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第129話 雷遁『糸雷撃』

 暁才蔵(忍者)VSオレら。場所は真っ昼間の駅構内。

 前哨戦の騒ぎでちらほらギャラリーが増えて来た。そろそろ駅員も駆けつけそうなのでせめて場所だけでも移したい所。

 オレはそっと七海課長へ寄る。


「七海課長」

「なんだ?」


 じゃますんなよ? と人を殺す眼を向けてくる。ひぃ、耐えろオレ。このままだと終わるのはオレらの方だ。


「か、監視カメラもありますし……忍者を駅構内から逃げるように誘導しましょう」

「…………」

「ほ、ほら。オレらの戦闘に巻き込んで知らない人が怪我するかもしれないですし!」

「……わかったよ」


 よく頑張ったオレ! 凄く怖かったよぉ。才蔵の様子を確認しつつ、ダイヤ達も見る。すると彼女はヨシ君からスケッチブックを渡されている。なにやってんだ?


 その時、シュッ、と何かが飛んだ。バキャ! ジジジ……


「某を映そうなどと……笑止千万!!」


 才蔵がどこに持っていたのかクナイを投げて監視カメラをぶち抜いた。

 うおぉ?! マジかコイツ! 凶器なんて持ってやがった!?


「痴漢、窃盗、脱獄……器物破損も追加だ。懲役喰らっとけ、クソ野郎!!」

「相手は武器を持ってました!」

「正当防衛が成立ですよ!」


 七海課長と空さん海さんが三方向から同時に攻める。流石にコレは死んだな才蔵。オレは巻き込まれない様にダイヤとヨシ君の元へ。


「これが現代人の限界よ!」


 コロ……と、いつの間にか才蔵の足元にゴルフボールサイズの玉が二つ転がっている。

 次に才蔵が、忍! と言うと、ちゅど! と言う音と共に四人を煙幕が呑み込んだ。


「爆発物!?」

「ワォ! アンビリーバボー!」

「煙玉ですな」


 課長達から離れていたオレ達は難を逃れたが、接近した三人はまともに煙の中に。


「空! 海! あんまり吸うな! 煙の外に走れ!」


 煙の中から七海課長の指示が飛ぶ。的確だ。この煙玉で冷静になってくれたみたい。


「鳳ィ! そっちに行ったぞ!」


 ボフッ、と煙の中から才蔵が身体を前屈みに腕を組んだ状態で走り出てきた。結構速ぇぇ!


「ニンジャ!」


 進行方向にはダイヤ。才蔵は手の組みを解く。野郎、また尻を触る気か!? オレはダイヤを庇うように前に出る。


「某の忍道、邪魔するなかれ!」

「うるせぇ! 出来ればオレもお前とは1ミリも関わりたくないわ!」


 だが、ダイヤが狙われるなら話しは別だ。七海課長達は煙の中。どんどん騒ぎがでかくなる。どう収集つけんだ? コレ――






 暁才蔵(たぶん偽名)。コイツは単なるコスプレ野郎じゃない。忍者コスプレとヤバい技量を掛け合わせた犯罪者だ。


「ダイヤ! オレの後ろから離れるな!」

「エ! ア……OK」

「いや……引っ付けって事じゃなくて――」

「嘆かわしい!」


 才蔵が意味不明な事を言ってくる。そして、ヴゥン! と残像を残しオレをすり抜けた。


「ぬぅ!?」

「さっ、せるかよ!」


 オレは去り際にダイヤの尻を触ろうとした才蔵の手をパシッと取って阻止。この動きは、夏祭りで箕輪さんの動きを参考にしたのだ。たしか……


「カバディ」


 だったか? 掛け声は――


「残者の術を見切るとは! 貴様! どこの里の者だ!? 火場出(カバデ)ィの里か!?」

「オレは忍者じゃねぇ!」


 こいつ真面目に適当だな。オレは才蔵の腕を離さず、至近距離で相対する。


「ヘァ!」

「うおぉ?!」


 至近距離からも柔軟な間接を駆使して伸びてくる才蔵の前蹴り。オレは咄嗟に潜るようにかわし、残っている軸足へ手を伸ばす。転ばせれば――


「セイッ!」


 掴んでいる手を逆に利用され、ガクンッと動きを阻害される。才蔵は伸びきった踵を斧の様に振り下ろし――


「――」

「ぬぅ!?」


 オレは肩を縮めて先端の部分で踵落としを受けた。逆に足を弾かれる才蔵。


「まさか……これは古――」

「はい、ストップー」


 オレは才蔵の残った足を今度こそ払い、転ばせた。そして、三角絞めを決めようと――


「でぇい!」


 謎のバネを見せる才蔵のブレイクダンスのような暴れキックにオレは離れざるえない。

 チッ、スマ○ラキャラのダウン復帰みたいな攻撃しやがって……

 才蔵は手をついて立ち上がるとオレを見る。


「かなり……やる! この暁才蔵! 同じ時代を駆ける者を感じたわ!」

「お前も現代人だろうが!」


 手を離しての対峙。才蔵はオレの後ろにいるダイヤを見る。


「しかし……異国の血を好むとは! 忍者の風上にもおけぬ奴よ! 生き恥を晒すのなら自害せよ!」

「……」


 コレあれだ。ハリウッドスターの佐々木君と同じで、会話は出来るけど成立はしないヤツだ。


「無言は否定と捉える! 我が日の本を護るため、抜け忍は奥義にて葬るとしよう!」


 え? マジ? 勘違いで奥義を使うのか? いや、そもそも奥義ってなんだよ? 火でも吹くってのか? ああ、なんか印とか結んでるし、ダイヤは、オウギ!? 見てみたいヨ! とか言ってオレの背中におっぱいを押し付けてくる。ヤメロ! 逃げらんねぇだろ!


「覚悟せよ! 火遁――」


 静かに印を唱え終わった才蔵が、カッ! と眼を見開いた瞬間、ポスポス、ビビビッ!


 才蔵は途端に身体をピンッと伸ばし、カタカタと痙攣すると仰向けに倒れた。


「……」


 オレとダイヤはそっと才蔵を覗き込むと、まだカタカタと震えて、なっ! ひっ! くっ! くくく! とか言葉にならない言葉を痙攣しながら上げている。


「雷遁『糸雷撃』と言ったところですな」

「……ヨシ君さぁ、テーザー銃持ってるならもっと早く使ってくれよ」

「確実なタイミングを図ったまでですぞ」

「オウギ……見れなカッタネ」


 残念そうにしやがって、アメリカおっぱい娘め! 火遁とか言ってたから、絶対にヤバかっただろうが!


「殺ったか!?」

「ヨシ君が殺りました!」

「念のため首を切り落としましょう!」

「いや、殺しちゃマズイですって」


 その後、騒ぎを聞き付けた駅員さんには、映画の撮影です、と言って強引に誤魔化す。

 動画を撮っているギャラリーにもスケッチブックに、これは撮影です。別のカメラ班が撮っています、と書いた物を見せて真実を隠す。

 駅員さん達はヨシ君の弁護士トークによって丸め込まれ、オレらは才蔵を抱えて駅構内を後にした。

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