第81話 変わる意識
四つの大陸を周る巡航船から『三日月の騎士』が降りた後、一般客も降り始める。
人々は荷物引き下ろし場所に列を作って並んだ。
旅装に身を包んだその少女も受付に荷物の番号札を渡しに行く。
「お荷物ですね。少々お待ちください」
荷物係はそう言いながらハッとした。
その少女のサラサラと揺れる金髪は天馬のたてがみよりも軽やかで、その瞳は朝日の昇る海原のように煌めく青色だった。
そして地味な旅装の上からでも分かる人並み外れた胸のふくらみ。
瑞々しい肌とあどけない表情には、まだ10代の初々しさが感じられるものの、一方で年齢に似合わない大人びた艶も持ち合わせている。
何よりも彼女は有名人にしか醸し出せない、存在感を際立たせるオーラを纏っていた。
それらの目映いばかりの視覚情報が一気に眼球に飛び込んできたため、荷物預かりの船員はすっかり彼女に見惚れて、だらしなく口を開けてしまう。
「何か?」
少女がキョトンとしながら首を傾げる。
「あっ、いえ、失礼しました」
船員は急いで彼女の荷物を取りに行く。
「う、重っ」
その布に包まれた荷物はとても一人で持てるものではなかった。
やむなく、他の船員に手伝ってもらい二人掛かりで少女の前に持ち運ぶ。
「よいしょっと」
「ありがとうございます」
「ふー、物凄い重さですね。一体何なんですかこれ?」
その時になって、ようやく彼はこの少女にこんな重い物が持てるのだろうかと疑問に思った。
「配送を手配しましょうか?これだけの重さ。宿まで持ち歩くのは大変でしょう?」
「いえ、結構です。ありがとう」
少女は荷物を片手でヒョイと抱え上げ、スタスタと軽い足取りで歩いて行く。
船員は呆然としてその様を見送るのであった。
「ここが『火竜の島』か……」
彼女はショートカットの金髪をサラサラと靡かせながら、パンフレット片手に慣れない土地でキョロキョロと辺りを見渡す。
『鷹の目』を使って、街を上空から見下ろし、『精霊の工廠』の位置を確認する。
「この距離なら歩いて行けそうね。」
(ロランさん、元気かな?)
彼女は愛しい人に久し振りに会えることに心弾ませながら、『精霊の工廠』へと向かうのであった。
広場ではユガンが演台に立って演説させられていた。
港に降りた彼らは住民達に誘導され、半ば強引に広場まで連れてこさせられたのだ(その際、『魔導院の守護者』のように武器装備を晒さないよう気をつけた)。
「私は『三日月の騎士』のSクラス冒険者ユガン。『巨大な火竜』の暴走および災害、街の郊外への被害については既に聞き及んでいる。まずは被害に遭った方々に心よりお見舞い申し上げる。そして肝心の『巨大な火竜』への対策だが……、住民達よ、ひとまず安心するがいい。このユガンが来たからには、『巨大な火竜』よっても、その他の竜族によってもこの街が脅かされることはない。もし、『巨大な火竜』を始めとしたモンスターどもがこの街に襲来したとしても、すかさず私が迎え撃ち、立ち所に撃退するだろう。また、私はすぐにダンジョンに潜り、『巨大な火竜』の様子について、さぐってくるつもりだ。差し当たって諸君らには、事態を静観し、いたずらに騒ぎを大きくすることなく、被災家屋を復興し、通常の経済活動および日常生活を堅持するよう努めて欲しい」
ユガンの演説に安堵した住民は、歓呼に湧いた。
万雷の拍手が鳴り響き、Sクラス冒険者の到来を歓迎する。
「おつかれ様でした」
演台から降りたユガンに『三日月の騎士』の副官が声をかける。
「ったく、こういうのはガラじゃねぇっつうの。魔導院の奴らめ余計な仕事押し付けやがって」
ユガンは慣れない演説のせいで凝った肩をコキコキと鳴らす。
「セイン・オルベスタはずいぶん住民達を幻滅させたようですね」
「『暴れん坊のセイン』か。部隊長になって少しは成長したかと思ったが、まだまだガキだな」
