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懐いてた年下の女の子が三年空けると口が悪くなってた話  作者: 古河新後
16章 社員旅行編2 ワイルドホース
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第194話 再会のテツ(43)

 オレ、リンカ、社長、轟先輩、ヨシ君のメンバーは入り口に一番近い乗馬コーナーに足を運んでいた。


「こちらは、乗馬体験コーナーとなります。施設内にある三つの厩舎(きゅうしゃ)を経由する形での乗馬となります」


 案内を対応してくれた女性職員の方が丁寧に説明をしてくれた。

 小綺麗な厩舎は、馬との触れ合いも可能な様子で、待機している馬は顔を出し、他の客もまばらに存在する。


「か、噛んだりしませんか?」

「しませんよー」

「な、撫でてもいいですか?」

「驚かさない様にゆっくりお願いします」


 轟先輩とリンカは物珍しい厩舎にワクワクが止まらないらしい。恐る恐る馬に触れようと手を伸ばすと、ぶるる! と鼻を鳴らした動作に二人は、ひゃ!? と驚く。


「ふむ。やはり、美と馬は絵になりますな」


 ヨシ君はリンカと轟先輩の様子を専用のカメラでパシャリと納める。


「ヨシ君って撮影係り?」

「社長より大役を任されておりますぞ」

「頼むよ! ヨシ君! この旅行の記録は君の手にかかっている!」

「ほっほっほ。お任せを。素晴らしいアルバムを提供したしますぞ」

「フラッシュは馬がびっくりするから、厩舎では撮らない方がいいかも」

「やや、気を付けますぞ」

「ヨシ君! 甘奈君は多めに撮っておいてくれたまえ!」

「これはこれは。贔屓ですかな?」

「贔屓だよ!」

「職権乱用だぁ……」


 何にせよ、後々の思い出として今回の旅行は後にも先にも良いものとなるだろう。


「触れ合いが終わりましたら、乗る馬を選んで下さいね」

「ほう! どの馬でも良いのかね?」

「はい。今、丁度他の厩舎との数合わせで何頭か移動を済ませ、休ませた後なので」

「タイミングが良かったようだね!」


 と、言うわけでオレらは馬を選ぶ。とは言っても、専門の知識があるわけでは無いので見た目で選ぶことになりそう。


「馬は選んで良いのか?」

「らしいよ。乗りたい馬ある?」


 オレはリンカにその情報を伝えると彼女は、うーん、と視線を巡らせる。


「全然わからない」

「ははは、だよね。でも深く考えなくてもいいよ。きちんと調教されてるハズだし、人と距離の近い環境の馬は人にも馴れてるからさ」


 オレは、軽く手を振って馬にこちらを認識させ、耳がピンと張っている事を確認すると、首筋を軽く撫でる。


「声をかけながらゆっくり近づいて、こっちを認識させるんだ。耳が伏せてたら不機嫌な証拠だから近づかない方がいい。首筋を撫でると喜ぶよ」


 馬とのふれ合い方をリンカへ簡単に教える。彼女は恐る恐る馬の首筋に触れた。


「――わっわっ!」


 触れて大興奮なご様子。その証拠に嬉しさのあまり、語彙力が最低値に落ちていた。

 撫でられた馬も嬉しそうな様子が不思議と肌から伝わってくる。


「この子にする?」

「そうだな――」


 今撫でている馬に乗るか聞いて見ると、


「うひょいー! まさにここは聖地、だ! 惜しむべきは平日でないと言う所、だ!」


 厩舎の奥で騒がしい人がいる。小太りの中年男性。カメラを片手にカシャリ、カシャリとシャッターを切っている。


「きてよかっ、た!」


 少し声が大きいと感じたが、職員さんは厩舎の外にいるご様子。代わりにオレは注意に向かった。人間だって休む場所では静かにしたい。それは馬も同じだろう。


「あの、すみません。馬は臆病な動物なので大きな声や音はあまり良くないですよ」

「やや申し訳な、い」

「どうも。……え? テツ?」


 オレは目の前に立つ人物を見て、何者なのかを理解した。


「ぬう!? 小生のコードネームを知っていると、は! どこの組織の者、だ!?」


 相変わらず、自分の世界を闊歩してやがる。確かに組織の者だけれども。


「あー、誠に言いにくいんだけど……」


 オレはチラッと馬の触りかたを轟先輩に教えているリンカに視線を向ける。


「ユニコ君。初代」

「!」


 それだけでテツは思いだした様だ。


「まさか……鳳同士! 中々連絡が無いモノだから組織の者に殺られたのかと思っておった、ぞ!」

「だから声が大きいって」

「すま、ぬ」


 変に常識はあるんだよなぁ。後、テツの連絡先はヒカリちゃんに全部削除されたんだ。すまねぇ。


「鳳君。知り合いかね?」


 すると社長がスタスタと歩いてきた。少しマズイかも……ユニコ君でヤクザ相手に大立ち回りしたと聞かされたら――


「えーっと、まぁ知り合いです」

「歯切れが悪いね。あまり良くない関係かな?」

「小生の名はテツ。彼とは死線を越えた同胞である、ぞ」

「あ、ばか」


 社長が興味を持った眼をしている。適当にはぐらかして――


「初代を駆り、ヤクザ共をなぎ倒す様、まさにかつての再来! あの事変は商店街にとっても大きなターニングポイントとなったの、だ!」


 社長の目が興味にキラリッと光る。


「ほう。詳しく」


 観念しよう……

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