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異世界召喚され英雄となった私は、元の世界に戻った後異世界を滅ぼすことを決意した  作者: 白い彗星
最期の英雄

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予期せぬコンビネーション



 ……この異世界『ライヴ』に来て、私は多くのものを得た。仲間、友達、力……それこそ、元の世界にいたら、決して得られないようなものばかりだ。普通に生きていては経験できなかったであろうものを、私は得た。


 ……この異世界『ライヴ』に来て、私は多くのものを失った。家族、積み上げてきた関係性、信頼……自分の知らないところで、かけがえのないものを失った。もう替えの効かない、私がその世界に生まれてから得てきたものを、私は失った。


 ……この異世界『ライヴ』に来て、私は多くのものを壊した。人の命、できた友達、この世界で培ってきたすべて。これは、得たのでも失ったのでもない……自分の手で、壊したんだ。自分が積み上げてきたものを、自分自身の手で。


 得て、失って、壊して……自分でも、なにがどうしてこうなったのかわからない。運命ってものがあるんだとしたら、いつ、運命の歯車が狂い出したのか……それとも、これが私の運命だったのかな。


 一旦積み上げた幸せを壊され、堕ちていく。壊したのは、私の選択だ……でも、これも決められていたことなのかもしれない。それはわからない。わからないけど……どうしようも、ないんだ。


 自棄になって……この世界に戻ってきて、人を殺してしまった瞬間から……私はもう、戻れないんだから。



「はぁあああ!」



 だからもう……自分の意思では、止まれない。動けなくなるまで、突き進むしかないんだ。



「っ、ったく、女の子なのにすごいパワーだな……」



 私が打ち込んだ拳を、ケンヤは魔力の盾で受ける。盾とは言ってもやたらと大きなものではなく、手のひらサイズの小さなものだ。それで拳の直撃を、防いでいる。


 とはいえ小さいサイズのためか、拳で押しきることはできる。すごいパワーなんて言われるのは、あんまり嬉しくないんだけど……



「壊れない……!」



 小さいわりに、硬い。防御を重視しているから盾としての役目があるのだろうが、それにしたって……私の一撃を浴びせても、壊れないなんて。


 だけど……



「とりゃ!」



 ケンヤの相手をしているのは、私一人ではない。隣からあこが、飛び蹴りを放つ。それも盾で防がれるが、やはり威力は高いようで後ずさっている。


 片手ずつで、私たちの攻撃を受け続けられるか……!



「らぁあい!」


「とぉ!」


「ちっ……!」



 私とあこと、両手両手から繰り出す占めて四擊。対してケンヤの盾は両手分の二つのみ……数でも、押しきれる。


 それに、なにより……



「くそ、なんだこの……コンビ、ネーションは……!」



 事前に打ち合わせたわけではない。最中に声を掛け合っているわけでもない。だというのに、私とあこの打撃はまるで示しあわせたかのように、タイミングを見計らって打ち込まれていく。


 数の攻め、それに加えて予期せぬコンビネーション。どのタイミングでなにを繰り出せば、ケンヤが嫌がるか……それを瞬時に考え、いや考えるまでもなく無意識に、放っていく。それも、あこの邪魔にならないように、むしろあこと呼吸を合わせていくように。


 単純な二対一ではない。コンビネーションが合えば、その力は足し算ではなくかけ算に、力は何倍にも膨れ上がっていく。



「せいやぁ!」


「とりゃあ!」


「くっ……!」



 私の拳が、あこの蹴りが、直撃した盾を破壊していく。パリン……と、まるでガラスが割れたような甲高い音を響かせて。これで、拳が届く……!



「そこ、だぁ!」


「おりゃあ!」



 今振るったのとは逆の、二人の拳と蹴りが舞い……ケンヤの顔面に、叩き込まれた。

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