転生してもまた社畜
この状態は、よく知っている。
むしろ懐かしさすら感じる。
室内の同僚たちの目はどこかうろんで、しかし、体は休むことなく、動き続けている。
稼ぎ時という名の繁忙期、あるいは、納期前夜のはずがすでに日をまたいだ納期当日、もしくは、予算使いきり駆け込み需要の年度末。そんなときによく見た光景だ。
……はっと気がつくと、私は前世を思い出していた。
「転位陣の準備は済んでるのか?!」
「エルデン森林の処理はどうなってんだ!」
財務官の同僚たちが必死に仕事を片付ける中、私は茫然としていた。
前世、社畜で過労死したら俺tueeできるんじゃなかったのか。
転生してもまた社畜とか、ひどくないか。
私は王宮所属の財務官。だから正確には社畜とは言えない。宮仕えの下僕にすぎないが……まあ実質、今世も社畜だった。
何事にも原因があって、結果があるのが世のならい、不本意にも再び社畜と化しているには訳がある。
異世界から召喚されたとかいう勇者が魔王討伐に乗り出してから、財務官たちは通常業務に加えて、後処理業務を押しつけられたのだ。
「あーくそったれ!魔物は粉砕して塵に返せってあれだけ言ったのに!死骸焼却処理の予算、もう残ってねぇぞ!」
「あぁぁぁなんで森ごと燃やしたし!」
「エルデン森林の火災は鎮火しましたけど、木々は全滅ですね。領主から苦情来てるんで、樹属性の奴を至急手配よろしく」
「人も金もねーよ!魔王討伐の勇者がやったことです、勇者に文句があるならあんたも人間の敵だ、って言っとけ。しっかり黙らせろ」
「魔物被害で、公爵から税率軽減の圧がかかってんですが」
「無視だ無視!これ以上譲ったら、来年の税収潰滅すんぞ!」
「やー……魔王が討伐されてもないのに、来年の心配か、なんて嫌味言われる立場になってくださいよ」
「そういう手合いは、魔王が討伐されたらそのときはそのときで、やれ交付金が足りないだのなんだのと、またぐたぐだ言うに決まってんだよ」
「もぉぉやだ、帰りたいぃぃ、解放してくれぇぇ!いっそ魔王に支配されたいぃぃ!」
叫んでばたりと倒れた同僚が一人。誰かがその口に回復ポーションの瓶を突き刺して、また仕事に戻る。
「や、……やめます」
つい口をついて、言葉が洩れる。
「やめてやるぅぅっこんな職場!」
後ろからがしりと肩を掴まれて、聞こえてくるのは上司の声。
「逃がさないよー」
「ぎゃーーー」
年度末という単語は個人的にどうも好きになれません。
お読みいただきありがとうございました。




