第33話 再会
「どういうことですかラモンさん?」
モニカ達の契約更新の報を聞いたルキウスは、ラモンに威圧的な視線を向けながら問いただしていた。
ラモンはただただ居心地悪そうに額の汗をハンカチで拭いている。
「契約を更新して違約金を吊り上げるなんて。彼女らを『金色の鷹』に移籍させる。あなた、そうはっきり言ってたじゃありませんか」
「いや、無論。私としてもそうするつもりだったんですがね。ただ、彼女らの貢献に今すぐ報いるべきだという話がギルド内部から出て来まして。私としてもそれはもっともだということで、反対するわけにもいかず……」
ラモンはルキウスの追求から逃れるように気忙しく視線を左右にきょろきょろさせる。
(チッ。一人5千万ゴールド。三人合わせれば1億5千万ゴールド。『金色の鷹』とはいえ、そうそう気軽にポンと出せる金額ではないぞ)
いくら『金色の鷹』の資金力が潤沢とはいえ、ルキウスの一存だけで5千万ゴールドの費用を計上することはできなかった。
出資者達の許可を取り付けなければならない。
(だが、これしきで諦めるわけには行かない。銀行家にはすでにモニカ達の引き抜きを約束したんだ。少しくらい金がかかるからといって、『はい、そうですか』と引き下がるわけにはいかない)
ルキウスは出資者一人一人を回って説き伏せることを決意した。
「分かりました。ラモンさん。1億5千万ゴールドについてはこちらでどうにか用意しましょう」
「おお、本当ですか。ありがたい」
ラモンは棚からぼた餅の思わぬ恩恵に喜びを露わにした。
「ただし! 今度こそ間違いなく彼女らに移籍を同意させる。いいですね?」
「え、ええ。もちろんです。1億5千万ゴールドを用意してもらった以上必ず約束は守りますとも」
「これだけは言っておきますがね」
ルキウスはラモンに向かってズイと顔を近づけより一層凄んで見せる。
「ロランは必ずあなたの地位を脅かしますよ。自分の地位を保持したいと考えるのであれば、一刻も早くロランを追放することです。いいですね?」
ラモンはルキウスの剣幕にただただ首を縦に振るのであった。
その後、ルキウスは出資者達の説得に着手した。
資産家達はそれぞれ皆忙しいので予定を合わせるだけでも難儀な作業だった。
結局、出資者一人一人を説得するのに一週間の期間を要することになる。
その間、『金色の鷹』内部の様々な問題は放置された。
モニカは『魔法樹の守人』の訓練場で弓矢を引いていた。
矢をつがえ、遠く向こう側にある的に向かって矢を放つ。
矢は寸分の狂いもなく的の中央に命中した、のみならず的を貫通してその後ろにある的まで貫く。
結局、7つ目の的に刺さって矢は止まった。
(7つ目か。攻撃力60〜69……ってところかな?)
モニカは今しがた自身の行った攻撃の威力を測定しながら、先日、ロランから出された新しい課題について思い出していた。
「腕力の強化……ですか?」
「ああ、君は弓使いとしては俊敏が低い。けれども腕力と体力に関してはまだまだ伸び代がある。オーガを一撃で倒せる腕力、そして『ホークアイ』の連続使用に耐えられる体力を身につけること。それが次の君の課題だ」
「オーガを……一撃で……」
「そうすれば撃破数ランキングで1位になる初めての弓使いになれるかもしれない」
モニカは不安に唇をキュッと結んだ。
ロランはそんなモニカに優しく言葉をかける。
「大丈夫だよ。君ならきっとできる。僕も全力でサポートするから」
「はい。よろしくお願いします!」
モニカは弓を引いて新しく据えられた的を狙う。
ロランは、少し離れた場所からモニカのステータスを鑑定する。
モニカ・ヴェルマーレ
腕力:60ー70→(90ー100)
耐久:50ー60→(55ー65)
俊敏:30ー40→(30ー40)
体力:100ー110→(120ー130)
(調子は完全に戻ったようだな。ステータスが安定を取り戻している)
先日は40ー70と不安定だった腕力が60ー70にまで復調していた。
ステータスは心身の状態によって、その瞬間瞬間で揺れ幅があるが、そのブレが10以内であれば好調だと言われている。
今のモニカは全てのステータスが誤差10以内なので好調と言えた。
(特に身体的変化が見られないのにステータスが復調した。ということは……やっぱり不調の原因は精神的な問題か。一体何の悩みがあったんだろう?)
