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異世界召喚され英雄となった私は、元の世界に戻った後異世界を滅ぼすことを決意した  作者: 白い彗星
英雄vs氷狼vs……

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巨大化



「邪魔だ!」


「貴様もな!」



 目の前で、氷の狼と大柄な魔族がぶつかり合う。どちらも、優先して私を狙ってくるが、優先するがゆえに相手が邪魔になる。ユーデリアはガニムが、ガニムはユーデリアが邪魔に。


 そこで、手を組んで私を襲って来ないのはとりあえずありがたい。共通の敵を相手に共闘、なんて展開にならないのは助かっている。できれば、そのまま共倒れしてくれればありがたいんだけど……



「お、おぉ!」


「むん!」



 ユーデリアはスピードでガニムを翻弄、そして死角から突撃する。それはつまり、額から伸びる氷の角を突き刺すということだ。死角から潜り込んだユーデリアのスピードに、反応はできない……はずだ。


 だが、ガニムは驚くべき反応速度で振り向き、鋭い視線を向ける。突き刺さらんと向かってくる氷の角を、真剣白羽取りの要領で手で挟み突き刺さるのを防ぐ。



「っ……」



 挟み、防いだはずの攻撃……しかし、ユーデリアの攻撃はただ氷の角で突き刺すだけではない。むしろそれはおまけで、本命は冷気にある。


 その証拠に、氷の角を手で挟んだガニムの手が、目に見えるほど白く凍っていく。ユーデリアの冷気を一点に集めたのが、あの氷の角を作り出しているのだ。当然の結果だ。


 さらに冷気は、ガニムの足元をも固めていく。動きを封じ、手を凍らせ、全身を凍らせるつもりか。もしくは、動けなくなった間にその速度で、牙や爪で切り裂いてしまうのか。



 カチカチッ……!



 ユーデリアを中心に、音を立てて地面が凍っていく。氷場の足場は、氷狼であるユーデリアにとってこの上なく有利なものとなるはずだ。逆に、私たちには不利な足場だ。


 まあ、その程度ならば足場を崩すなり、氷を溶かすなりで対処の仕様は充分にある。問題は、地面を凍らせるほどの冷気をガニムが至近距離で受けているということ。


 できれば共倒れしてほしかったが、まあ数が減るだけでも儲けものだ。ガニムには得体の知れない力があるし、それと真正面からぶつかるというのはリスクが高い。見た感じパワーバカだし、トリッキーな氷狼相手なら……



「むぅう、おぉお!」



 わりとあっさりやられてくれるかもしれない……と思っていたけど、それは間違いだったかもしれない。


 ユーデリアの攻撃を防いでいたはずのガニムに、変化が表れる。気合いを入れている……のだろう、その場で腹の底から出しているんじゃないかと思えるほどの重々しい声が、響く。それは徐々に大きくなっていき、それに合わせるように体に異変が起こる。


 異変……というには絶対にあり得ない光景ではなく、それでも普通に考えればあり得ない光景だ。それが、目の前で起こっている。


 大柄であったガニムの体が、急激に大きくなっていく。腕が、足が、肩幅が、身体中の筋肉が増量していき、全身が大きく……巨大化していく。



「おぉおお、おぉお!」



 筋肉が膨れ上がり、体が元の倍の大きさになっていく。その体を支えるため、足も強靭なものへと進化する。目の前で、魔族が巨大化していく。今まで会った魔族で、こんな変化をする奴はいなかった。


 氷の足場は、足が強靭になるにつれ破壊されていく。凍っていたはずの手も、腕が膨らんでいっているためか氷を砕いていく。


 巨大化という、シンプルでありながら一目で、パワーアップを果たしたと見える姿に、ガニムは変化した。



「んむぅ!」


「!」



 凍りつくそれは、すでに手首にまで侵食している。見た感じ、手と角とはすでに氷により接着しているといっても過言ではない。つまり、手を角から剥がそうとすれば皮膚が剥がれるほどの痛みを覚悟しなければいけない。


 だがガニムは、そんなことお構い無しと言わんばかりに角から手を引き剥がしていく。その際に訪れるであろう痛み……しかし、ガニムはそんな表情を浮かべることはなく、引き剥がしに成功。そのまま、ユーデリアをぶん投げる。



「……っ」



 うまく着地したユーデリア、その氷の角には……遠目からだが、わずかにヒビが入っているように、見えた。



「っ、お前……!」


「氷狼ごとき、敵ではない」



 見た目以上のパワーバカ……けれど、それも一定のラインを越えると脅威だ。実際、腕力のみで上り詰めた『剛腕』だっているのだから。


 足も、簡単に上げていく。バキバキと氷が砕け、地面とくっついていはずがまるでそんな事実などなかったかのよう。


 あれは……ヤバいな。単純な腕力だけなら、師匠に勝るとも劣らないかもしれない。ユーデリアの氷の角を傷つけた時点で、並の力でないことはわかっている。



「この、邪魔だっての!」



 再び、ユーデリアの体から冷気が吹き荒れる。今度は、四方八方撒き散らすのではなく、完全にガニム一人を狙い撃ちしたものだ。


 ガニムを中心に、まるで砂嵐のように冷気が渦巻き立ち上る。あの冷気の中にいれば、一瞬で氷付けにされてしまうだろう。


 なのに……



「ぬるい!」



 冷気の中から声があった後、まるで内側からはぜるように冷気が弾け飛んでいく。するとガニムの姿が露になっていくが……え、今どうなったの。



「っ、化け物め」


「心外だな」



 なんか、さっきよりもでかくなってる気がするし。なんだこいつ……?

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