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ひとりぼっちの世界



 母が死んだと聞かされた私は、すぐ叔母さんに連絡した。幸い、電話番号は知っていたから、連絡を取る手段は簡単だ。


 私は、問いただした。どういうことだと、なんで教えてくれなかったんだと。だって、お母さんが……もう、病室からいなくなって。死んだってことを、知らされなかったのだ。その瞬間に、立ち会えなかったのだ。


 だから私は、吐き出した。感情のままに、どうして黙っていたのだと。叔母さんに対する申し訳なさも忘れて。


 だけど叔母さんは、まったく取り合ってくれなかった。お母さんを置いていった私に、話すことなどなにもないと。私の言葉は一方通行に、すべてを吐き出せないうちに電話は無造作に切られた。


 それ以降、何度叔母さんに電話しても、もう繋がることすらなかった。


 あこもお父さんも、そしてお母さんも……最期の瞬間に、私は立ち会うことができなかった。自分の知らないところで、家族が失われていって……


 私は、本当にひとりぼっちになってしまった。私は……



「どうして、こんなことに……なるの……!」



 なにもかもが、この世界が、私を嫌っているのではないか。そんなことさえ考えた。この世界が、神様が、誰も彼もが、私のことを嫌っているのではないか。


 ただ、それを考えたところでなんの意味もない。それでも……


 それでも、こんな理不尽を私は許せなかった。あこが、お父さんが、お母さんが死んだのは、確かに私のせいだ……それは、間違いない。私がいなくなったせいで……ううん、私があっちに、召喚されたせいで。


 私が、なにか悪いことをしたのか? 家族全員を失うような、最期の瞬間にすら会えないような非道なことを、私がなにかしたのか?


 あの日が、あの日の出来事がなければ、きっとあこは、お父さんは、そしてお母さんは……死なずにすんだんだ。私たち家族は、きっと今でも笑えてたはずだ。


 なんで私がこんな目に遭わなきゃいけない。私がいなくなったのは、私がみんなの(もと)から消えたのは、すべてはあっちに召喚されたからだ。それは私の意思じゃない。


 私が悪い、私の意思じゃない、私が悪い、私の意思じゃない、私が悪い、私の意思じゃない、私が……私の……






 ……自分の中で、なにかが崩れていくのを、壊れていくのを、私は確かに感じていた。

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