「そのようですね。この後は錬金術ギルド『竜の熾火』との商談です」
「ああ、この島で俺の魔剣『グラニール』を整備できるのは、『竜の熾火』にいるラウルだけだからな」
「ええ。なおその後の予定ですが……」
「悪い。その後は空けてくれ」
「えっ?」
「さっき演説していた時、少し気になるものを見かけてな。確かめなきゃいけないことができた」
ともあれ、『三日月の騎士』一行は『竜の熾火』に向かうのであった。
「あ、おかえりロディ」
アイナは『精霊の工廠』に帰ってきたロディに声をかけた。
「ただいま。ふー。参ったよ。急に山が崩れるなんてさ」
「それでどうだったの? 親戚の家は」
『巨大な火竜』の起こした災害により、二人はロランから暇をもらっていた。
ロディはその休日を利用して、実家と親戚の様子を見に行っていた。
「幸いにも被害はなかったよ。ただ、やっぱりみんなまだ不安そうだった」
「そっか」
「ユガンの演説でみんな少しは落ち着きを取り戻したけれど、まだまだ予断を許さない状況が続きそうだ」
二人はなんとなくしんみりした空気を共有した。
この不安はロランにも分からない、島の人間にしか分からない空気だった。
「ロディ、帰ってきていたのか」
「あ、ロランさん」
「もう出勤しても大丈夫なのかい?」
「ええ、すぐに作業に取りかかれますよ」
「そうか。助かったよ。そろそろ、仕事が増えそうだったからさ」
「仕事ですか?」
「ああ、ディランがウチの作った装備を置きたいという商店を見つけてきてくれた。『外装強化』の施された装備を所望しているそうだ。態勢が整い次第、大量生産に移りたいと思う。人も新たに雇うことになる」
「いよいよですか」
「この工房の儲けも一気に増えますね」
「あとは『暁の盾』の復帰待ちだな」
「彼らはまだ立ち直れないんですか?」
ロディが聞いた。
「うん。彼らの精神的ダメージは思いの外、深いようだ」
「うーん。私達で何か元気付ける方法があればいいんですけれどね」
アイナが言った。
「しかし、参りましたね。このままじゃレアメタルが手に入りませんよ」
「ウチがレアメタルを手に入れるルートは彼ら経由だけですもんね」
「うん。せめて『冒険者の街』からの資金が来れば。もうそろそろ届いてもいい頃なんだけれど」
「その資金ならここにありますよ」
(この声は……、まさかモニカ!?)
ロランが工房の入口の方に目を向けると、果たしてそこには旅装に身を包み、弓を入れた袋を抱え、金貨のぎっしり詰まった袋を握り締めるモニカがいた。
「えへへ。来ちゃいました」
アイナとロディは物陰に隠れながら工房の入り口で立ち話するロランとモニカに聞き耳を立てていた。
「ねえ。アイナ。僕ら何してるの?」
「しっ、話し声が聞こえないわ」
「なんであの二人の話盗み聞きしているのさ」
「ロディ。あの娘どう思う?」
「どうって……、まあ、滅多にお目にかかれないような美人だね」
「そうよね。ロランさんとどういう関係なのかな?」
「どういうって……」
「二人の間に漂う親密な空気。あの馴れ馴れしさ。とてもギルド仲間の範疇に収まっているとは思えないわ」
「……」
ロディはあえて口を噤んでいた。
「気になるわ」
アイナはどうにか二人の会話を聞き取ろうと、耳を澄ませるのであった。
「じゃあ、この島には休暇を利用して来たんだ?」
「はい。ギルドに休暇を申請したら、1日多く休みを取っていいから、お使いをしてくれないかって頼まれて」
「なんだか悪いね。せっかくの休暇なのに」
「いえ、いいんですよ。前々からこの島には訪れたいと思っていたんです。観光目的で」
「そうか。そう言えば、この島は観光名所としても有名だっけ?」
「ええ、特に温泉が凄くいいらしいですよ。ロランさんはもう入りました?」
「いや、それがまだなんだ。予定外の仕事が沢山かさんでしまってね」
