第25話 神秘の世界
ロラン達は見渡す限り銀世界の雪山を歩いていた。
(寒い)
モニカは白い息を吐いて手を温めた。
吹雪を吐くカバ討伐クエストを見越して、ロランが用意してくれたコートとブーツ、手袋を装着しているものの、先程まで温暖だった気候から、突然、雪山に放り出された体はその温度差に悲鳴を上げていた。
「いたぞ! 吹雪を吐くカバだ」
モニカの隣にいる戦士が鋭く叫んだ。
俄かに周りの兵士達が武器をガチャガチャと鳴らして戦闘準備に取り掛かり始める。
「今度こそ仕留めるぞ!」
山頂に佇む吹雪を吐くカバを認めた戦士達は、剣を抜き、少しでも距離を詰めんと雪山を駆け上がって行く。
「急げ。敵が『凍てつく息吹』を吐く前に少しでも距離を詰めるんだ!」
戦士達は雪に脚を取られながらも勾配のある斜面を駆け足で登って行く。
接敵まであと少しといったところで、ブリザード・ヒポポタマスはその大口を開け、口内から雪と氷、水の入り混じった息吹、『凍てつく息吹』を吐き出した。
「一旦停止して! 『広範囲回復魔法』!」
ユフィネが回復魔法の呪文を唱えて、『回復魔法の戦列』を展開させる。
視界を奪わんばかりの猛烈な雪と氷の嵐が襲いかかる。
さらに雪の中に潜んでいた雪男達が、現れて、冒険者達に襲いかかって来た。
間一髪のところで、冒険者達は魔法陣の上に立った。
『凍てつく息吹』が冒険者達の体力を奪い、雪男達が棍棒で攻撃してくるが、すぐに回復魔法が体力を取り戻させる。
極限までの濃度に達した吹雪は冒険者達の体力を奪い、さらにホワイトアウトして視界まで奪った。
冒険者達は敵も味方も区別がつかない白い闇に囚われた。
一方でイエティ達は的確に冒険者達に打撃を加える。
しばらく一方的にイエティと吹雪に嬲られていた部隊だが、そのうち吹雪が晴れていき、視界が良好になると反撃に転じた。
やがてイエティ達を敗走させる。
しかしその頃にはブリザード・ヒポポタマスは、その短足にもかかわらず意外な俊敏さで戦域から離脱していた。
「くそっ。取り逃がしたか」
「また一からやり直しだな」
ここは14階層の雪原地帯。
ダンジョン内は基本的に緑生い茂る初夏の気候だったが、このようにこの場所だけ辺り一面雪景色になっているのは他でもない、吹雪を吐くカバの仕業だった。
14階層に辿り着いたロラン達は吹雪を吐くカバ討伐クエストに挑戦していた。
吹雪を吐くカバはその名の通り常に『凍てつく息吹』を吐いてくる厄介なモンスターだった。
ブリザード・ヒポポタマスのいる場所は、そこがどんな場所であれ、あたり一面雪に覆われてしまう。
このモンスターの周囲では、寒さに強いモンスターしか生息できない。
ブリザード・ヒポポタマスの『凍てつく息吹』の前には、鎧も盾も無意味だった。
どれだけ硬い防具で身を固めていようとも、氷の息は冒険者達の肌に霜焼けをつくり、血管の機能を停止させ、やがては身体中を壊死させてしまう。
しかもブリザード・ヒポポタマスの周りには、『凍てつく息吹』を食らっても何ともない雪男が常にいて、ブリザード・ヒポポタマスを守っている。
イエティは鎧や剣こそ持っていないものの、分厚い体毛と筋骨隆々の体躯、濃密な吹雪でも周囲を見渡せる目、を持ち合わせている厄介なモンスターだった。
冒険者達は『凍てつく息吹』を受けながら、雪男と戦わなければならず、要するに常に回復する必要があった。
これがブリザード・ヒポポタマス討伐が治癒師用のクエストとされる所以である。
そうして今、実際にロランたちの部隊は、『回復魔法の戦列』を頼りに、ブリザード・ヒポポタマスを追い回していたが、中々勝負を決めることができずにいた。
イエティ達を撃退するところまでは上手くいくのだが、そのうちに肝心のブリザード・ヒポポタマスには逃げられてしまう。
