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第119話 雷撃との連携

「このダンジョンで気をつけるべきモンスターは2種族」


 ロランは部隊を率いながら、リリアンヌにダンジョンのあらましについてレクチャーした。


「1つは岩石族。頑強な岩石を身に纏う彼らは通常のモンスターより防御力がはるかに高い」


「ふむふむ」


「そしてもう1種族が竜族。空を飛びながら『火の息(ブレス)』で攻撃してくる彼らは強力な飛行ユニットだ。『浮遊』を使える君といえどもてこずることになるだろう」


「なるほど。それは厄介な相手ですね」


「うん。もし『火竜(ファフニール)』に部隊の上空に来られたら君の『雷撃』はほとんど無力化される」


「『雷撃』は下方向にしか撃てないから、部隊を巻き添えにしてしまいますものね」


「さて、ここで問題だが、『火竜(ファフニール)』に上空に来られないようにするためにはどうすればいいと思う?」


「上空に来られる前に倒してしまう……でしょうか?」


「うん。正解だ。敵に見つかるより早く、敵を見つける。そのためにも、索敵能力の優れた弓使い(アーチャー)と連携する必要がある。おっと、噂をすれば。クレアが『火竜(ファフニール)』を見つけたみたいだ」


 前方少し離れた場所から空に向かって矢が撃たれている。


火竜(ファフニール)』を含むモンスターの一隊が近づいて来ている、という合図だった。


「リリィ。とりあえず『火竜(ファフニール)』と戦ってみてごらん。援護するから」


「分かりました!」


 リリアンヌは箒に乗って、上空に浮かび上がる。


 部隊には騒めきが広がった。


「いや、驚いた。本当に空を飛んでいる」


 レオンがたまげたように言った。


「さて、レオン、エリオ。リリィと一緒に戦う時の心得だが、彼女は『浮遊』、『雷撃』という強力なスキルを持っているものの、着地の際は隙が出やすい。そこで、レオン、君は戦いを指揮しながら彼女の着地点を確保するよう気を付けてくれ」


「分かった」


「エリオ。君は防御重視で『盾突撃』は控えるように。今回はリリィの『雷撃』を中心に攻撃を組み立てる」


「うん。分かった」


「ウィル、ラナ。君達にはいずれ後衛のリーダーになってもらう。Aクラス魔導師であるリリィの立ち回りをよく見ていて。参考にするように」


「オーケー」


「分かりましたわ」




 リリアンヌがクレアの合図した方に飛んで行くと、すぐに2体の『火竜(ファフニール)』に遭遇する。


 1体の『火竜(ファフニール)』はリリアンヌを見るや否や、口を大きく開けて『火の息(ブレス)』を吐き出した。


 リリアンヌは迫り来る火炎をヒョイと避けて、『火竜(ファフニール)』の上空にポジションを取ると、杖の先を光らせた。


 雷鳴が轟いて、黒こげになった『火竜(ファフニール)』は真っ逆さまに墜落した。


(まずは1匹。さて、もう1匹は……)


 もう1匹の『火竜(ファフニール)』は、リリアンヌの『雷撃』を警戒しているのか、距離を取ってきた。


 リリアンヌは『火竜(ファフニール)』の上空にポジションを取ろうとしたが、『火竜(ファフニール)』はそれを許してはくれなかった。


(ううむ。俊敏(アジリティ)高いですね。上を取れない。さりとて、このまま放っておいては部隊の上空を取られて、『雷撃』を封じられてしまいます。どうしたものか)


 リリアンヌはロランの方に視線を送った。


 ロランはそれだけで彼女の意図を察する。


「ジェフ。リリィを援護してやってくれ」


「よし。分かったぜ」


 ジェフは『火竜(ファフニール)』の死角に入り込み、『弓射撃』で攻撃した。


 怒った『火竜(ファフニール)』はジェフの方に突っ込んでいく。


 ジェフは『火竜(ファフニール)』を引き付けながら走る。


(隙あり!)


 リリアンヌは素早く『火竜(ファフニール)』の上をとって、『雷撃』を放った。


火竜(ファフニール)』はあえなく墜落する。


火竜(ファフニール)』を仕留めたのを確認すると、リリアンヌはジェフのすぐ横につけて飛んだ。


「ジェフ、ありがとう。助かりました」


「おう。囮の動き。あんな感じでいいか?」


「ええ。バッチリでしたよ」


(さて、まだ魔力も残っていますし。もう少し戦いますか)


 地上でも戦いが始まっていた。


 ロランが部隊を展開して、鬼族と狼族の混成部隊を相手に戦っているところだった。




 ロラン達が『小鬼(ゴブリン)』や『大鬼(オーク)』といったお馴染みのモンスター達と戦っていると、背後から一際大きなモンスターがぬうっと現れた。


「あれは?」


「『岩肌の大鬼(ロック・オーガ)』だ!」


 部隊の間に騒めきが広がる。


「任せろ。俺が行く!」


 エリオが言った。


「よし。スイッチだエリオ」


 レオンがエリオのいた場所の穴を埋め、流れるようにスイッチした。


 攻撃力の高いモンスターが現れれば、エリオが対処する、というのはこの部隊での最も基本的な約束事だった。


 エリオが『岩肌の大鬼(ロック・オーガ)』の体当たりを受け止めていると、視界の切れ端にリリアンヌの姿がチラリと見えた。


(リリアンヌ?)


「エリオ、『岩肌の大鬼(ロック・オーガ)』に『盾突撃』して下さい」


 エリオはリリアンヌの言う通り『盾突撃』した。


岩肌の大鬼(ロック・オーガ)』が弾かれて、一瞬動きを止める。


 その瞬間を狙って、すかさずリリアンヌは『岩肌の大鬼(ロック・オーガ)』の上空に滑り込み、『雷撃』を喰らわせる。


 全身雷に打たれた『岩肌の大鬼(ロック・オーガ)』は、あえなくその場にくず折れる。


(い、一撃かよ)


 エリオはあんぐりする。


「さあ、皆さん。最も厄介な敵は倒しました。あと一息ですよ」


 リリアンヌにそう鼓舞された部隊は、一層勇気づけられて、敵のモンスターに躍りかかっていった。


 リリアンヌは勝負がほとんど決まったのを見届けると、ロランの用意しておいてくれた着地点に向かった。


 ロランは油断なく全軍に目配せして、みんなの戦いを見守っていた。


「ふむ。やはりロランさんが指揮してくれると安心しますね」


「リリィ。君こそ立派な戦いぶりだよ。流石だね。今日、加わったとは思えない馴染みっぷりだ。ジェフやエリオと綺麗に連携して、まるでずっと昔からこの部隊にいたみたいだ」


 ロランはリリアンヌの手を取って着地を手伝いながら言った。


「んふふ。ありがとうございます」


 リリアンヌはそう言いながらも、心配そうにロランの横顔を見る。


(戦術眼の高い弓使い(アーチャー)、大黒柱の盾使い、指揮能力の高い剣士。部隊の全体的な練度も高い。Aクラス冒険者がいないことを除けば、『魔法樹の守人』の主力部隊にも十分匹敵するのに。これだけの戦力を揃えても勝ち切れないなんて……。ロランの戦っている『白狼』というギルド、本当に手強いんですね)


『精霊の工廠』同盟はリリアンヌのおかげもあって破竹の勢いでダンジョンを進んだ。


 やがて『洪水を起こす竜(フラッド・ドラゴン)』の棲む終点の湖に辿り着く。

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