「そうですか。やっぱりお忙しいんですね……」
「ああ、予想以上に厄介だよ。この『火竜の島』は」
「そうですか。私も何かお手伝いできることがあればいいのですが……」
「いいよ、そんな気を遣わなくても。せっかくの休暇なんだろ? ゆっくり観光して、英気を養わなきゃ」
「……はい」
二人がそんな風に話していると、全身黒装束に身を包んだ男が近づいて声をかけてきた。
「よお、S級鑑定士。やはりお前もこの島に来ていたか」
「君は……ユガン!?」
ロランは突然の来訪者に目を丸くした。
「久しぶりだな、ロラン。スカル・ドラゴン以来か?」
「ユガンさん、こんにちは」
モニカもユガンに挨拶した。
「おっ、『鷹の目の弓使い』のモニカも『巨大な火竜』討伐に参戦か?」
「彼女は観光で来ただけだよ。それにしてもビックリした。よく僕がここにいるって分かったね」
「演説させられた時、群衆の中に『精霊の工廠』の装備をしている奴がチラッと見えてな。さてはと思って調べてみりゃあ、ドンピシャだ。こりゃあ挨拶がてらライバルの内情を偵察しに行かなきゃと思ってな」
「腕は衰えていないようだね」
ロランがユガンを鑑定しながら言った。
「お前も、目は錆びていないようだな」
二人は実力を認め合った者同士特有の気安さで語り合う。
「君はやはり『巨大な火竜』を討伐に来たのかい?」
「ああ。それにしても……」
ユガンは『精霊の工廠』支部に目を移す。
「随分、こじんまりした工房だな」
「ああ、今はまだ成長途中だからね」
「ふーん。なんなら仕事回してやろうか? 『三日月の騎士』の武器整備、いくらかこっちに回してもいいぜ?」
「いや、間に合ってる。それに今回、ウチは地元密着の経営でいこうと思ってるんだ。だから、島の外から来たギルドよりも地元ギルドの支援優先かな」
「ほお。じゃあ今回は『巨大な火竜』討伐を諦めるのか?」
「諦めない。今回もSクラスモンスターはウチがもらうよ」
「何?」
「今は訳あって地元の冒険者ギルドを育てているけれどね。準備が出来次第、ジル達を呼び寄せて『巨大な火竜』を狩りに行くつもりだ」
「ふっ。なるほどな。まあ、楽しみにしてるぜ。またジル・アーウィンと競争できるわけだしな。前回は上手く掠め取られちまったが、今回は遅れをとるつもりはないぜ」
「ああ、望むところだよ」
「なるべく早くジルを呼べよ。でなきゃ、来た頃にはカタがついちまってるぜ?」
ユガンはおもむろに時間を確認した。
「そろそろ行かねーとな。打ち合わせがある」
「ユガン。敵は『巨大な火竜』だけじゃない。盗賊ギルドと、それから『竜の熾火』にも気をつけろ」
「『竜の熾火』に? 世界でも有数の錬金術ギルドだろ? 品質は折り紙つきだぜ?」
「彼らは思った以上に……、なんというか難アリな連中だ。まだ僕も上手く言えないんだけど」
「心配性なやつだな、お前も。ま、忠告は受け取っておくぜ。それじゃな」
ユガンは手をヒラヒラさせながら立ち去って行った。
「ユガンさん、大丈夫でしょうか?」
モニカが心配そうに言った。
「彼もSクラスだ。自分の身は自分で守れるさ。さて、それじゃ、そろそろ僕も仕事に戻らなきゃ。モニカ、君も長旅で疲れただろう? 宿で休んできなよ」
「えっと、その……」
「ん?」
「工房の見学をさせていただいてもいいですか? せっかくだからこの島の錬金術について勉強したくって」
「それは全然構わないけど大丈夫? 疲れてるんじゃ……」
「大丈夫です! お邪魔にならないようにしますので勉強させてくださいませんか?」
(それに……、ロランさんの側にもう少しだけいたい)
モニカがこの島に来たのは実のところロランが目的だった。
観光やお使いは口実に過ぎない。
「分かったよ。職員には伝えておくから。工房には自由に出入りしていいよ」
「はい。ありがとうございます」
モニカはロランの手前笑顔を保っていたが、内心では切なかった。
