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第155話 YESかNOかわかんねぇ

「ケンゴ。どうだ? 今日は飯でも行かねぇか?」


 終業し、帰り支度を整えていると獅子堂課長が声をかけてきた。課長は、月一くらいの感覚で課の人間を飲みに誘う。

 課長の奢りでの飲み会は人柄も相まって窮屈はせず毎回何人か集まる。オレも誘われた時は、二つ返事で毎回嬉々として参加する事が当然となっていた。


「あ、すみません。今日はちょっと都合が」

「ん? そっか。リンカちゃん関係か?」

「まぁ……鮫島家関係ではありますが」

「ほぅ……ついに一線を越える気か!」

「ふふ。獅子堂課長、声を上げて言う事ではありませんよ」


 横から鬼灯先輩が会話に参加する。


「瀬奈さんのお誕生日でしょ?」

「え? 何で知ってるんですか?」

「前にリンカさんからアドバイスを求められたの」

「なにぃ! 鮫島婦人の生誕祭か!」

「はい。一週間前から色々と用意してたので」

「ならしょうがねぇな。気が済むまで祝ってあげな」

「ありがとうございます。ちなみに今日はオレ以外には誰が来る予定ですか?」

「鬼灯と徳道だな。取りあえず」


 これまた、緩急の強いパーティだなぁ。


「他の課の人にも声をかけましょうか?」

「来る奴いるか?」


 鬼灯先輩の提案に獅子堂課長は腕を組む。鬼灯先輩が居るだけで泉の奴は喜んで尻尾を振るだろう。


「グループLINEで聞いてみますね」


 鬼灯先輩の身内が参加しているグループLINEは他も参入自由だ。しかし課長はもちろん、社長も入っているため輪に入るには相当な度胸がいるだろう。ちなみにオレは加入済み。


“今日、獅子堂課長の奢りで飲みに行く人募集。鬼灯と徳道は参加します。集合は一階ロビー”


 と言うメッセージを鬼灯先輩が入れる。すると次々に返答が。


“残業があるから無理だ(七海)”

“死ぬほど参加したいですけど残業です。すみませーん(泉)”

“あ、参加しまーす。加賀くんも(姫野)”

“だ、そうです(加賀)”

“参加します(茨木)”

“大所帯になってもよろしいのであれば(吉澤)”

“ほっほう!(国尾)”

“参加しやす(箕輪)”

“参加(空)”

“しまーす(海)”

“今日は都合が悪い(真鍋)”

“アタシは遠慮するよ(三鷹)”

“今回は遠慮します。またの機会に(名倉)”

“お酒飲まなくて良いなら……(轟)”

“ふっはっはっは! 行くよ!(黒船)”


 最後にBIG BOSSが出てきたけど、LINEは凄い事になった。返信数ヤバイな。藪をつついてアニマルパニックになった感じ。ていうか、国尾さんの返答はYESかNOかわかんねぇ。


「賑やかになりました」

「ガハハ! たまには良いか!」


 もう、これ宴会じゃん。平日の夜に軽く酒引っかけるレベルじゃないな。明日も仕事なのでほどほどにしてくださいよ。






「よし……」


 お婆さん――真鍋スイレンさんからの受け取り番号をコンビニで言って荷物を受け取った。

 綺麗な紙袋にはラッピングされた例の品物が入っている。更にオマケも入っていた。


「なんだろ?」


 細長い板みたいな代物。うーむ。まぁ、母に渡して開けて貰えばいいか。


『ケーキ確保したよ。後、何か買ってくるモノある?』


 彼から連絡。今日は二人で母を出迎えるのだ。今まで自分の事ばかりで祝ってあげられなかった母の誕生日。きちんと忘れていない事を伝えねば。


「特には思い付かないなぁ」


 そろそろ家に帰って夕飯の支度をせねば。母が帰ってくるまでにはきっちり揃えておきたい。


『そう言えば、ロウソクは何本いる?』

「それは禁忌なのでいらない」


 触れてはならない事は世の中に沢山あるのだ。






「危ねぇ……そうだった」


 オレは駅のケーキ屋さんで予約注文していたケーキを受け取った。

 費用は折半。全部オレが出すと言ったが、どうせあたしも買うから二つは意味ないだろ、と言うリンカの提案に納得しての決定だ。


「よし、まだ大丈夫か」


 セナさんが帰るまでまだ時間は十分にある。

 ありがとうございましたー、と言う店員さんの声を背中に受けて店を出た。


「うーん……」


 すると、ケーキ屋さんに入ろうか迷っている人が目につく。ニット帽に丸型のサングラスをかけて、若干変装気味な男だ。年齢はオレよりも上だろう。


「どうしました?」


 オレは自然と話しかけた。己の中の好奇心を抑えきれなかったのである。まぁ、少し話を聞く程度は問題あるまい。


「お? 悪いね。出るの邪魔しちゃった?」

「いえ。何か悩んでるようでしたので」

「まぁね」


 どうしよっかなぁ。と彼はケーキの有無に葛藤してる様子。


「お祝いですか?」

「ん? まぁね。ツレの誕生日なんだけど、色々と忙しくてね。特別なのを用意出来てないんだ」


 彼も身内の誕生日ケーキを買いに来たらしい。まぁ、ケーキと言えばお祝い事が主であるが。


「個人的には大切な日に渡して貰うだけでも嬉しいです。ちゃんと覚えててくれたんだー、って思えますし」

「そんなモンかねぇ」

「絶対そうですよ!」


 これからお祝いすると言う事でオレも若干テンションが上がってたりする。おっと、


「それじゃオレはこれで」


 オレもコンビニでセナさんに渡すプレゼントを受け取りに行かねば。


「サンキューな。青年」


 と、彼はおツレさんにケーキを贈る事を決めたようだった。

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