理由 ①
その時、いつのまに来たのか、壇上で座る王のとなりに背の高い中年の導師が立っていた。白い布を体に巻いて、いかにも悟りを開いたような面もちだ。その導師は、持っていた杖でトントンと床を鳴らした。
「皆の者、静粛に。王の御前である」
導師の言葉に、タレス先生をはじめ、全ての者が胸に手を当て、首を垂れ王に敬礼をする。あたしもやった方がいいのかな?と思って、チラっとジャネットとソフィーを見たら、二人とも腕組みしてムスッとしたままだ。こいつら・・図太いわ・・。
「さて、そこの三姉妹よ。よくぞこの城に戻られた。長き修行、大変じゃったのう」
壇上からあたしたちに話しかける導師。よくぞ戻ったと言われても、ここにいた記憶もないから戻った気など全然しないのだが。しかし聞きたいことは山ほどある。
「あの~、導師様。あたしクレアといいます。はじめまして。今まで聞かされていないのですが、あたしはなんでここによばれているのですか?」
「そうだな、幼いときに、あたしはそこのプレセ師と共に、剣の修行の旅に出されたそうだが、なにが目的なんだか知りたいね」
「導師様、わたしも同じ意見です。ハイシスターのアルセ様が、王の妹であることを聞かされたのがつい今朝ほど。王様がわたしの親だということですが、すると母もこの城にいらっしゃるのでしょうか」
あたしはソフィーの言葉に胸がズキッとした。お母さん・・。もしあたしを産んでくれたなら、どうしてそばにいてくれなかったのか・・。いつもそれはずっと思っていた。だけどなにかが壊れそうで、聞く勇気がもてなかったの・・。あたしは導師の返答に耳をとぎすませた。
「ふむ、お前たちが疑問に思うのも無理はないな。まずは言葉より先に、これらを見てみるがよい」
導師の言葉に呼応するように、この部屋のドアがバタッと開き、数名の衛兵が2台の大きな台車を押し運んできて、あたしたちの目の前に止めた。台車の上の荷には、白い布がかけられている。
導師のパチンと鳴らす指を合図に、1台目の台車の布がはぎ取られた。
そこには3体の人間の石像が載っていた。
しかし、それはただの石像ではない。あたしはその石像が、ほんの少しではあるが気を発していることを感じ取っている。
「この石像、元は人間だな」
「そうね、しかも魔術での石化じゃないわ。邪悪な呪いの力を感じる。今のわたしの力では、この呪いの解除は難しいと思う・・」
ジャネットとソフィーが、冷静に判断している。しかし、この気を感じ取れるなんて、この二人も相当の術者ね。
あたしは触診をしようと石像に手を伸ばしたとき、
「やめろ!クレア!呪いを受けるぞ!」
様子をみていた導師が大声を張り上げた。あたしはビクッとして思わず手を引くが、このくらい防護魔術を施して呪いを受けないように触るわよ。これでも学院では首席だったんだからね。
導師の恫喝で場がしらっとしかけたとき、また導師がパチッと指を鳴らした。
2台目の台車の上には箱のようなものが乗っていて白布がかけてあった。が、導師の合図にその布は引かれた。