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異世界召喚され英雄となった私は、元の世界に戻った後異世界を滅ぼすことを決意した  作者: 白い彗星
英雄の復讐 ~絶望を越える絶望~

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剣ばかりの貧しい村



 剣の刺さった、異様な道が続いていた。それは目の先に見える村に近づくにつれ、剣の数が多くなっていく。


 この剣は自然発生したものじゃない。それはわかる……ファンタジーなこの世界でも、剣が刺さった空間なんてものはまずないだろう。


 ただ、人工的なものだとしたらそれはそれで、なんのためにと疑問が残る。剣を地面に、至るところに刺すなんて、相当な気狂いでもいたのだろうか。地面だけじゃない、草木にもなのだから。


 錆びているものや、新品なもの、辺りには様々な種類の剣がある。それに、サーベルや斧、槍など、およそ剣とは言えないものも、ちらほらと。


 その先にある村……そこから異様な気配を感じながらも、私たちは足を踏み入れる。その異様な気配ってのが、単に剣を刺しまくる気狂いのいるであろう村だからか、それ以外の理由かはわからないけど。


 村の正面へと周り、門を潜る。門といっても、形だけ……本来門の扉があるであろう部分には、なにもない。門は開いても閉まってもおらず、閉める扉がないので開けっぱなし、という認識で間違っていない。


 これまでにないタイプの門だ。扉がない理由は、扉を外したからか元からないのかは、わからないが。


 その点からもまた別の異様さを感じるが……村へと、足を踏み入れることに。そこには、驚きの光景が広がっていた。



「! これは……」


「村の中もかよ」



 村の外に広がっていた、地面に剣の刺さった光景……それが、村の中にまで広がっていた。あちこちに、剣が刺さっている。しかも、それだけではない。


 村の中は、外とは違い建物がある。それらにも、剣が刺さっているのだ。中には、玄関の扉に剣が刺さっている家もある。



「……どうなってんの」



 これまで見てきた、どの村街よりも異質。どんな理由があって、村中剣まみれにするっていうのか。


 あまりの光景に、呆気に取られていた。そこに、近づいてくる人の気配……


 ……敵意は、ない。



「おや、これはこれは……旅のお方、ですかな?」



 そこにいたのは、一人の老人だ。杖を突き、顎には白いひげを蓄えている。かなり痩せ細っており、立っているのもやっとなんじゃと思えるほどだ。


 老人とはいえこんな弱々しいなんて……杖を持つ手も、ぷるぷると震えている。少し押しただけで、倒れてしまいそうなほどに弱々しい。


 これじゃ、私に殺してくださいって言ってるようなものだ。



「えっと……あなたは?」


「私はこの、ガルバ村の村長をさせてもらっている者です。ほほ、見ての通りなにもない村で……せっかく立ち寄ってもらったのに、情けない限りです」



 と、答える村長だが……いや、なにもないっていうか、それどころの問題じゃないっていうか……


 周りは、剣ばかりが刺さっている空間。剣をなくせば、確かにこの村にはなにかあるって感じはしない。だけど、辺りにある剣が、なにもないって言葉を素直に呑み込ませてくれない。


 なにもないけど、そういう問題じゃない。この異様な光景は、いったいなんなんだ。



「あの……この、刺さっているものって……」


「あぁ、これですか……これがなんなのか、わからんのです」



 この村にいる人間、それも村長という立場であれば、この剣がなんなのかわかるはずだ……その考えは、即座に否定された。


 いやいや、わからんのですって……そんなことある? この村の人間が刺したんじゃないの?



「このガルバ村……いや村を含んだ周辺には、見ての通り数々の剣が刺さっています。しかし、その理由……誰がなんのためにこんなことをしたのか、誰にもわからないのです」



 このおじいさん、今にも倒れそうなのに結構はっきりしゃべるな……じゃなくて。


 こうも異様に刺さった剣の数々……それを、村長も誰も、なんのためにこんなことになっているのか知らないのだという。


 そんなことあるか、と思うが、どうやら嘘はついていないらしい。これまでいろんな人を見てきたんだ、嘘をついているかどうかくらいわかる。



「……気味の悪い村だな」


「ちょっ」



 この(ユーデリア)は、なんでこう思ったことを素直に言っちゃうかな。ラーゴ村でもそうだったけど、ふてぶてしすぎない!


 まあ、これから殺す相手に、私みたいに丁寧に接する理由がないってのもわからないでもないけど……



「ほっほ、いえまあ、事実ですよ。このように無数の剣の刺さった村など、近づく人間さえ少ないですからな」



 気にしてない、と言わんばかりに、村長は笑う。まあ、本人がいいって言うならいいけど……


 ……結局、この村が剣まみれな理由は、誰にもわからないってことか。まあ、"そういう村"って考えれば、特別気にすることでもない……のか?


 誰も剣が刺さっている理由を知らないってことは、村を作った後に剣を刺したのではなく、剣が刺さっている場所に村を作ったってことか……


 だとしても、わざわざそこに村を作る理由がわからないんだけど。



「して、旅のお方。この村へはいったいどのような用件で? 先ほども申しました通り、この村にはなにもありません……観光目的と言うなら、別の場所へ行くことをおすすめしますぞ」



 この村も、その筋の人にとっては観光にもってこいだと思うけど……という言葉は、ぐっと呑み込んでおく。


 改めて村を見ると……剣が所々刺さっている異様な光景に気をとられてしまっていたが、なるほどなにもないってのも納得できる。


 この村は、一言で言えば貧乏のようだ。建物はどこも腐敗が進み、辺りを歩く人たちは誰もが痩せ細っている。建物を綺麗にするお金が、村人がお腹いっぱい食べられる食料が、ここにはないってことだ。


 物によっては、この剣も場所によっては売れそうだが……それをしてない以上、理由があるんだろう。この剣がなぜ村にまみれているのかわからない……それでも、剣を売ることをためらうような、理由が。

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