表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
182/700

第182話 おもしれぇな! この界隈は!

 ヒカリが倒れると同時にサウナの扉が開いた。


「! ヒカリちゃん!」


 入ってきたのはダイキ。一通り身体を冷やして心も落ち着かせ、戻ってきた所だった。


「ダイキ君! 急いで谷高ちゃんを水風呂へ!」

「はい!」


 ヒカリを抱き抱え、もの○け姫のアシ○カみたいに共に水風呂へ入る。バスタオルは、ひらり。


「フッ」


 そして国尾も浴室へ行くと、ダイキはヒカリに語りかけていた。


「ダイキ君! 彼女に伝えてくれ!」


 浴室に響く声で国尾は言うと、くるっと背をむける。


「また会おう」


 ほっほっほほう! と国尾は上機嫌に笑ってサウナを後にした。そして、愛を変換し体力を回復する。


 国尾HP500/900→900/900(愛を変換)


 ズボンを履いて、ロビーに戻ると西城が売り上げの集計を行っていた。


「あらん? 正義ちゃん。もう良いのかしらん?」

「最高の空間でした。おかげで、更に強くなれました」

「そぉん。満足して頂けた様でなによりよん♪」

「ここの雰囲気も最高です! ジムで宣伝をしても良いですか?」

「構わないわん。でも二部屋は予約制だから、サイトからよろしくねん♪」

「オーケー!」


 素晴らしき者と出会い、そして新たな可能性を見せられた国尾は扉を開けて出ていく。

 外に出ると昼の日差しが眩しい。


“生半可じゃないわよ……この刹那は!”


「フッ……水溜まりか……おもしれぇな! この界隈は!」


 ほっほほう! やほー! などと声を上げながら上機嫌に行きつけのサウナへと歩いて行った。

 そして、上半身半裸だったので警察に一回職質された。






「ふーいー」


 脱衣所から出たヒカリはロビーで西城と話しているダイキを見つけた。


「ダイキちゃん、いいわねぁ。どう? 雑誌読者モデルやってみなぁい?」

「えぇ!? い、いいですよ! 僕って地味ですし……」

「そんな事ないわぁん。笑顔はとても魅力的よぉん。実を言うとねん。今年の地方大会での笑顔にアタシも首ったけなのん♪」

「あはは……あれは恥ずかしかったです」


 舞い上がって居たとは言え、テレビに正面切ってあんなことは言うものじゃなかったと今では後悔していた。


「ダイキ」

「あ……ヒカリ……ちゃん」


 ヒカリは顔を赤くするダイキに、自分も裸を見られた事を思い出し、少し顔が赤くなる。


「……もー! こっちまで恥ずかしくなるでしょ!」

「あ……うん……」

「お腹も減ったし、何か食べに行くわよ! 先に外で待機!」

「は、はい!」


 忠犬の様に律儀に指示に従うダイキ。次にヒカリは西城へ頭を下げる。


「わたしの我が儘に付き合わせてしまい、本当に申し訳ありませんでした」

「いいのよん。ヒカリちゃんはモデルである前に女の子ですものん。若い子の事情に協力出来て良かったわん」

「あの……さっきも言いましたが。この事は父と母には……」

「大丈夫よん。アタシ、口は固いから♪」


 バチっとウイクンを決める西城さんにヒカリも笑みで返す。


「何か……埋め合わせが出来れば良いんですけど……」

「あらー! 律儀ねぇん! それなら、新しい事業計画にコスプレ雑誌を手伝ってくれるん?」

「被写体ですか? なんかいつもと変わらない様な……それに、そんなのに手をつけてるなんて初めて聞きましたよ?」

「ふふ。社長も若い子の今をどんどん残したいって、最近話が出たのん。ヒカリちゃんはモデルの方で忙しいから、こっちは応募して人を募ろうって取りあえず決まっててねん」

「やらせてください」

「社長にも打診するわん♪ すぐにって訳じゃないけど、衣装の発注先はもう決まってねん」

「へー、どこですか?」

「『スイレンの雑貨店』よん」






「……」


 ダイキはバサバサと近くの電線に止まったカラスを見て、でかいなぁ、と感嘆していた。


「お待たせ。行くわよ」

「うん」


 ヒカリを先頭に二人は昼になり交通量の多くなった道を歩く。


「ヒカリちゃん」

「なに?」

「今日の事、誰にも言わないからね!」

「――ふふ。そうね。わたし、ダイキに弱みを握られちゃったなぁ」

「えぇ!? そんな事、するつもり無いよ!」


 あたふたするダイキを見てヒカリは笑う。


「ダイキ。野球、頑張りなさい」

「……僕で良いのかな」


 一応は勘が衰えない様に走ったり素振りをしたりはしているが、それでも連携などの練習も必要だ。


「当たり前でしょ。あんたは、超高校生でも白亜高校一番バッターでもある前に――」


 ヒカリはくるっと振り向く。


「わたしの幼馴染みの音無大騎なんだからさ。何を失ってもそれだけは変わらないわよ」


 太陽と合わせた様な笑み。ヒカリにとって無意識に作ったソレは本当に大切な人にしか見せる事がなかった。


「……ヒカリちゃん。昼ご飯食べたら、キャッチボールに付き合ってくれる?」

「良いわよ。初めてダイキから誘ってくれたわね」

「あ……はい。お願いします」


 今回の一件で一皮むけたダイキは野球部へ戻る。

 そして今まで以上の活躍を見せ、春の甲子園準決勝にて、再び『四季彩高校』と相対するのは未来のお話し。






「……ほう、『ウエストロック』か」

「そうです」

「早速、予約だ! サウナマスター国尾!」

「もう取っています! レジェンドサウナー松林殿!」


 後日『ウエストロック』に大量のマッチョが押し寄せた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