表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界召喚され英雄となった私は、元の世界に戻った後異世界を滅ぼすことを決意した  作者: 白い彗星
最期の英雄

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

536/546

終わりの見えない時間



 ……



『アンズ』



 …………



『アーンズ?』



 ………………あれ、今私……どうしてるんだっけ。どうしてたん、だっけ。



『あ、よかったよかった、目が覚めた。死んじゃったのかと思ったよー。ま、この世界で死ぬことはないんだけどね』


『……エリ、シア』



 視線を動かすと、横になっているエリシアがいる。……違う、私が横になっているんだ。空中に座った様子のエリシアは、変わらぬ様子だ。


 死んじゃったのかと、思ったって……物騒な……



『っ……』


『あは、なにが起きたか思い出した?』



 とっさに、左目を押さえる。大丈夫だ、左目はちゃんとある……抉り取られては、いない。


 私は、私が今まで殺してきた人たちの、死の体験をしている。死の苦痛を、この身で体験……でも決して死ねない。ここはこういう世界で、私の頭の中だから。


 そうだ、私は……エリシアの、死んだときのものと同じ痛みを。左目を、左目にあんな、強烈な痛みが……



『痛かった、なんてもんじゃなかったよ。それが大袈裟じゃないことくらい、わかるよね? だって、その痛みを受けたのは私自身で、アンズがしたことなんだから』


『……』



 エリシアの言うように……私がエリシアを、殺した。その方法は、生きたままのエリシアから、左目を抉り取って……という、自分でもおぞましいと思えるものだ。


 正直、そのときの記憶は私の中では曖昧だ。そのときの私は、よく覚えてないけど飢餓を感じていた……と思う。そこにある、美味しそうなものをただ求め、私は……そしてそれが、エリシアの……



『くっ……』



 覚えないことだったとはいえ、私がエリシアの左目を抉り取ったのは事実だ。それが今、証明された。その後左目(それ)を食べ、この左目はエリシアのものになった……うっ、思い出したら吐き気がしてきた。


 そうか、私は……左目を抉り取られる感覚に、あまりの苦痛に気を失っていたのか。この空間で、気を失うなんてことができたのが不思議だったが……それほど、衝撃だったということだ。あんなの、二度と味わいたくない。


 さすがに、以降の私は目玉を抉り取るなんて殺し方はしていない。だから心配いらない……とはいかない。エリシアの死の体験をしたばかりで、まだ他にたくさんの死が待ち構えて……



『ぐっ……えぇ……!』



 あぁ、また、来た……この、痛み。今度は、お腹……いや胸の奥か。締め付けられるように苦しく、内臓を直接握られているみたいだ。そしてそのまま……



『……っ、はぁ! はぁ……』



 再び始まる、苦痛の時間。あとどれだけ、この苦痛を味わえばいいのだろう。それを考えるとおかしくなりそうだし、私がこれまでにしてきたことを考えれば、当然……



『はぁ、っあ……』



 これまでは、大きすぎるダメージを受けたときでも、眠れば多少なり回復した。でもこの空間では、眠ることも気絶することもできない。


 さっき左目の痛みで気を失っていたのは、多分……左目を抉られたエリシア本人が、目の前にいたから。本人がいることで、本人が受けた苦痛が、記憶が、ダイレクトに伝わってきた。それで、気を失うほどの衝撃を受けてしまった。


 気を失っている間に別の苦痛を与えられなかったのは、起きている私に苦痛を与えないと意味がないと思ってだろうか。それとも、気を失っている間にも苦痛を与え続けられていたのか……


 どっちにせよ、この苦痛の時間はまだまだ続く。なぜか、楽しげな表情を浮かべているエリシアに、見守られながら。



『っ、が、ふっ……!』



 終わりの見えない時間が、続いていく……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