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第190話 貴方が主人公です!

「あー、お前ら行け。ほら、見逃してやるよ」


 流石、七海課長。現れた瞬間に全てを察して泉と同じ温情だぁ! しっしっ、と面倒そうに手を振るオマケ付き! でも逆効果にしかならないんですよね……


「同じことばっかり言いやがって!」

「ふざけてんじゃねぇぞ!」

「まだ、生意気な口を効きやがるか!」


 いや……本当にお前ら止めとけ。オレはナンパ三人衆に同情の眼を送る。すると、仮屋殿が――


「おい、女。お前の声は聞き覚えがある」

「あ? 近づくんじゃねぇよ、ハゲ。俺はお前なんて知らねぇよ」


 おっと、仮屋殿がピキッたよ。沸点の容量はそんなに高くないご様子。


「女だからって殴られないとでも思ってんのか?」

「恐喝か? ん? ほら、先に殴れよ。正当防衛でぶっ殺してやるからよ」


 どっちがヤクザかワカンネェや! 七海課長も殴って黙らせるスタンスに切り替えた様だし……確かに話は通じなさそうですけどね。て言うか、こっちの男衆はどこに行ったの?


「あ、そうだ。あの人だ」


 その時、リンカが何か思い出した様に声を上げた。泉が尋ねる。


「知ってる人?」

「先輩に負けた人」

「先輩って?」

「高校の二つ上の先輩」


 その情報を聞いた泉は七海課長へ声を上げた。


「七海課長ー、そいつ高校生に負けたみたいですよー」


 おっと、仮屋殿が更にピキピキしたぞ。割れそうだ! 相当に屈辱な事だったんだろう。


「高校生? あぁ、そうか。テメー、リョウ負けたクソカスか」

「あぁ!?」


 仮屋殿が低いトーンで本気でキレる。こぇぇ……オレなら間違いなくチビるレベルの睨みを七海課長は平然と受け止めている。


「お前……あの時の女か……」


 すると、仮屋殿も何かを思い出した様子。スッとポケットから手を出し臨戦態勢。とうとう戦る気だ! 


「仮屋さんを怒らせやがって馬鹿どもが!」

「やっちまってください!」

「オラー、全裸で土下座しろや!」


 どこの世紀末だよ。後、ピアス野郎、全裸土下座にこだわるんじゃねぇよ。


「意気がってんじゃねぇよテメぇら。俺はリョウ程優しくねぇぞ」


 七海課長も景色が歪むほどのオーラを漂わせる。やっちゃってくださーい! と煽る泉。雑魚はやります、とカズ先輩。はわわ、と姫さん。リンカは鬼灯先輩に止めないんですか? と声をかけ、鬼灯先輩は……スマホを取り出して録音してる?


「鳳。雑魚を一人ヤレ。俺はシュンに手を出そうとしたゴミを片付ける」

「オレも戦力に入ってるんですか……」


 何とか場を納める手段は……ないよねぇ。

 子供の喧嘩とは訳が違う。正真正銘の戦争だぁ!


「ケイちゃん! ダメだよ! 喧嘩はダメー!」


 紙パック自販機でコーヒーを買っていた轟先輩が止めに駆け寄ってくる。


 やったぁ! 平和主義者(ピースメーカー)はオレだけじゃなかった!

 けど、この状況はサバンナで肉食獣の争いを草食獣が止めるに等しい。こう言ったら悪いが……轟先輩じゃ力不足だ。


「あう!?」


 あ、何もない所で、右足に左足を引っ掻けると言う嫌な奇跡が起きた。轟先輩の持っているコーヒーが仮屋殿にバシャリ。






「……」


 全員、轟先輩の行動に戦意を抜かれて停止する。転んだ轟先輩は、痛たた……と起き上がると、コーヒーを頭からポタリとする仮屋殿を見上げて、シュバッと立ち上がる。


「ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい!」


 全自動謝り機となった。何か、轟先輩っていつも謝ってるイメージ。そんな彼女の行動にこちらの陣営は少しだけ毒気が抜かれた様だ。


「……」

「ごめんさ――きゃ!」


 しかし、仮屋殿は堪忍袋が炸裂したらしく、なんと轟先輩を叩いた!


「どいつもこいつも……ふざけやがって!!」


 殺気立つ仮屋殿。同時にこちらの陣営にも再び火が着いた。


「ふざけてんのはテメぇだよ……」

「姫~救急車呼んどいてー」

「あの……お二方……? ちょっと冷静に――」

「「ああ?」」

「ごめんなさい……」


 オレは止めようとした! けど、無理だった! 無理だもん! 怖いし! 死にたくないもん!


「あーあ。仮屋さんを本気にさせちまって」

「馬鹿な奴らだぜ」

「全裸土下座で許してやったのによぉ」


 三人衆もめんどくせぇ……


「大丈夫かね? 甘奈君」

「え?」


 と、いつの間にか社長が轟先輩の元に現れていた。あれ? さっきまでバスの所に居ましたよね?


「あ……だ、大丈夫です……コーヒー……持って行こうと思ってたんです……」

「そうかい? 本当に甘奈君には頭が上がらないね」


 轟先輩はそう言うが内心は怖かったのか、優しい社長の言葉にポロリと涙がこぼれていた。


「頬が少し赤くなってるね」

「で……でも……思った程……痛くない……ですから……」

「いつも言っているだろう? 痩せ我慢は良くないと。安心したまえ」


 社長は立ち上がる。その背中に場の全員が注目せざる得ない程のオーラを感じ取った。


「君の側には私がいる」


 そして、表情を少し冷ややかに仮屋へ歩み寄る。

 うーん。貴方が主人公です!

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