またイエティ達は撃退されるものの、瀕死には至らず、体力を全て奪われる前に退却しては、雪山の至る場所にあらかじめ貯蔵しておいた木の実を掘り出し、回復してはまた立ち向かってくるということを繰り返していた。
ロラン達は敵のゲリラ戦に対して、決め手を欠き、ジワジワと体力を奪われ、アイテムを消耗していった。
しかして部隊は懸命に戦った。
モンスター達の執拗なヒットアンドアウェイ戦術にも動じることなく着実に敵をダンジョンの隅へと追い詰めていく。
ブリザード・ヒポポタマスの吐いた『凍てつく息吹』と視界を遮る豪雪にも関わらず、モニカの『ホークアイ』で敵の奇襲を防ぎ、敵が向かって来る度にユフィネは『広範囲回復魔法』で部隊を回復して、着実に雪男達とブリザード・ヒポポタマスを追い詰めて行った。
部隊は『広範囲回復魔法』によって回復している間のみ、寒さから解放されて、まるで焚き火にあたっているかのように暖かく感じられた。
行軍中、部隊のメンバーは『広範囲回復魔法』の恩恵に預かりたくて、早くモンスターがかかってこないかと内心密かに望むくらいだった。
付近に生息するイエティを駆逐したロラン達は、ついに本丸の吹雪を吐くカバを雪原の端っこにまで追い詰めた。
ブリザード・ヒポポタマスは、これまでのものよりも一段と強い冷気を放つことで、部隊を牽制した。
部隊はブリザード・ヒポポタマスが冷気を吐いている間、ユフィネの『広範囲回復魔法』の魔法陣から抜け出せないほどだった。
「ぐっ。なんつー冷気だよ」
「前に進めねぇ」
ブリザード・ヒポポタマスの激しい冷気を前に、白兵戦部隊の者達が思わず悪態をついた。
しかし、だからと言って弱音を吐く者はいない。
部隊が前進するのを止めることは決してなかった。
敵の攻撃に耐えつつ、ブリザード・ヒポポタマスが冷気を吐くのを止めるたびに、雪を掻き分けながら少しずつ敵に近づいて行く。
今もまた、何度目かのチャンスが訪れようとしていた。
ブリザード・ヒポポタマスはその大口を一旦閉じて冷気を口の中に貯めている。
すぐにまた氷の息が降り注いでくるだろうが、距離を詰めるまたとないチャンスだ。
モニカの射程距離に捉えられれば、勝負を決めることができる。
しかし、そのためにはまずユフィネの『回復魔法の戦列』を展開しなければならない。(もはや回復魔法なしで『凍てつく息吹』をまともに受けるのは危険だった)
「ユフィネ。回復魔法だ。戦列を前進させて」
ロランが指示を出すと、ユフィネは『広範囲回復魔法』を発動させる。
しかし魔法陣はてんでバラバラに散らばってしまう。
(チッ、またハズレか)
ロランは内心で舌打ちした。
ユフィネの回復魔法の命中率が低いのは相変わらずで、まともに戦列を形成できるのは三回に一度程度の確率だった。
先ほどからそのせいで勝機を逃し続けていると言えなくもなかった。
(やはりこの命中率の低さは、治癒師専門職としては物足りないな。とはいえ、戦列を敷かず後衛に直接攻撃されるのは怖い。成功するまでやり続けるしかない)
「ユフィネ。もう一度回復魔法を……ユフィネ?」
ユフィネは回復魔法が外れたにも関わらず魔法を放ち続けていた。
(ユフィネ? 一体何を)
そうこうしているうちにブリザード・ヒポポタマスは冷気を吐き出そうとしている。
モタモタしていれば部隊は壊滅的なダメージに見舞われるだろう。
「ユフィネ。どうした? 早くしないと……」
「ロランさん。私……、魔法陣が……」
ロランはユフィネにそう言われてハッとした。
彼女の魔法陣はその場に留まらず動いていた。
(魔法陣が動いている? 魔法陣は一度発動させるとその場所からは動かせないはずなのになぜ? まさか!)