(ホントはロランさんと一緒に島の観光がしたい。でも、ワガママ言って困らせるわけにもいかないし)
ユガンと別れた後、今度は時を置かずしてレオン達『暁の盾』が訪問してきた。
「鍛え直して欲しい?」
「ああ、今回の大同盟の件で自分達の実力不足を痛感したよ」
レオンは恥じ入るように顔を伏せながら言った。
「今回ばかりは完全に俺達の判断ミスだ。お前の忠告にもっと耳を傾けておくべきだった。一度、助言を突っぱねておきながらこんな風に頼るのは虫のいい話と思うかもしれんが、恥を忍んでもう一度頼みたい。ロラン、俺達にもう一度成長するチャンスをくれないか?」
「僕としてはまったく問題ないけれど。でも……、いいのかい? 『三日月の騎士』が島に上陸して、早くも地元のギルドのほとんどは彼らの下に集っていると聞いた。君達のギルドも本当は『三日月の騎士』と行動を共にして欲しいんじゃないのかい?」
「もし、上が反対してきたら、必ず俺が説き伏せる。もう今後、俺がブレることはない」
「俺からも頼む」
そう言いながら工房に入ってきた人物を見て、ロランは目を見張った。
「ジェフ!? 君、病院にいたんじゃ」
「もう怪我は大丈夫なの?」
セシルが心配そうに聞いた。
「ああ、いつまでも負傷で寝てる場合じゃない。これ以上エリオの足手まといになるわけにもいかないしな」
ジェフは決然とした顔で言った。
「ずっと、このままで問題ないと思っていた。『巨大な火竜』のことは島の外のギルドに任せておけばいいと。でも、『天馬の矢』の戦い方を見て、ようやく分かったぜ。このままじゃいけない。俺達も強くならなきゃ、成長しなきゃいけない」
「ジェフ……」
「俺達は弱い。けれどももっと強くなれる。そうだろ、ロラン?」
「……ああ。もちろんだ」
(大同盟で打撃を受けたことが、意識を変えるきっかけになったか。雨降って地固まる……だな。なんにしてもこの酷い状態から立ち上がれるのなら、彼らは、『暁の盾』はもっと強くなれる)
ロランはジェフの言うことを聞きながらカルラのことを思い出した。
ジェフと同じように外のギルドに頼っていてはダメだと言っていた彼女、彼女はいまどうしているのだろうか?
「よし。それじゃ、打ち合わせしよう。アイナ、ロディ、君達も一緒に」
ロランは工房の作業机の方に彼らを誘って、打ち合わせを始めた。
「『巨大な火竜』の暴走による地形変化と『火竜』の大移動のせいででダンジョンの様相は様変わりした。昨日まで使えてた地図もモンスターの分布情報も全く役に立たない」
レオンが現在のダンジョン情勢についてまとめた。
「どのギルドも横並び、一からのスタートというわけか」
「そればかりか普段は『メタル・ライン』に辿り着くまで、現れないはずのBクラスモンスター、『火竜』や『巨鬼』が森林地帯に現れている。並みの冒険者ではダンジョンに入るだけで危険だ」
エリオが言った。
「『三日月の騎士』はすでにダンジョンの最奥までの探索を宣言してる。地元ギルドのほとんどは『三日月の騎士』の探索に参画するべく集っているわ」
セシルが言った。
「確かにダンジョンの情報が不明瞭な以上、強い冒険者と組んでダンジョン探索するのが最も確実な方法か」
ジェフが言った。
「ロラン、この情勢を踏まえた上で俺達が生き残り、かつ成長するにはどうすればいい?」
ロランは『暁の盾』の一人一人を鑑定していく。
(装備に関しては、アイナの『外装強化』で彼らの戦闘力を底上げすることはできる。問題はステータスか……)
【エリオの腕力向上条件】
適打C10回を10日連続で
【レオンの耐久向上条件】
受身C10回を10日連続で
【ジェフの俊敏向上条件】
回避C10回を10日連続で
【セシルの体力向上条件】
エリア踏破1回を10日連続で