ロランは首をひねった。
(ま、いっか。問題は解決したようだし。深く考えるのはよそう)
ロランは気を取り直してモニカの状態をチェックする。
(心身は充実している。と、なれば次の段階に進んでもよさそうだな。負荷を一段階上げて、腕力と体力を集中的に鍛える)
「モニカ」
「はい」
ロランに呼ばれたモニカは弓を射る手を止めてロランの方を向く。
「今日からリストとランニング1セット追加だ」
「はい。分かりました」
モニカはトレーニングを追加されたにもかかわらず、張り切ってリストとランニングを鍛える施設へと向かった。
(ロランさんが成長を見守ってくれている。それだけで調子が上がっていくのが分かる)
モニカは以前の憂鬱はどこへやら、ウキウキした様子で訓練に励んだ。
まだ、苦しみと切なさは時々訪れるものの、ロランからの指導を受けているこの時間、この時間だけは自分だけのものだった。
(モニカの腕力と体力が上がったら、チアルに『銀製鉄破弓』の重さと威力を上げさせる。モニカに関してはこんなところだな。さてとこの後はリリイと会う予定だったな)
ロランは訓練場を後にして、リリアンヌと待ち合わせしている『魔法樹の守人』内部の個室へと向かった。
「ルキウスの求心力が衰えている?」
「ええ。その兆候がそこかしこに見られます」
ロランとリリアンヌは『魔法樹の守人』の控え室で二人きりで話し合っていた。
最近、二人はこのように誰にも聞かれないように『魔法樹の守人』の経営方針について話すことが多くなっていた。
「ここ最近、錬金術ギルドの人達が相次いで『精霊の工廠』にダンジョン経営のことについて相談に来ています。彼らは『金色の鷹』傘下のギルドに所属しているというのに。こんなことは初めてです」
「ふむ」
リリアンヌは口元に手を当てて考え込む仕草をした。
「私も『金色の鷹』の様子が少しおかしいとは思っていました。いつもならそろそろダンジョン経営の方針を巡って交渉に来るはずです。ダンジョンへの入場料や資源の配分はギルド間で、毎回争点になることですからね。『魔法樹の守人』には単独で『鉱山のダンジョン』を経営する余力はありませんから、ダンジョンの資源収集に対して有利な条件をふっかけてきてもいいはずです。でもなぜか今期は何も音沙汰がありません」
「『金色の鷹』の内部で統制が緩んでいるのは間違いないかと思います」
「そうだとしたら確かにチャンスかもしれません。でもこういう風にも考えられません? ルキウスが交渉に来ないのは、こちらの出方を伺っている。つまり向こうにはまだ街中の錬金術ギルドを傘下におさめている優位があります。あえて何もせずに放置しておいて、やがてこちらが何らかの譲歩をしてくるまで待っている」
「確かにそれも考えられます。でもルキウスの性格上、こちらから動くのを待つ、というのは考えにくいと思います。仮に彼が有利な条件を引き出そうとするとしたら、もっと積極的な手段に訴えてくるはず。例えば、錬金術ギルドを引き締めるなり、こちらに脅しをかけてくるなり。しかし今のところモニカ達の買収以外何もリアクションを起こしてきません」
「なるほど。確かにそう考えると彼らしくないですね」
「今回のモニカ達への引き抜き工作にしても、何か……ルキウスの行動から焦りのようなものが見えます。いくらなんでも強引すぎるというか……。僕が『金色の鷹』に在籍していた頃から、大きくなりすぎた組織を持て余しているフシがありましたが、いよいよタガが外れて来ているのかもしれません」