ロランはユフィネのスキルを鑑定した。
彼女の『広範囲回復魔法』はAになっていた。
(魔法陣を自在に動かせる。これが『広範囲回復魔法』のAレベルなのか?)
彼女は展開した魔法陣を自在に動かせるようになっていた。
回復魔法を発動させ続けるというロランの考案した戦術は、彼女の命中率の低さを補うだけでなく、偶然にも真の力を目覚めさせるきっかけにもなったのだ。
てんでバラバラな位置で発動していた円形の魔法陣は、彼女の操作によって数珠状に繋がっていき、戦列を形成していく。
そればかりかブリザード・ヒポポタマスの位置している場所に向かって魔法陣の道を作る。
ブリザード・ヒポポタマスは大口を開けて、口一杯に溜め込んだ冷気を吐き出す。
「モニカ! 『一撃必殺』を!」
「はい!」
ロランとモニカはそのやり取りだけで、意思疎通した。
モニカは吹き荒ぶ冷気をものともせず、魔法陣の道を駆け抜けて、ブリザード・ヒポポタマスに至近距離から『一撃必殺』を撃ち込んだ。
ブリザード・ヒポポタマスは氷のように砕けて、バラバラになった。
ユフィネの手元には、ブリザード・ヒポポタマスの水色の牙、アイテム『冷気の象牙』が独りでにやって来る。
(よし。これでユフィネもBクラスになった)
ロランは改めてモニカ、シャクマ、ユフィネの三人を見た。
(あとはAクラス用のクエストを攻略すれば彼女達は成長限界。僕の任務は完了……か)
ブリザード・ヒポポタマスを攻略したロラン達は、モニカの『ホークアイ』を駆使して体力回復アイテムを拾いつつ、最短距離で15階層に到達した。
15階層は休憩地点だった。
「よし。それじゃあ、各班、報告してくれ」
ロランがそう呼びかけると、各班報告を始める。
「2班、問題ありません」
「3班、問題ありません」
「4班、ポーションが足りません。余っている班から回して下さい」
「5班、魔力を回復するので少し待ってください」
ユフィネが『マジックチェリー』を取り出しながら言った。
「消耗も少ないし、アイテムも万全です」
「まさか帰還するなんて言わないでしょうね?」
「ロランさん。私達まだまだ探索できますよ」
モニカとシャクマはまだやれるということを示すように両拳を前に出してファイティングポーズをしてみせた。
ロランは部隊の消耗の低さに苦笑した。
(10階層以降だって言うのに、大して問題なし……か。それもそうだ。モニカの『ホークアイ』にシャクマの支援魔法、ユフィネの回復魔法があれば、どんなダンジョンだってクリアできる)
「そうだね。まだ探索できる」
(でも……、ここまでだな)
「みんな聞いてくれ」
ロランが呼びかけると全員注目した。
「ここまでよくやってくれた。次からはいよいよ、16階層以降『神域』だ。とはいえ、恐れることはない。この部隊にはAクラスアーチャーがいる。シャクマとユフィネもすでにAクラス相当の実力があると見ていいだろう。それ以外のメンバーもBクラスに匹敵する精鋭揃い。『神域』に住むモンスターといえども君達の敵ではないはずだ」
部隊のメンバーは一様に満足した表情を浮かべ、喜色に包まれる。
「今回はダンジョンの攻略は難しいかもしれない。従来の攻略ペースに鑑みれば、そろそろ、『金色の鷹』の主力第二部隊、セバスタ隊がダンジョンの最深部に到達している頃だ。やがて、このダンジョンは『金色の鷹』以外の者は立ち入りが禁止される。しかし、時間はまだある。今のうちに君達は進めるだけ進んで、クエストを攻略し、ダンジョンの最深部までできるだけ近づいて欲しい」
(君達は?)
