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異世界召喚され英雄となった私は、元の世界に戻った後異世界を滅ぼすことを決意した  作者: 白い彗星
英雄の復讐 ~マルゴニア王国編~

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第45話 もう戻れない



 ……私の復讐は、始まった。とはいっても、この村でできることは知れている。私が目指しているのは、もっとわかりやすく、大きなもの。


 私を召喚したこの世界への復讐……つまり、この世界を破壊すること。それはイコール、私が救った、この世界に住まう人間すべてを殺すことに繋がる。


 ……これこそが、私の目的だ。


 私が救ったのに、私が救われないなんて……そんなこと、あってはならないだろう。許されていいはずがない。この悲しみを、悔しさを、怒りを、抑え込むことなんて私にはできない。


 だから……



「うわぁああ!」


「きゃああ、人ごろっ……」


「逃げろ、逃げ……!」



 村中で、血の雨が降り注ぐ。悲鳴が、辺り一帯を支配していく。


 フードを被り、『英雄』としての姿を消した私……殺人者の出現に、村は混乱の渦に巻き込まれる。


 当然だろう、魔王が倒され平和になったはずの世界で、まさかこんな惨劇(こと)が起こるだなんて誰が想像できるだろう。


 なんの力もない人達。『英雄』としての力を持った私にとって、いや魔王討伐の旅を生き延びた私にとって、簡単に捻り潰すことのできる人達だ。



「や、やめ……やめてぇ!」



 追い詰め、命乞いにすがる人達を容赦なく殺していく。こんな所業、世界を滅ぼそうとした魔王と、いったいなんの違いがあるのだろう。


 ただ魔物を使って自らの手を汚さずに村を襲わせる魔王と、自らの手で村人を虐殺する私。その両者に、なんら違いはないと思う。



「……助けて、ほしい?」


「! お、お願い! 助けて! なんでもするからぁ!」



 ただ機械的に、殺すだけではない。目の前で泣き叫ぶ女性に、私は助けてほしいかと、そんなことを問いかけていた。それに対し、顔を涙で濡らす女性はなんでもすると、そう答えた。


 ……そうか、なんでも、してくれるのか。



「なら……返してよ。お父さんを、あこを。お母さんを……」


「……は……?」


「返してよ!!!」



 私の主張に、女性はなにがなんだかわからないといった顔だ。それは当然だと思う。この世界の人間にとって、私の……異世界から召喚された『英雄』のプライベートなんて、知るよしもない。


 ……だから余計に、腹立たしい。



「……っ、あな、たは……」



 フードを取り、顔を見せた私と対面する女性の顔は……なんて、滑稽なんだろう。悲しみ、怒り、困惑……『どうして、『英雄』のあなたがこんなことを』……そう言いたげな表情だ。


 その女性の顔は、次の瞬間吹き飛んでいた。もう、その顔を見ていたくなかったから。



「……あっけないな」



 すべての人間の『処理』が確定し、私以外は誰もいなくなった、無人となってしまった村を見る。


 たった十分前までは、みんなが笑顔で歩き回っていた村。だけど今ここに残っているのは、村人の無惨な死体だけ。


 その中には、勇者パーティーの私達が訪れたときによくしてくれた人達もいた。悪人じゃない……彼らは、ただ今日を楽しく過ごしていただけだ。なにも、悪いことはしていない。


 それを、私は壊した……もう、あとには戻れない。引き返せたはずの道は、ここで完全に閉ざされた。



「けど、このままじゃきりがないな……」



 今みたいに村や町を、それよりも大きな国を一つ一つ潰していたんじゃ、復讐は果たしていつ終わるのかわからない。これでは、効率が悪すぎる。


 もっと、手っ取り早く……多くを破壊する方法を考えないと。このままここにいても、人は来るだろうが……それじゃ退屈だし。


 村一つ滅んだのだ。この村と交流があった人とか、近いうちに事態が伝わるだろう。だけど、それを待っていられるほど私の気持ちは静かになってはくれない。


 結局のところ、自分が動くしかない。



「……考えるのは、あとにしよ。とりあえず、あそこを目指さないと」



 考えるのは、歩きながらでもできる。今しなければならないのは、まず私をこの世界に召喚したあの男の所へ、あの男のいる国へ行くことだ。


 あの男が、あいつが私を召喚なんてしなければ……いや、あいつはただ形だけの召喚主だ、それはわかってる。それでも、あいつには思い知らせてやらないといけない。


 ……私の世界を壊した報いを。私が感じた絶望を。直接。



「…………」



 村を出た私は、歩きだす。目的地はわかっているが、方角も位置もまったくわからない。せめて空でも飛べたら、地形を把握できるのに。


 もしくは、乗り物でもないだろうか……そう考えていた時だった。



「……ん?」



 視界の端に、四足歩行の生き物が映った。


 あれは……確かボニーという生き物だ。馬に似ている。というか、馬そのものと言ってもいい。馬と違うところがあるといえば、体の色が青や黄色、それこそ様々な色があるということくらいだ。


 その生き物、青色の体のボニーがじっと私を見ている。乗り物を探していたところに、ちょうど移動手段にぴったりの生き物が現れた。


 運が、いい。



「よーしよし。こっちおいで」



 怖がらせないように、意識して優しく呼び掛け、ボニーに手招きをする。すると、ボニーはこちらへと近づいてくる。


 不思議と私は、昔から動物に好かれる。犬や猫、他にも。それが元いた世界でも異世界でも、変わらない体質であるのがちょっとした自慢でもある。



「よしよーし。ごめんね、ちょっと付き合ってね」



 ボニーの首元を、撫でる。警戒もないし、むしろ甘えるように顔を擦り寄せてくる。よし、この子に乗せてもらうことにしよう。


 ただ、移動手段が増えたところで……結局、マルゴニア王国への道筋はわからない。……さっきの村で、村人を皆殺しにしたのは失敗だったな。誰か一人残して、地形を聞いておくんだった。



「ま、しょうがないか。次、行った所で聞こうっと」



 私の復讐心は止まらない。が、急ぎの旅でもない。早く復讐したいと(はや)る気持ちはなくはないが、スムーズな復讐をするためにもまずは情報だ。


 情報を得る、それも目的の一つに加わった。目的を果たすそのために、ボニーに乗った私は、次なる人里へと歩みを進めていく。

ここまで読んで下さり、ありがとうございます!

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