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懐いてた年下の女の子が三年空けると口が悪くなってた話  作者: 古河新後
24章 私にとっての光

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第301話 君の会社は何なんだ?

「ユニ(これ)」


 オレは部屋が出る前にショウコさんへインカムを渡す。サマーちゃん達と話が出来る様にしていれば連携も取りやすい。


「これはどこに繋がっているんだ?」

『わしはサマー・ラインホルトじゃ! 流雲昌子よ! よろしくのぅ!』

「流雲昌子だ。よろしく。子供?」

『わしを侮ると痛い目に合うぞ! 言っておくが、お主の元にフェニックスを送り届けた装備『Mk-VI』はわしのサポート無しでは箸さえも持てぬ代物じゃ!」

「『Mk-VI』?」


 ショウコさんはオレを見る。サマーちゃんは『Mk-VI』の視界情報も拾っているハズなので彼女の顔は見えているのだ。


『まだ試作段階じゃが! ここまで強者を三人無力化した! 安心してエスコートを受けるが良い!』

「ふむ。期待出来そうだな」

『フェニックス、わしらの会話はこちらを中継する。外部音声は何故か、ユとコしか発音せんのでな!』

「それ、相当問題だと思うけどね……」


 とにもかくにも、積もる話しは帰ってからだ。今は一刻も早く安全圏に移動せねば。


『クルーザーを寄せる! 場所を表示するぞ! とっとと脱出して肉を食いに行くぞ! わしは腹が減った!』

「私もだ」


 それに関しては満場一致してるご様子。このミッションがサークル的なノリなのがちょっとヤベェ。






「……あの二人は君がやったのか?」

「結構ギリギリだったけどね……」


 オレとショウコさんは廊下を用心しながら進んでいると、気を失ったグラサンとジェットの横を通り過ぎた。


「多分、生身だと二回は死んでるから。本当に『Mk-VI』様々だよ」

「そんな、見た目でも役に立っているんだな」

「筋力補助がついててさ。サマーちゃんが合わせてくれてるんだ」

「ふむ。そのサマーちゃんは、声はだいぶ幼いが、一体いくつなんだ?」

「年齢? 12歳って言ってたよ」

「何故、一人称が“わし”なんだ?」

「わかんない。乙女の秘密だってさ」

「複雑な事情がありそうだな」

「オレとしては、ショウコさんが仮面を着けてる方が気になるんだけどね」


 部屋から出た際にショウコさんは唯一仮面だけを持ち出した。本人曰く、顔を隠すためらしいが、逆に目立ってる気もする。


「顔は指紋の様なものだと師匠が言っていた。数多の厄に相対した時、別人と偽る為に着けるものなのだと」

「てことは、仮面を着けるとスイッチが入る感じ?」

「正確には“切り替わり”に近いかもしれない。師匠は己を作り替えると言っていた」


 長年の心構えと習慣からか、仮面を着けたショウコさんは動きが軽快だ。


「その師匠って、演舞の指導員?」

「母だ」


 お母様で在られましたか。

 目には見えなくてもショウコさんに与えられたモノは赤紐以外に多くあるのだろう。

 今は、オレがそれを守護(まも)らねばならぬ。


「しかし……些か、報復行為が心配だな」

「一応は、顔を隠してるけど?」

「いや、父と母だ」


 あ、そっか。そこまで考えは回らなかった。


「一応、名倉課長は大丈夫だと思うけど……あの人ってなんか格闘技とかやってたりする?」

「いや、そんな話しは聞かないな。昔は国会議員だったくらいだ」

「へー。……え?」


 オレは知らなかった新事実に思わずそんな声が出る。


「聞いてないのか?」

「あまり、そう言う事を話す方では無いので……」


 名倉課長って元は議員だったのか……


「父は自分から真意は語らない。数少ない言葉で済ませようとする」

「それわかるかも」


 なるほど。相手を見透かす様な視線は議員と言う立場で培われたモノだったのか。

 相手を不快にさせずとも、言葉巧みに流れを誘導する話術。当時は相当なやり手だったに違いない。


「だから、物理的な荒事には向かないんだ」

「あ、それなら大丈夫だよ。ウチの会社には頼れる人が沢山いるからさ。特に4課」


 何が起こっても、ふっはっは! と笑い飛ばす社長を筆頭に、腕っぷしでも達人クラスの幹部三人。

 4課のオルトロスに鷹さんに箕輪ライダー。後、おしり警察。

 武力的にも相当な戦力が揃っている。とんでもない事ですよ、これは。


「4課は弁護士だけと聞いたが?」

「文武両道なんて可愛いレベルだよ。前に政府から攻撃された事があるけど返り討ちにしたからね」

「……君の会社は何なんだ?」

「ただの人材派遣……だと思うんだけどなぁ」

「傭兵でも派遣しているのか?」

「そんな事はない……と思う」


 裏側と4課に関わらなければ、ホワイト企業だ。残業もないし、有休もあるし、ボーナスも出るし。基本的に休みは週二日だし。


「オレとしては母君の方が心配かな」

「母は問題ない。銃を避ける」

「…………避けるの?」

「すまない訂正する。弾丸を避ける」

「……撃たれてから?」

「当然だろう? 手で投げるわけではあるまい」


 あーあ。まずい。ショウコさんと会話がズレてきた。


「昔、演舞の時に乱入してきた麻薬狂いの奴が居てな。正面から銃を撃ってきたが、それを、全弾かわして斬り伏せた」

「わーお……」

「それがキッカケだったな。私も母の様な厄祓いに成りたいと思ったのは」


 ショウコさんは淡々としているが、どこか憧れる様に熱く語る。

 うーむ。オレが助けに来なくても良かったんじゃないかなぁ……

個性豊かな社員のいる会社です

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