モニカはロランの引っかかる言い回しに敏感に反応した。
「モニカ、シャクマ、ユフィネ。これを……」
3人はロランから配布されたクエスト情報を受け取る。
「これが君達の目指すべきクエストだ。『金色の鷹』によってダンジョンが攻略される前に可能な限りクリアしてくれ」
「ロランさん……。ロランさんは一緒に来てくれないんですか?」
モニカが心細そうに言った。
ロランは悲しげに首を振った。
「僕のスキルとステータス、そして装備ではここが限界なんだよ。実のところ、もはや君達についていくだけで精一杯なんだ」
ロランは諦めの表情を浮かべながら笑った。
部隊のメンバーはみんなBクラス相当の装備を身につけているというのに、ロランはいまだにDクラス相当の装備だった。
鑑定スキルに特化することを決めたロランにとって、ダンジョンの最深部まで到達するなんてことは、とうの昔に諦めた夢だった。
「これ以上僕がついていけば君達の足を引っ張ることになってしまう。それに、やがて教え子は指導者の手から離れて巣立っていくものだ」
ロランは寂しげに言った。
「もう君達は僕がいなくてもダンジョンを探索できるはずだ。いや、むしろ独り立ちさせるのが遅すぎたかもしれない。久しぶりに冒険者の指導を任せられて嬉しくて、ついついのめり込んでしまったみたいだ」
ロランはフッと悲しげな表情を見せた。
(ロランさん……)
モニカはそのロランの表情から彼の背後にある悲しげな背景と過去、以前した辛い体験をそこはかとなく察した。
そしてその傷がまだ癒えていないことも。
おそらく彼は自分が人生で経験してきたよりもずっと辛いことを経験してきたに違いない。
モニカは胸が詰まる思いだった。
どうにかロランの悲しみや苦しみを自分も共有したかった。
彼の支えになりたかったが、それができないのがもどかしかった。
ロランはモニカの切なげな顔を見て、不思議そうにキョトンとした。
「モニカ、どうしたんだい、そんな顔をして」
「ロランさん……私は……、私はロランさんが……、ロランさんの側にいれなくて」
「ちょっとの間、離れるだけじゃないか。ダンジョンが攻略されればやがてまた会えるよ」
「違うんです。私は……私が言いたいのは、そういうことじゃなくて……」
「さ、前を向いて。君はエースなんだからしっかりしなきゃ。ここから先は並みの冒険者では一生かけても辿り着けない場所だよ。君にとっても夢だったはずだ。そして今、君は夢の扉を開くその資格を持っている。胸を張って進まなくちゃいけないよ」
「うう。ハイ」
ロランはモニカを抱きしめて元気付けた。
シャクマとユフィネ、他の者達にも一通り言葉をかけておく。
「モニカ、シャクマ、ユフィネ。これからは君達がこの部隊の指揮官だ。3人でよく相談してダンジョンを進むんだよ。それじゃ」
ロランはそれだけ言うと『帰還の魔法陣』の上に乗った。
「ロランさーん。また会う日までー」
シャクマは大げさに手を振ってロランを見送った。
ロランも手を振り返す。
やがてロランの周りを光が包み込んだ。
魔法陣はロランを街へと運んで行く。
モニカは伝えられなかった思いを胸に残しながらも、気を取り直して、16階層へと向かう転移魔法陣に向き直る。
ユフィネは食べ終わった『マジックチェリー』の房をピンと指で弾いて捨てた。
『マジックチェリー』の房は床にポトリと落ちる。
「よし。魔力の回復完了! いつでもいいわよ」
ユフィネが辛気臭さを振り払うようなカラッとした調子で言った。
彼女はこのような場面にあっても感情を表に出さず、ドライな一面を保っていた。
