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第170話 ケンゴVS大宮司亮

「一応は審判に立つけど、あまり熱くならない様にね」

「はい」

「ただの組手ですよ~大袈裟な」


 オレと大宮司青年の組手にはシモンさんが審判をしてくれる事になった。他の面々は正座(犬はおすわり)で傍観に努める。


「リョウは集中するとギアが上がって行くんだ。その内、周りの声も聞こえなくなる程に集中するからね」


 え? なにその暴走特急。普通に怖いんですけど……


「気をつけます」

「よし」

「いや、よし、じゃなくてですね……」

「大丈夫だよ。私も見てるしケイも居る。止められなくはないさ」


 なんか、口調から確実性は無さげにきこえるぞぅ。


「ケイさんや師範では敬意の方が強くて自制心のコントロールが上手く行かないんです。鳳さん、よろしくお願いします」

「う……まぁ、わかったよ」


 悩める若者の力になるのも社会人の勤めか……


「じゃあ、開始」

「軽っ」


 シモンさんはスッと距離を取る。

 大宮司青年は構えを取るとその姿が少し大きくなった様に見えた。

 凄いプレッシャーだ。並みの不良ならこれだけで圧されるだろう。


「問題はない……か」


 プレッシャーは問題なく、いつも通り動ける。社会人は精神負荷(ストレス)との戦いだ。この程度の圧など比べ物にならない場面をいくつも越えてきたのさ!


「行ってみるか、っと」


 身を低くして見え見えのサンボタックルで向かう。組み付いて投げる。それがコマンドサンボの基本だ。相手の重心を的確に捉えて崩すのである。


「さて――」


 迎撃するか、それとも避けるか。人伝にしか聞いてない大宮司青年の実力やいかに――


 すると大宮司青年はオレのタックルをあっさり食らった。


 いいのか? 投げ――


「――――」


 と、オレの脳が見せたイメージは巨木(これ)。ぶっとい根を大地に這わす程に年期の入ったヤツ――


「違う」


 大宮司青年が腰に組み付くオレに告げる様に言うと力任せに引き剥がした。おいおい。大人一人分の体格を簡単に振り回すなよ……


「っとと」

「言っとくけどな、リョウを倒せるヤツは日本には存在しねぇぞ」

「その情報、先にくださいよ……」


 七海課長の助言が飛ぶ。全然助けにならない情報だが、うーむ。


「あの時と違います」

「どの時?」

「レジャー施設の時です」


 あー、くそ。やっぱり感づいたか。まぁ、深い武術の心得があれば隠しきれるモノでもないか。


「知らない方がいいよ。死神がやってくる」


 猟銃持ったジジィがな。しかし、オレの警告に対して大宮司青年の気迫は上がった気がする。げっ、そう言うのに燃えるタイプだったか……


「一手、ご教授願います」


 大宮司青年の構えが少し柔らかくなり、スッと滑るようにこちらに間合いを詰めていた。

 限りなく無拍子に近い動き。襟首と袖を取ってそのまま背負い投げ。


「うおぅ!」


 オレは投げられつつも、咄嗟に足の指で大宮司青年の襟を摘まんで投げの勢いを殺ぐ。完璧な無拍子で無かったからこそ、間に合った反応だ。


「つ!?」


 そんな風に威力を殺されると思っていなかった大宮司青年。オレは受け身も含めるとほぼノーダメージ。


「ストップ。リョウ、道着を直しなさい。鳳君は立てるだろう?」


 シモンさんが止める。もう、実力差はハッキリしたので終わりでいいですかね?


「お願いします」


 道着を直した大宮司青年の真摯な眼。その眼は止めてくれー。止めらんなくなるでしょーが!


「あぁもう。後一回、どっちかが倒れたら終わりね!」

「はい」


 オレはターミネーターと再び対峙する。親指を立てて溶鉱炉に沈んでてくれ……






「ハハ、鳳のヤツやるじゃん」


 七海は大宮司とケンゴの攻防に他流試合を観戦している様に楽しんでいた。駿は、にいちゃ、いけー! と兄を応援し、ノーランドはおすわりを維持して、へっへっへっ。


「……」


 二人と一匹に対してリンカはハラハラしっぱなしだった。

 どちらにも怪我をして欲しくない。いや……あの時、屋上でヤクザの人を倒した大宮司先輩の実力を考えると……


「あの……七海さん。もう止めた方がいいんじゃ……」

「ああ、鮫島ちゃんには少し刺激が強かったか?」

「いえ……それは問題ないですけど……」

「なら、もう少し見逃してくれ。誰も怪我をさせない様にするからよ」

「でも……」

「リョウはな。俺らには弱みを見せねぇんだよ」


 七海は真面目で全て己の中に抱えてしまう弟弟子の事を心配していた。


「少しは吐き出させてやりてーんだ。意を汲んでくれねぇか?」

「……わかりました。でも危なくなったら……あたし、止めに行きますから!」

「はは、そうだな。そんときは協力してくれ」


 その時だった。


「動くな! 大宮司青年!」


 その声に会話に意識を反らしていた二人、ケンゴと大宮司を見る。


「にいちゃ!?」

「おい――」

「――」


 咄嗟の出来事にリンカは止める為に立ち上がった。

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