「錬金術ギルドを切り崩すチャンス……というわけですか」
「はい」
リリアンヌは腕を組んで考え込む。
しかし、やがて決心したように目を開きロランの方をまっすぐ見た。
「分かりました。ではこの機に街の錬金術ギルドを取り込む方向で進めましょう。『金色の鷹』抜きでダンジョン経営を進めます。『精霊の工廠』はそのように動いてください」
リリアンヌは決然として言った。
「うん。ありがとう。リリイならそう言ってくれると信じていたよ」
「それで具体的にはどのように事を進めますか?」
「そこなんですよね。『金色の鷹』の統制が緩んでいるとはいえ、まだ錬金術ギルドの面々にも迷いが見えます。我々が『金色の鷹』から離反するように促しても、果たしてどれだけのギルドが付いて来てくれるか……」
「なるほど。決定打が足りないというわけですか」
リリアンヌはまた腕を組んで目を瞑り考え込む。
「とりあえず主だった錬金術ギルドの皆さんを一堂に集めてみてはいかがですか?」
「一堂に?」
「ええ、一堂に。例えばセミナーのようなものを開催して。セミナーなら裏切り行為とまでは言えないので、皆さん軽い気持ちで参加できるでしょう? そこで反応を見るのです。敵味方を区別してどれだけの人間がこちら側に寝返るか判別できるかも」
「なるほど」
「それでもし、こちら側に付きそうなギルドの方が多いようであれば、一気に進めてしまいましょう」
「分かりました。何か企画を考えてみます」
「セミナーを開催する場所についてはこちらで用意できるかと思います。『魔法樹の守人』の所有している施設を提供しましょう。おっと、そろそろ時間ですね」
リリアンヌは壁に立てかけられた時計を見ながら言った。
「ええ、僕もそろそろ行かなければなりません」
「ロランさんはこの後、新規会員募集者の面接でしたっけ?」
「ええ。新しい部隊を作るために欠かせないことです。その後は『精霊の工廠』に顔を出す予定です」
「お忙しいですね」
「君の方こそ。今日も夜遅くまで仕事だろ?」
「ええ、ここが踏ん張りどころですからね」
二人は以前よりもますます忙しくなっていた。
こうして仕事の合間を利用して時間を作らなければ二人の時間を過ごせないほどであった。
二人はまた明日もここで会う約束をして、その日は別れた。
「こちらです。すでに準備は整っていますよ」
面接の準備係はそう言ってロランを面接室に案内した。
「机の上に置いてある紙が、本日の応募者のプロフィールになりますので」
「ありがとう。目を通させてもらうよ」
(ダンジョン攻略に耐えうる新規の部隊をもう一つ作る。そのためには新しく部隊を引っ張るAクラス冒険者の卵を発掘する必要がある)
ロランは応募者の履歴書に目を通す。
(この中に未来のAクラス冒険者がいるはずだ。必ず見つけ出してみせる!)
今季ダンジョンを二つ攻略したうえ、Aクラス冒険者も輩出した『魔法樹の守人』には、新規採用面接に従来よりも多くの応募者が集まっていた。
特に弓使い、支援魔導師、治癒師には養成所で好成績をおさめたり、すでに冒険者として一定のキャリアをおさめているハイレベルな応募者が名を連ねた。
そして早速、ロランは一人目のAクラス候補者を発見した。
リック・ダイアー
剣技:C→A
盾防御:C→A
俊敏付与:E→A
全体治癒:E→A
(見つけた! Aクラス魔道騎士の資質!)