準備を整えた部隊は16階層へと行く転移魔法陣の上に陣取った。
16階層への転移を前にして、部隊のメンバーはワクワクを抑えきれなかった。
「16階層だぜ」
「ああ」
「なあ、お前16階層まで行ったことあるか?」
「いや、これが初めてだ」
彼らは迫り来る新たな冒険の扉を前にして、待ちきれない様子で言った。
部隊が転移魔法陣を潜り抜けた先にあったのは、神秘的な世界だった。
茂る木々、生えている植物、ぶら下がっている果実はいずれも宝石のように光沢を放っていた。
生き物も植物も地面も空気もぼんやりと白く発光している。
この場所に輝いていないものなど何もなかった。
(……キレイ)
モニカはその余りにも美しい世界に息を呑んだ。
もはやそこには普通のモンスターはいない。
そこに住むことが許されているのは神々の遣いとされる神獣と呼ばれるモンスター達だけであった。
モニカは魔法陣の外へと一歩出て、16階層へと踏み出した。
彼女は今、間違いなく自分の足で『神域』を冒険しようとしていた。
モニカ達が16階層に踏み出してから、数時間後、コーターの部隊からアイテムを奪い取ったセバスタ達も15階層へと辿り着いた。
「やれやれ。コーター達のせいで無駄に時間を使ってしまったわい」
セバスタは憤懣やるかたないといった様子で、肩をいからせながら休憩地点の部屋を横切った。
「しかし、解せませんね。彼らはあんなところで一体何をしていたのでしょう。あんな脆弱な部隊と装備で10階層以降を探索できないことなど、彼らでもわかっていたでしょうに」
セバスタの副官が不思議そうに言った。
「ふん。大方、我々を出し抜けると思い、欲張って自分の力量を見誤ったのだろうよ。愚かな奴らだ」
「ふむ。まあ、そういうことですかね」
「コーター達のことなんざどうでもいい。それよりもこれからのことだ」
セバスタは噴水の縁にどかっと腰を下ろして、部隊を睥睨した。
「これよりいよいよ16階層『神域』に突入するぞ。お前達も気合を入れなおせ。差し当たっては、各班消耗度合いを……」
「隊長! 隊長! 大変です!」
「なんだいきなり。血相を変えて。少しは落ち着かんか」
セバスタは副官の一人が慌てて進み出てきたのを見て顔をしかめた。
「これを見てください」
副官は手に持った細い茎のようなものをセバスタの眼前に指し示して見せる。
「これは……」
「『マジックチェリー』の房だと思われます」
「……なんだと?」
「我々はここで『マジックチェリー』を消費したりしていない。つまり……」
「我々以外の誰かがここに辿り着いたということです」
セバスタの顔が険しくなる。
「バカな。我々以外の一体誰がこの階層に?」
「落ち着け。『アイテム鑑定』で割り出すんだ」
セバスタ部隊の中で『アイテム鑑定』のスキルを持つ者が、『マジックチェリー』の房を鑑定する。
彼の脳裏にはユフィネが『マジックチェリー』の房を床に捨てる様子がありありと映し出された。
そして彼女の服の胸元に刻まれた『魔法樹の守人』の紋章も。
「どうだ? 何か分かったか?」
「ええ、はっきりと分かりましたよ、隊長。この『マジックチェリー』の房をここに捨てた人物。その人物は『魔法樹の守人』に所属する冒険者です」
「おのれ! 謀りおったな!」
セバスタはカッと目を見開いて、弾かれたように立ち上がった。
彼愛用の斧を引っ掴んで部隊全員に檄を飛ばした。
「『魔法樹の守人』め。卑劣な真似をしおって。全員武器を持て。今すぐ奴らを追うぞ」
(我々を出し抜いた罪、その身をもって贖ってもらうぞ!)