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異世界召喚され英雄となった私は、元の世界に戻った後異世界を滅ぼすことを決意した  作者: 白い彗星
英雄の復讐 ~絶望を越える絶望~

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見えない攻撃



 体から溢れ出すエルドリエの魔力は、それはそれは凄まじい。娘のエリシアがあれだけの人物になったのも、納得できる。


 あの魔法の才能は、母親譲りだった……ってわけか。もちろん、本人の努力の影響もあったんだろうけど。



「……あなたは……優しい人だと、思っていたのに」



 エルドリエが、私を睨む。いや、瞼が閉じられているから、直接睨まれているわけではないんだけど……わかる。絶対睨まれている。


 いくら私が殺したと言っても、エリシアの死を完全には信じることはないだろう。それは信じられないより、認めたくないという思いから。


 それでも、私がエリシアの魔力の源を食べたことは見て明らか。エリシアの魔力の源は目玉だ、そして魔力を奪うにはその部位を食べないといけない……つまり、エリシアに危害を加えたということ。


 ……目玉を抉り、それを食べたなんて……危害を加えたなんてかわいげのあるレベルじゃないと思うけど。



「……優しい人なんて、気のせいだよ」



 だから、エルドリエが言う優しい人なんて……そんなもの、幻想だ。今の私がいい人であるなんて、そんなはずがないのは、私がよくわかっている。


 ……今の、か。昔の私は……この世界に戻ってくる前までの私は、どんな性格だったっけな。そこまで月日が経ったわけでもないのに、もう、覚えてないや。



「そのようね。私の勘違いだったわ」



 直後、エルドリエの魔力が一気に高まっていく。普通は魔力は目に見えるものではないけど、エルドリエの魔力は目に見える……まるでオーラのように、体に纏っている。


 見えないはずの力が見えるなんて、やっぱりその辺の魔法使いとは違うってことか。目が見えないからちゃんと戦えるのか心配だったが、これだけ力があれば、心配は無用のようだ。


 確か、魔力を感じ取ることで、そこに誰かいるくらいはわかる、と言っていたし。それが娘の魔力であれば、なおさらにわかるのだろう。


 ならば、視力が機能してないとかは関係ない。向こうが私を殺すつもりなら、私だって手加減は……!



「ふべっ!」



 直後、またもなにかに殴られる感覚。それを頬に受け、思わぬ攻撃に尻餅をついてしまう。


 っつつ……今のは、なんだ? さっきと同じ……見えないものに、殴られたような。


 さっきは、油断していたところにエルドリエの魔力をぶつけられたのだと思った。けど、今のはちゃんとエルドリエに気を向けていたし、もちろん背後のガルバラへの警戒も怠っていない。


 まさか、エルドリエとガルバラ以外に、この場に誰かいる? そいつが、透明になって私を……いや、他に誰かいるって気配は感じない。魔力は消せても、人の発する気配は完全には消せやしない。


 この場にいるのは、私とガルバラと、エルドリエの三人だけ。なら、この攻撃は二人のうち、どちらかの……



「これは……っ!」



 また、だ。なにかに殴られる。決して致命傷になるわけではないけど、正体のわからない攻撃というのは不気味だ……


 見たところ、どちらも不審な動きは見せていない。ただ、私が急に倒れたことに驚かない辺り、やはりどちらかの……


 ……どちらか、か。もしもこれがガルバラの仕業であるなら、さっき一対一で戦っていたときに、やらない理由がない。それにこれが魔法の類いなら、魔導具もあったんだ。威力を増幅することだって、できる。


 つまり、この攻撃は……



「お前、か!」


「!」



 この攻撃を仕掛けているのは、まず間違いなくエルドリエだ。それを確信として、魔法により火の玉を作り出し、エルドリエへと放つ。


 それは、なんの妨害もなくエルドリエを焼き尽くす……はずだった。しかし、そうはならなかった。



「えっ……」



 火の玉が届く前……彼女の体に触れるより前に、火の玉が消し飛ばされたのだ。まるで、見えない壁でもあるかのように。


 いや、攻撃を防がれたこと自体に驚きはない。魔力による防壁なんて、私もよくやるし。問題なのは、火の玉がまるで、内側から破裂したかのような……



「っ!」



 急に、背後からの殺気が強まる。とっさに身を捻ると、そこには拳を打ち出したガルバラの姿……エルドリエに気をとられている私の隙を狙って、仕掛けてきたか。


 忘れてた訳じゃないけど、エルドリエの攻撃、防御方法がわからない以上、邪魔でしかない!



「とりあえず伸びてて……ぶへ!」



 ガルバラを適当に気絶させようと、拳を振りかぶったところへ……また、見えない攻撃が叩き込まれる。さらに、そこへガルバラの蹴りが打ち出され……


 今度は、まともに腹に受けてしまう。



「ぐっ……へ!」



 なんとか踏みとどまり、数歩後退しただけに留めるが……こいつ、結構鍛えてるな。結構効いた。


 二対一……別に数の不利を嘆くつもりはない。今までこんなこと、何度もあったしね。


 ただ、手の内を知っていたグレゴとエリシア、呪術という未知の力を使うとはいえ所詮チンピラの男たちとは違い……掴み所が、ない。


 もし、エルドリエの見えない攻撃が魔法によるものなら……そういうものもある、とまあ納得はできる。なんたって魔法だし。ファンタジー世界だし。


 それに、ここは『魔女(エリシア)』が生まれた村……もしかしたら、私が知らない魔法がいっぱいあるのかもしれない。


 エリシアの親は凄まじい魔力を持ってるし、魔法が上達するのは周りの環境あってこそだろうし、村人だって決して弱くはない。


 むしろ、魔法という一つの才で比べるなら、マルゴニア王国の魔法述師隊よりも……だから、ここはある意味、魔法使いのエキスパートが集まっている村、と言ってもいいかもしれない。

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