「リック・ダイアーと申します。先日、養成所を卒業したばかりです。養成所では『剣技』と『盾防御』を鍛えてきました。前衛を希望します」
その背の高い実直そうな少年はハキハキと言った。
「なるほど。確かに『剣技』と『盾防御』のスキルが高いようですね」
「はい。前衛には自信があります」
「前衛として有望なのは分かりました。では支援魔法と治癒魔法はいかがですか?」
「支援魔法と治癒魔法……でありますか?」
「ええ、私の見る限りあなたは支援魔法と治癒魔法についても良い素質のスキルをお持ちですよ」
「いや、その……、私は魔力にあまり自信がなくて」
「ふむ。ではステータスについても鑑定させていただきますね」
リック・ダイアーのステータス
魔力:10-10→(100-110)
「大丈夫ですよ。ウチに来れば魔力を100まで伸ばすことができます」
「えっ!? 魔力を100まで?」
「ええ。どうしますか? もし支援魔法や治癒魔法を修める気があるのなら、今すぐ雇ってもいいと思っているのですが」
「は。分かりました。ではやってみます」
二人目は前髪を目にかかるまで長く伸ばした影のある弓使いの少年だった。
「レリオ・サンタナと申します。希望は弓使いです」
ロランはレリオのスキルとステータスを鑑定した。
レリオ・サンタナ
弓射撃:C→A
一撃必殺:C→A
腕力:35-55→(70-80)
俊敏:40-60→(90-100)
(パワーもアジリティもある。弓使いとしての資質は充分か。ただモニカのライバルとしてはあと一つ何か欲しいところだな)
ロランは他にも何か特筆すべきスキルやステータスがないか探ってみる。
ステータス鑑定:E→A
指揮:10-10→(100-110)
(これは。スキル『ステータス鑑定』を持っている上、指揮のステータスが非常に高い。鍛えれば隊長になりうる器だ)
「ふむ。ステータスの『指揮』の項目が低いようですが……」
そう言うとレリオは気まずそうに笑った。
「いやぁ。『指揮』はどうも苦手でして、養成所の先生にも諦めた方がいいって言われたので……」
「なるほど。いいでしょう。弓使いとしてあなたを雇います。ただあなたには指揮官としての才能もあると思いますよ」
「? そうですか?」
(変な人だな。『指揮』のステータスは低いって言ってるのに)
レリオは不思議そうに首をかしげるのであった。
3人目は少しおしゃべりな少女だった。
「マリナ・ファルトゥナです。養成所では攻撃魔導師として修練を積んでいました。得意魔法は『爆風魔法』です。爆風魔法ってカッコいいと思いません? 発動した途端、ブワーって風が舞い起こって。風の色も綺麗だし。上手に発動できた時は……」
ロランは彼女の話を聞き流しながらスキル鑑定を発動させた。
マリナ・フォルトゥナ
爆風魔法:C→A
鉱石保有:E→A
装備保有:E→A
薬剤保有:E→A
「ふむ。あなたはアイテム保有師としても優秀そうですね」
「えっ? そうなんですか?」
「ええ。面接は合格です。もし可能なら明日からギルドの訓練に参加して欲しいのですが……」
「本当ですか!? はい。『魔法樹の守人』に入れるのなら何でもします!」
(よし。これでAクラスの資質を持つ冒険者を新しく三名確保。既存の戦力も合わせれば『魔法樹の守人』の保有するAクラス候補者は七名。冒険者のクオリティで『金色の鷹』を圧倒できる!)