(ステータスを向上させなければ、これ以上装備をランクアップさせることはできない……。だが、みんなステータスの向上にかかる日数は10か。今の彼らの装備で10日間、ダンジョンに潜るのは難しい。せめて『アースクラフト』さえあれば……。くそ。後手に回ってしまったか。あの時、大同盟に加わらず『アースクラフト』の収集さえしていれば……)
「どうだ、ロラン? 俺達が成長するにはどうすればいい?」
「鑑定したけれど、みんな向上のためには最低10日間、ダンジョンに籠る必要がある」
「10日間……。今のダンジョンに10日間か」
「現状の戦力で10日間ダンジョンに潜るのは厳しい。まず装備の耐久が持たないし、それを抜きにしてもBクラス以上のモンスターに遭遇してしまった時点でゲームオーバーだ」
「う……む」
「現状、打つ手なしってことかよ」
「情勢の変化を待つしかないってこと? 何か手はないの?」
「とはいえ俺達の規模でこれ以上できることは……」
一同は黙り込んで、その場は重苦しい雰囲気に包まれる。
(僕がダンジョンに潜れればやりようはあるが、今、『精霊の工廠』を離れるわけには……。くそっ、何か打つ手は……)
「あの〜」
先程まで隅っこで大人しく話を聞いていたモニカが発言した。
全員モニカに注目する。
「私が『暁の盾』の皆さんとダンジョンに潜るというのはどうでしょう?」
「えっ? モニカ、君が?」
「はい。私の『鷹の目』なら初めて入ったダンジョンでも周囲を見渡してモンスターとの遭遇率を操作することができますし、それに『アースクラフト』だって見つけやすくなると思うんですよ」
「それはそうだけど……いいのかい? 君は今、休暇中なのに」
「はい。ちょうど『火竜の島』のダンジョンについて勉強したいと思っていましたし。それに『魔法樹の守人』も『精霊の工廠』の提携ギルドなので、困っているのを放っておくわけにはいきません」
「いや、でも……」
「あー、ちょっといいかロラン? さっきから気にはなっていたのだが、そちらのお嬢さん、彼女はお前の知り合いか?」
レオンが二人の会話に割って入ってきた。
「彼女はモニカ・ヴェルマーレ。『魔法樹の守人』のAクラス冒険者だ」
「モニカ? モニカっていうとまさか……」
「ジェフ、知ってるの?」
「聞いたことがある。『鷹の目の弓使い』のモニカ。『冒険者の街』で三つのダンジョンを攻略し、モンスター撃破数の記録保持者」
「えっ? そうなの?」
「そんな有名冒険者と知り合いだなんて。ロラン、君は一体……?」
「えっと、まあ、僕のことは置いといて。モニカは今、休暇中なんだ。確かに彼女のユニークスキル『鷹の目』を使えば『暁の盾』の問題は解決するけど……」
「もし、そうだとしたら『暁の盾』としては、是非とも支援を頼みたいよ」
「ロラン、俺からも頼む。どうにかモニカさんに協力してもらえないだろうか?」
「その、モニカ、本当にいいのかい? 今は僕も持ち合わせに余裕がないから『魔法樹の守人』でもらってるような高額給与も支払えないよ?」
「はい。報酬に関してはいただけなくで結構です。ただ……、そうですね。ロランさんに個人的なお願いがあるので、聞いてくださると嬉しいのですが……」
全員、今度はロランの方を見た。
「う……」
ロランは言葉に詰まる。
全員、縋るような目でロランの方を見る。
「分かったよ。モニカ、僕にできる範囲で君の願いを叶える。だから『暁の盾』の強化をサポートしてやってくれ」
「はい! モニカ・ヴェルマーレ、これから『暁の盾』の支援させていただきます」
「やったぁー」
「これで、ダンジョンに入れるな」
「いや、ホント助かったよ」
「まさしく渡りに船だな」
(う―む。モニカに借りを作っちゃったな。なんだかなぁ)
書き溜めがなくなったため、隔日連載は本日にて終了です。
今後は週に1話を目処に投稿していきたいと思います。
よろしくお願いします。
 




