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異世界召喚され英雄となった私は、元の世界に戻った後異世界を滅ぼすことを決意した  作者: 白い彗星
世界への反逆者 ~英雄と師~

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バカみたいに頑丈



 先ほどの、師匠をも一瞬で凍らせるほどの冷気。まあ、一瞬で割れたけど……その一瞬は、今この攻防の中では、大きな隙となる。


 あれほどの冷気、出せるならなぜもっと早く出さなかったのか……その答えは、今のユーデリアの状況を見れば明らかだ。先ほどまで獣型だったのが、今は人型になり……息切れが、すごい。


 つまり……あの凄まじいまでの冷気は、消耗が激しすぎるってことだ。ただでさえこれまでのダメージが深いっていうのに、もはや立つこともできないほどに弱ってしまっている。



「いやぁ、すごい力だったぞ。だが、あれを持続的でなく瞬間的にしか出せないのなら、やはりまだまだだな」


「はぁっ、くそ……!」



 ユーデリア自身、さっきの冷気でとどめをさせる、とまでは思っていなかっただろう。ただ、多少でもダメージが入れば儲けもの……確かに、手首から先を取ることはできたが。


 凍っていた際に取れたものであるため、取れる際の痛みはない……多分。あるように、見えない。それに、断面図からの出血も、ない。


 つまり、冷気で凍らせたことによって手首を取ることはできたが、冷気で凍らせたから痛みを感じることはなかった。そういうことだ。あくまで私の予想で、本来なら氷から解放されても痛みは持続しているものなかもしれない。


 凍った状態で体の部位を欠損させられたことがないからわからないし、そもそもはあんな凄まじい冷気を浴びせられたらそのまま絶命してしまいそうだ。


 永久的に動けなくなるか……少なくとも、瞬間の動きを止めるだけ、というのはユーデリアも予想していなかっただろう。



「化け物が……!」


「はっ。俺は人間だが、人間とも獣ともわからないお前に、化け物と呼ばれたくはないなぁ」


「っ……!」



 ……瞬間、凄まじい殺気が、放たれる。その出所は、ユーデリアだ。なにか癪に障ったのか、そう思えるほどの激しい怒りを、感じる。


 そしてそのなにかとは、考えるまでもない……が。



「おぉ、すごい殺気だなビンビン伝わってくる。なんだ怒ったのか? けどなぁ、先に化け物呼ばわりしたのはそっちだろう。言い返されて怒るなんて、やはりまだ子供だなぁ」


「黙れ!」



 人型状態のまま、殺気を……そして、冷気を放つ。思えば、今まで獣型で冷気は出していたけど、人型で冷気を出す行為はしていなかったかもしれない。


 今までは、人型では冷気は出すことが出来ないんじゃないかと思っていたが……そうでは、ないらしい。ないらしいが……今までそうしてこなかったってことは、それなりの理由があるんだろう。


 たとえば、人型じゃうまく冷気のコントロールができないとか、あまり出力が出ないとか……



「ぐっ……」


「意気込みだけは立派だ……が、実力が伴っていないな」



 ユーデリアの首を掴み持ち上げていく。先ほどもそうであったが、人一人を軽々と……


 このまま黙って見ているわけには、いかない……か!



「その程度の力じゃ痛くも痒くもないぞ。どれ、このまま首をへし折って……」



 ボコッ……



「……んん?」



 この場から動くには、痛みが消えない……ので、足元にあった手頃な石を拾い、それを投げつける。狙いは狂うことなく、師匠の頭へと衝突する。


 それは、ただの石とはいえ弾丸ともなるほどの威力。当たれば、それも頭にともなれば、うまくいけは頭を吹っ飛ばせるほどの威力だ。


 ……それを受けて、あんな、蚊に刺された程度の反応しかしないなんて。



「やっぱ、規格外だな……」


「あー、今なんかしたのか? アンズ」



 気を飛ばすどころか、気を散らすこともできないか……ユーデリアの冷気でなんともなかった時点で予想はしていたけど……



「もともとバカみたいに頑丈なのは知ってたけど……もしかして、死体だから痛みすらも感じなくなったとか、じゃないよね」


「そんなに俺と遊びたいなら、そう言えばいいのにな」



 勝手な解釈をして、ユーデリアを放り投げる。まあ、あのままユーデリアの首をへし折らせないためにはこれが手っ取り早かったとはいえ……


 ……やっぱりあの男の優先標的は、私か。今までユーデリアが飛び出していったから倒していたり、私を庇ったコアをあんな風にしたり……


 理由は知らないけど、私を目的としているのなら……体は痛むけど、仕方ないけどやるしかない。



「えい、えい、えい!」


「そんなもの、なんの障害にもならんとわからんお前じゃ、ないだろ?」



 足元の石を、連続で投げる。連続であればそれは弾丸の雨のように感じるが、実際には片手しかないために両手を使うよりも、動きは遅くなる。


 それに、(こんなもの)では師匠の動きを止めることすら、ままならない。



「体が痛いから、なるべく痛みの生じない方法で俺に攻撃をしようってことか? そこまで落ちぶれ……」


「でぇい!」



 バコッ……!



 石を連続にぶん投げることで目眩ましを狙い、その隙を狙って特効。その横っ面に、おもいっきり拳を叩き込む。


 体に、痛みが走る……だけど、こんなもので、私は止まらない!


 こんなもの、これまでに味わった痛みに比べれば……



「なんてこと、ない!」


「ぬぅう!」



 勢いのままに、その大きな体を……地へと、叩きつける!

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