「んー。久しぶりの自由時間だ」
街の中央広場で、ジルは背伸びをする。
その気分は、まるで刑期を終えたばかりの囚人のように、晴れやかだった。
ロランの想像通り『金色の鷹』内部は惨憺たる有様だった。
ルキウスは引き抜き資金の捻出に奔走しているため、ギルド内部のことは全て側近のディアンナに任せていた。
しかし怠惰な彼女に『金色の鷹』のような大組織を切り盛りできるはずもなく、あらゆる問題はおざなりにされていた。
セバスタの逃走により空いた第二部隊隊長の後釜問題、ダンジョン経営に関する問題。
おかげで誰がどこに掛け合っても、誰も自分が何をすべきか、どうすればいいのかが分からず、あらゆる業務が停止していた。
しかし組織が機能不全に陥ったからといって、人々の栄誉と権勢、退屈紛れを求める心は誰にも抑えることはできない。
やることのなくなった会員達は業務に励む代わりにせっせと陰謀に励んだ。
空位となった第二部隊隊長のポストを巡って、権力争いが繰り広げられた。
この機会に自分がセバスタの後釜になろうとして、あるいは自分の望む人物を後釜に据えようとして、人々はしきりに徒党を組んだり、影でコソコソと相談しあったりと盛んに運動し始めた。
ジルもそれらのギルド内の権力争いに巻き込まれかけていたが(ルキウスの側近であり、実力者である彼女を味方につけたい者は大勢いた)、今の所、彼女は持ちかけられたあらゆる誘いを断り、これらの運動全てに距離を置いていた。
むしろギルド内のそのような空気に嫌気が差して、飛び出して来たところだった。
PRの仕事に関しても、人気がモニカ達へと移ったことから激減していて、休日をとるのに絶好のタイミングというわけだった。
(やはり休日はいいものだな。たまにはなんの気兼ねもなく街を歩きたい)
彼女は今、公的な身分に気を煩わされないようトレードマークである美しい髪を帽子で隠し、茶色の地味な外套を着て、えりで口元を隠し、街中を歩いていた。
ただし、見る人が見ればその姿はいかにも有名人のお忍びという感じだった。
(やはり他人の視線を気にせず街を歩けるというのはいいものだな)
ジルはこれ幸いとばかりに誰の視線も気にせず街の商店街を歩く自由を満喫していた。
「ねぇ。あの娘可愛くない?」
「うわ。ホントだ」
「スタイルいいなー」
花屋を見ていたジルは後ろでそう囁く声が聞こえて、ギクリとした。
振り返ると二人組の男がこちらにチラチラと目配せしている。
一応変装してはいるものの、背が高く、スタイル抜群のその美貌とオーラは、隠そうとしても隠しきれるものではなく、街を歩いているだけで注目の的となってしまった。
「声かけてみる?」
「あれ? でもあの人どこかで見たことがあるような……」
面倒事に巻き込まれそうな気配を感じたジルは、急ぎ足で裏道へと駆け込んだ。
(ふぅ。やれやれ。みんななんで私なんかに注目するんだか)
「それにしても……」
ジルは自分が知らない間に繁華街の裏側、閑散とした通りに入り込んだことに気づいた。
そこには小さな工房が立ち並んでいる。
(懐かしいなぁ。私も駆け出しの冒険者の頃は、よくこういう通りで安く武器を作ってくれる店を探し回ったものだ)
今となっては、武器の調達は全てギルドが行ってくれるので、このように武器屋を巡ることはなくなったが。
(安い武器はすぐに壊れちゃうから、安く修理してくれる店を探し回っていたなぁ)
ジルはすっかり新人だった頃の気分になって裏通りを歩いた。
そのうち一つの錬金術ギルドを見つける。
看板に精霊の紋章を施した小さな工房だった。
(そうそう。こんな小さな工房に入り浸ってたっけ。どれ、ちょっと入ってみるか)
ジルが入ってみると、そこは意外にも銀器が充実している店だった。
(意外だな。こんな小さな工房なのに、富裕層向けの銀器を取り扱ってるなんて)
ジルは店内を見渡してみた。
(武器は作ってないのかな?)
そんな風にしばらく店の中を見回していると店の奥から二人の若い男の声が聞こえてきた。
「セミナー……ですか?」
「ああ、そこでどれだけの人間がこちら側になびくかを試して……」
「あ、すみません。ちょっと後でいいですか? お客さんみたいです」
「あ、うん。いらっしゃいませー」
「ロランさん?」
ジルは狐につままれたような目で奥から出てきた男、ロランの方を見た。
ロランもキョトンとする。
「ひょっとして……ジル?」
これにて本年度の投稿は終了です。
読者の皆さん、良いお年を。
来年もよろしくお願いします。




