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異世界召喚され英雄となった私は、元の世界に戻った後異世界を滅ぼすことを決意した  作者: 白い彗星
英雄が生まれた日、英雄が死んだ日

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第43話 復讐への道



「……ふぅ」



 異世界への復讐……それを決めた私の行動は、早かった。


 まずは異世界に行く方法だが、難しいように見えて実はこれが一番簡単なのだ。私は向こうで、召喚魔法を覚えていた。それも、単なる使い魔召喚などの小さなものではない。


 それこそ、世界と世界を越えるほどの大規模なほどの魔法を。


 私に魔法適性は、なかった。エリシアのような大魔法はおろか、ただ火を出すような簡単なものでさえ。だけど、旅を終えた頃……いや、帰るその瞬間に気づいた。なにか、大きな力が宿っていると。


 結局魔法は、使えないままだ。なのに、この世界を越える召喚魔法だけ、覚えていた。それも、最後の最後にだ。もし最初から使えていたら、私はとっととこの世界に帰れていたかもしれない。


 果たしてこの力が、魔王討伐の旅を経て得たものなのか、それとも帰ってくる拍子になにかの影響で備わったのか……今となっては、興味もない。


 ただ一つはっきりしているのは、この力があるおかげで……私は、もう一度あの世界に行けるってことだ。



「準備するもの、は……」



 そして次に、召喚に必要なもの。これはウィルから聞いたものだが、召喚には大それたものは必要なく、一番必要なものは召喚主の血。


 むしろ、召喚魔法を扱える素質、魔力量を除けば必要なものは、それだけとも言える。


 ただ、それだけ、というのは少々説明不足かもしれない。必要なものがそれだけで済んだのは、あの世界自体が召喚の大部分を補っているからに他ならない。私を召喚することを選んだのはあの世界なのだから。


 私を召喚するために使ったものは、あの世界自身の力で大半を補っている。私という個人を自身の世界に召喚したウィルは、言うなれば形だけの召喚者だ。


 対して私は、私自身を向こうの世界に召喚する。となれば、少々勝手も違う。だが、『英雄』となった私にとって、世界を渡る召喚は造作もないことだ。わかるんだ、やり方が。できるって。


 ドラゴンの肉とか、エルフの耳のような、向こうの世界にしかないものが必要ならばどうしようもなかったかもしれない。だけど、そんなものは必要ない。


 必要なのは、私になかったはずの魔力と、血と、そしてなにか、大きな対価……向こうの世界自体が召喚を助けてくれるのならそんなものは必要ないけど、そういうわけにもいかない。


 だから、なにか対価が必要だ。明確なこれというものはないが、世界を渡るに値するなにかが……



「……なんでもいい。なんでも、もっていきなよ」



 今の私にとって、なにを対価に持っていかれたところでたいした問題はない。贅沢を言うならば、復讐を執行するための目と手と足は残しておいてほしい。


 私に、奪われて困るものなど、もうないのだから。帰ってきた私は、すでにいろんなものを奪われた後だったのだから。



「家族も、友達も、もういない。私を待ってると思ってた人は、もういないんだから」



 家族は知っての通り、居なくなった。友達はいた。けど、正直な話、一年も音沙汰がない私を待ってくれているほどに付き合いの深い友達はいない。いや、いたとしても……もう。


 付き合ってた彼氏はいた。けど彼も、もういない。母の現状を聞き、彼は自殺したのだと聞いた。彼とは喧嘩して、直後に私は異世界に召喚された。喧嘩別れのような形になってしまった。


 私がいなくなった理由が自分にあると思い込み、彼は……


 異世界で得た聴力スキルは、聞きたくないものも聞こえてきてしまう。いろんな人が話しているいろんなことが、聞こえてくる。



「だから、もう……この世界にも、未練はない」



 頬を流れる涙は、果たしてなんの涙だろう。私を待つ人がいなくなった悲しみだろうか。


 私は、もうなにを目的に生きていけばいいのか、わからない。向こうの世界で復讐を成し遂げたら、そのあとはどうなるんだろう。またこっちに帰ってくるんだろうか。いや、また帰ってこれる保証があるかも、わからない。


 そもそも、復讐とはなにをすればいいんだろう。


 ……考える必要はない。私は、私から日常を奪ったあの世界に、恨みしか持っていないのだから。



「絶対、許さない……!」



 こんな憎しみの感情、勇者パーティーの仲間が死んだときだって、抱かなかった。それほどまでに、この気持ちは大きい。


 仲間から継いだ思い……あの世界を救うと誓ったこの思いは、もう枯れてしまった。世界を救ったからではない、世界に絶望したからだ。



「…………」



 床に描いた魔方陣が光り出し、私の体を包み込んでいく。視界が、白く包まれる。この視界が開けたとき……そこは私が、復讐すべき世界だ。


 世界を、光が包み込んでいき………………頭にもやがかかり、意識が閉ざされていく。数秒か数分か、その後……意識が、覚醒していく。


 光が、晴れる。



「ん……」



 まばゆい光が晴れたため、目を開く。そこにあったのは、見渡す限りの大草原。少し歩くと、切り立った崖の先に大きな村が見えた。


 辺りには、本来ならば見たこともないような生き物がたくさん。この一年で私は見慣れてしまったけど、元の世界では見ることのできない生き物たちだ。


 そう……ここは、異世界。異世界『ライヴ』。残念ながら召喚者であるウィルのいるマルゴニア王国ではないようだけど……構わない。


 ……どうせ、全部壊すんだから。

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