表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

寂寥の交わり

作者: 紅掛 空

筆者自身の、この、止め処なく流れてくる気持ちを文字にしないと壊れてしまいそうだった。


「ねえ、私達ってさ」

バックストリートボーイズが控えめに流れるバーの店内、突如として発せられた女の錆びたような声が弱々しく僕の鼓膜を震わせる。

「『さ み し さ』の『さ』と『さ』の距離みたいよね」

「つまり、どういう事?」

僕は誤魔化すように残りのグレンフィディック12年のオン・ザ・ロックを流し込んだ。

「そのままの意味よ。誰かの文章を引用させてもらったわ。」

そう言って女は気怠くセブンスターに火を点けた。

「だけどさ」

頼む宛の無いドリンクのメニュー表をパラパラとめくりながら僕は女に言う。

「漢字の『淋しさ』になれば一つ一つになった気がする。さんずいに林の。」

「お上手ね。でも私、『淋しさ』って漢字は好きじゃないの。」

女はセブンスターの真っ白な煙が暗い店内の闇に溶けていくのを眺めながら言った。それは、さっきより幾分か錆が落ちたような鋭い声な気がした。

「だって、まるで二人で泣いているみたいなんだもん。『林』って漢字の木と木の距離は近いけど。 」

会話の間、僕達の目が合った事は一度もなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