい。

 施設にいる見知らぬヤロー共も眼を奪われている。どこにとは言わないが。


「ジロジロ見てんじゃねぇよ」


 海の女神と言っても差し支えないセナさんを見ていると、いつの間にか背後に回り込んだリンカが、タコ焼き返しを首筋に立て、殺気の混じる声でオレに言う。


「すみません……」


 ていうか、タコ焼き返し(ソレ)持ってきてたのかよ……






「はーい、ケンゴ君」

「うわーい」


 オレ達は腰ほどまで海に入ってバレーボールで遊んでいた。

 単純なトスを続けるだけの簡単なモノだが、足場が制限される現状では中々に難易度は高い。

 いや、それよりも――


「はーい、リンちゃん」


 ボールが三つある。パーカーを脱いだセナさんがトスを上げる度にボールが増えるのだ。何を言っているのか分からないと思う。オレにも分からないが、とにかくそういう事だ。


「…………」

「うご!?」


 セナさんが上げたトスに対しリンカがスパイクを決めた。オレの顔面に向かって。


「よそ見してんじゃねぇよ」


 仰向けで海に沈むオレにリンカがゴミを見るような眼で告げる。高く上がったバレーボールはオレの近くに落ちた。


「ふふふ」


 そんなオレ達の様子を見てセナさんはずっと笑っていた。






「えーっと……リンカちゃん」

「話しかけんな」


 少し休憩して、施設の外側に面した売店で飲み物を買ったオレ達は、セナさんの下へ戻っていた。


「……ううむ」


 悪いと思いますよ。でもオレも男なのよ。目の前でばるんばるんしてたらそりゃ見るでしょ。眼球のある生物は動くモノに反応するように出来てるんだから。とほほ……


「……大きい方が好きなのか?」

「何が?」

「……これ」


 どれ? と思わず聞き返そうになったが、恥ずかしそうにパーカーに隠れた自身の胸に手を置くリンカ。セナさんの遺伝子を継ぐリンカも相当な大きさである。

 恐らく、ここが天王山だ。あくまで紳士的に――


「人によると思います」

「お前は?」

「えっと……」

「好きだろ?」

「う……」

「大きいの好きだろ?」

「……好きです」

「最低だな、お前」


 どういうルートを辿ってもこの結末(ゴール)か。オレは、しょんぼりしながらリンカの後に続く。

 何気なく海を見ると泳いでる人に違和感を覚えた。なんだあれ? 少女が水の上を滑ってる――


「――――」


 と、前を歩くリンカが止まった様子だったのでオレは視線を戻した。


「リンカちゃん、ここで持ってて」


 視線の時にはパラソルの下でオレ達を待っているセナさんをナンパしている男たちがいる。

 さて、ボールばっか見てないで仕事しますか。

海イベ

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