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異世界召喚され英雄となった私は、元の世界に戻った後異世界を滅ぼすことを決意した  作者: 白い彗星
氷狼の村

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お別れは済んだ



 この氷狼の村で、本来の目的とは大きくずれて思わぬ回り道をしてしまった。


 本当なら、ユーデリアの家族や仲間、この村で死んでいった氷狼たちのお墓参りで済むはずだった。なのに、予想外のことが三つも……


 一つ目は、『魔女(エリシア)』の左目が見せた過去の光景。それは過去とは思えないほどにリアルで、まるで私自身その場にいるような感覚だった。それに、発動条件がわからない。


 いきなり左目が疼き始めたと思ったら、左目だけに過去が映った。痛みがなかった以上、私に害を与えるつもりはなかったのだろうけど。


 そして、二つ目。この村を襲撃してきた男たちの存在。そいつらの相手をしたせいで、予想外に時間を食った。


 そいつらの正体はわからなかった。けど、過去の光景に出てきたバーチ、ノットと繋がった。この繋がりが、無関係とは思えない。もしかしたらこの左目は、それを伝えるために、前もって私に過去を見せたのかもしれない。そして……



「……」


「どうした、さっきから左目触って」


「えっ!? なん、なんでもないよ!」



 いけないいけない……無意識のうちに、左目を触っていたらしい。なんとかごまかした、と思いたいが、ユーデリアは疑わしそうな目を向けている。


 私がこの村で起こったことを見たことを話さない、だけでなく……過去を見る力がこの左目に宿っていることも、話さないほうがいいかもしれない。


 だって、過去を見れる、なんて話したら絶対警戒される。しかも、私の意思とは関係なくだ。今だって、試しに『過去を映せ~』と念じているが、全然反応しない。


 ただ、おそらくだけど……映す過去は、対象の人物ではなく、対象の場所で起こったこと、ではないかと思う。だから、ユーデリア個人の過去を見ることは出来ないと思うが……


 まあ確実ではないし、単なる予想だ。言わないほうがいいだろう。



「とりあえず、破片は全部壊しとくか」



 と、ユーデリアが氷付けになった男たち……の破片へと、近づいていく。今恐ろしい言葉が聞こえたが、聞かなかったことにしよう。


 ユーデリアからしてみれば、自分の故郷に、どこの誰かもわからない、自分たちの命を狙った連中の遺体など、欠片も残しておきたくないのだろう。


 まったく、たくましい性格してるよ。家族や仲間を殺され、一度は奴隷として連れていかれたっていうのに。



「……」



 そのユーデリアに言ってないことが、もう一つある。


 あの、腕のことだ。本来右腕があるはず肩からはその先がない。……にも関わらず、この肩から生えた、謎の黒い腕。


 しかも、ただの腕ではない。呪術の効果が通用せず……そればかりか、自由自在に伸びたり、動いたりする。もはや、これは腕の形をしたなにか、と言ってもいいだろう。


 これを、ユーデリアに言わないのは……私自身、これがどういうものかよくわかっていないからだ。ならばこそ、ユーデリアに話して二人で考えればとも思うだろうが……



「これが、呪術だったら……」



 この謎の腕が、呪術だとしたら。ユーデリアにとって、いい気はしないだろう。ユーデリアは、呪術にいい思い出はない。


 故郷を滅ぼしたのが、呪術だと認識していたとしても、いなかったとしても。私が呪術と関係あると知ったら、どんな顔をするかわかったもんじゃない。


 まあ、別に仲間って訳じゃないから、どう思われたって構わないんだけど……



「これも、出ないし……」



 左目と同じく、いくら念じても腕は出てこない。なんなんだ私の体は、どうなってるんだ。


 左目はまだ、他人のものという異物だからわからないでもない。だけど、この腕は……全然意味が、わからない。いきなり出てきたし、変な動き方するし、おまけに半透明だし。


 そりゃ、私はこの世界への復讐を決めた時点で、自分の体はどうなってもいいとは思っていたけど……これは、思っていたのとは違いすぎる。腕をなくすのはともかく、そこから別の腕が生えるなんて……



「ぅー……!」


「……なにしてんの」



 意味のわからない出来事に、頭をかきむしる……が、その場面をユーデリアに見られてしまう。



「いやー……なにも?」


「……変な奴だよな、アンって。ま、全部潰してきたし、行こうよ」



 なにしてんの……って、それは自分自身が聞きたいよ。


 なんだかこの短時間で、ユーデリアに変な奴だと思われてしまった。不覚だ。



「も、もういいの?」


「あぁ。お別れならもう済んだし、後処理も済んだし」



 この村に留まる理由は、もうない。……まあ、そうか。お別れは一番先に、済ませていたんだから。私が過去の光景を見ているのと同時進行で。



「そ。なら、行こうか」



 気になることはたくさん。けど、この村でやることはもうない。襲ってきた連中も、狙いはこの村ではなく私たち……なら、この村に留まれば留まるだけ、この村にまた被害が及ぶ可能性もある。


 別に私はここがどうにかなっても気にならないけど、またユーデリアに暴れられてはたまらない。


 この村を発った後、どこへ向かうか……それは、決まっていない。だけど、私たちを狙う者がいる以上……復讐とは違った私の戦いは、終わらない。


 この村に来て、ユーデリアの用事を済ませるだけだったつもりが……謎の連中、謎の現象と、増えた謎は多い。ただ世界に復讐するだけのはずが、どうしてこうも複雑になっていくのか……

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