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懐いてた年下の女の子が三年空けると口が悪くなってた話  作者: 古河新後
17章 社員旅行編3 初日の夜

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第216話 どういう事だよ

「二人はケイの通ってる道場の門下生なのね」

「そーなんすよ」

「まさか七海の姉御がこの会社に居たなんて思いませんでした」


 鬼灯と和気あいあいに会話をする佐藤と田中。好感触を与えていると手応えを感じていた。


「佐藤先輩、武術やってるんですか? 初耳ッス」


 花より団子な岩戸は鍋を口一杯に頬張っていた。入社一年目の彼女にとって知らない事ばかりである。


「男には常に一定の腕力が必要なんだ」

「そーそー。それは時に己や大切な者を護るために使われる」


 佐藤の言葉に田中は腕を組んで頷く。8月の祭りの時にケンゴに対して暗黒面をさらけ出した事は墓場まで持っていく事案だ。


「大宮司道場だったかしら? ケイの通ってる所」

「そうです。師範代がガチな方でして。道場では常に稽古をしてます」

「プレッシャーに強くなったよな」

「へー。ちなみに何で道場に通おうと思ったんスか?」


 岩戸の何気ない質問に佐藤と田中は言葉に詰まった。


「あ、あー、あれだ! 己を高めるため!」

「そ、そう! ジムよりも実戦的にな!」

「なーに言ってんだよ、お前ら」


 と、一つ挟んだ席に座る七海が日本酒を飲みながら口を出す。


「最初、ナンパした女がチーマーの彼氏持ちで、奴らにボコボコにされた所を俺が助けたからだろうが」


 当時を知る七海の言葉に二人は石像の様にピシッと固まった。


「その後、俺のケツ追っかけて道場の門を叩いたんだろ? アホ共」

「あ、姉御!」

「その話、どこで!?」

「ノリトからだ。アホ共」


 七海は弟のノリトから、佐藤と田中が姉の事を聞いてきたと言う情報を聞いていた。

 ちなみにその時ノリトは、外面だけは良いよな姉貴は、と余計な事を言ってげんこつを貰っている。


「佐藤先輩……」

「ふふ」


 呆れる岩戸に楽しそうに笑う鬼灯。そして、


「良い原動力だ」


 岩戸の隣に座る国尾が腕を組んで聞いていた。


「国尾君。はい」

「ありがとうございます。鬼灯の姉御」


 鬼灯はよそった鍋料理を国尾に渡す。

 二人分の席が必要な国尾は料理を食べる前にプロテインを取り出した。


「プロテインっすか?」

「うむ。筋肉を成長させる為には、体重の倍のタンパク質を要する。この(からだ)を維持するためにプロテインは俺の人生において水と同じなのだ」


 まだデカくなるつもりかよ。と、付き合いの浅い佐藤と田中でもツッコミたくなる状況だ。


「ちなみに旅館の許可はちゃんと得ている。料理もきっちり食べるぞ!」

「国尾さんって凄い筋肉スッよね。何の為に鍛えてるんスッか?」

「愚問だな。君は魚が泳いだからって疑問に思うかい?」

「思わないッス」

「そう言う事だ」


 もぐもぐと岩戸。

 どういう事だよ。と、佐藤と田中は心の中でつっこんだ。


「へー、どんなプロテイン使ってるスッか?」

「この『アルティメットマッスル』に興味があるのかい? 海外のボディビルダー達も御用達にしている、究極のプロテインだ。日本では販売されていない」

「何か凄そうッス」

「多少値は張るが、それに似合う効果がある! この身体がその証明だ! あ、これチラシね。今なら送料は無料キャンペーン中! ほっほう!」

「国尾さん。前から思ってたんスけど、その“ほっほう”って笑い方なんなんスか?」

「君は、鳥が飛ぶことに疑問を抱くのかい?」

「抱かないッス」

「そう言う事だ」

「「どういう事だよ」」


 今度は口に出た佐藤と田中。国尾と岩戸の意味が全く噛み合ってない脳筋会話に思わず声が出たのである。


「ふふ……うふふ……」


 その横でツボに入ったのか、鬼灯は必死に笑いを堪えていた。






「じゃあ、ダイヤさんは鳳のトコに泊まってたのね」

「はい」


 リンカは海外支部のダイヤ・フォスターがどのような滞在を得ていたのか泉に興味本位で質問されていた。


「海外支部の人かぁ。その二日は私は丁度、出張だったからなぁ」


 姫野はダイヤが居るときに会社を離れていた。


「鮫島君」


 加賀に鍋をよそいながら話をするリンカに黒船の声が飛ぶ。


「君は学校ではそれなりにモテるんじゃないのかい?」

「……え?」


 唐突な黒船の言葉にキョトンとするリンカ。


「いきなりですね」

「若い子の恋愛模様と言うのは興味がある! 差し支えの無い範囲で語って欲しいものだ!」


 泉のツッコミに黒船は、いつもの調子で、ふっはっは! と笑う。


「あ……えっと……あんまりそう言う事は……」

「君は今の段階でも魅力的だからね! 同年代では言い寄る異性も後が経たないだろう」

「そ、そんな事無いですよ! あたしよりも可愛い子なんて一杯いますし!」

「それはレベルが高いな!」

「で、告白とかはされたの?」


 リンカの同様に泉は少しだけ黒船側に回る。酔いが回っていた。


「えっと……えぇっと……」


 返答を待つ黒船、泉、姫野の視線にリンカはポツリと告白した。


「一回されました……」

「わぁ。誰から? 相手のスペック!」

「返事は!? 付き合った!?」


 詰め寄る泉と姫野にリンカは、正直に答えるべきではなかったかなぁ、と顔を赤くして縮こまる。


「サッカー部の一つ上の先輩……です」

「返事は?」

「こ、断りましたよ! 相手の事もよく解らないし……あたし、好きな人いますし」


 好きな人いますし。この言葉に泉と姫野は益々反応を示す。


「誰誰? お姉さんに教えてよ、リンカちゃん~」

「こんな良い子に想われる相手の人羨ましいー。誰なの? 私達も知ってる人?」

「も、もう終わり! この話題は終わりです!」


 もうちょっとだけ教えてよぉ~。と酔い絡みする二人にリンカは、おしまいおしまい! と必死に抵抗を続けた。


「……」

「加賀君。カシスオレンジを頼むよ」

「は、はい!」


 黒船の言葉にメニュー表を手に取る加賀。

 その辺りの事情をケンゴ側から知る彼は変に飛び火しないように気配を消していた。

恋バナはいつになっても的

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