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「じゃあね、杉守さん。お互い拝受してもらえる様に頑張ろう」



「さァてね、そのヘタレを直せたら協力して上げても良いんだけどねェ」




「こ、胡蝶ぉ……」




 支部を出て城山くんに別れを告げて歩き出します。

 夕日をバックに言い合ってる(城山くんが弄られてる?)2人はすごく仲が良さそうで、初めはどうなるかと思いましたが、気が合うようで良かったです。


 ……人の事よりも自分ですね。

 拝受なんてしてもらえるのでしょうか?

 ちらりと神様を見てもこちらを気にする様子は無く、商店街を興味深そうに見ています。



「あの、神様」



「んー?」



「先程教えて貰った拝受なんですけど、私はどうすれば……」



 おずおずと尋ねてみるとこちらに視線を戻して困った様に首を傾げました。



「それがなー、俺も契約するのは初めてだからよく分かんねぇんだよな。何となく感覚でいける気もすんだけどよ」



「そうですか……」



 神様も掴めていないのなら実践してみるしかないですかね。



「すみません、家に帰ったら試してみても良いですか?」



「おー、やってみようぜ 」



「ありがとうございます」



 神様はどうせならカッコイイ武器出してぇよな!と笑い駆け出しました。



「え、待って下さいー!」



「さっさと帰って早く試そうぜ!」




 私達も城山くん達のように傍から見ると仲が良さそうに見えるのかな?見えたら嬉しいです。

 て、ちょっと神様!走るの速いです……!









 部屋に着くなり床に座り込んで、ぜいぜいと肩で息をする私に神様が苦笑しています。

 た、体力無くてすみません!



「お前、本気で鍛えないとダメだな。戦えねぇだろ、それじゃあ」



「は、すみ、ませっ」



「とりあえず落ち着いたらやろうぜ」



 そう言うと神様はベッドにゴロンと寝転がってしまいました。うう、私から頼んでおいて……申し訳なさすぎます。


 5分くらい経って私の息が完全に整った所で神様が身を起こしました。



「早苗、そろそろいけるか?」



「はい、大丈夫です。すみませんでした」



「いや、別に謝んなくてもいーけど……じゃあ俺、戻るからな」



「お願いします」



 神様が依り代に戻ったのを見届けてから目を閉じます。

 右手をかざして雑念を払う様に深呼吸をひとつ。



「神様、力をお貸し下さい」







 …………何も起きませんね。

 ガラス玉を触ってみてもうんともすんとも言いません。

 ダメ……ですか。



「なんでできねぇんだ?」



 緑の光を上げて神様が出てきました。

 ちょっと拗ねた様に口を尖らせています。



「力貸してやりてぇとは思ってんだけどなぁ、んー」



「すみません……」



「うーん、もっかいやってみっか」



「お願いします!」




 その後も何度か試しますが、どうしてもうまく行きません。

 神様は不思議そうに首を捻っていますが、私は何となく理由が分かりました。


 神様の力をお借りするに当たって私には体力も何もありません。

 力の強い神様の力を受け入れる器としての容量が足りないのでしょう。

 これでは実戦なんて夢のまた夢で、きっと今の私では武器すら扱えません。戦いに出る上でそれは致命的、むしろ出る資格自体がないですよね。


 神様何度も言ってましたもんね、鍛えろって。このまま物ノ怪と対峙したらなす術なく負けてしまうでしょう。

 そうしたら、おじさんと同じように最期は……


 そこまで考えて身震いしました。

 神様はお優しいから、きっとそこが気にかかっているのではないかと思います。

 まだ力を貸してもらう所に行けていないんです、きっと。


 鍛えましょう。

 私を選んだ事を後悔されない様に。




「だーっ!やめだやめ!明日また試そうぜ」



 痺れを切らした神様が拗ねて依り代に戻るのを見送ってから髪を高い位置でひとつに結びます。

 手始めにランニングでもしてみましょうかね。



「お母さん……少し走ってきます」



 お母さんの部屋に声をかけますが返事がありません。

 昨日の騒動以降お母さんの姿を見ていないので、心配と悲しさが押し寄せますが、立ち止まるわけには行かないのです。



 親不孝者でごめんなさい。心の中で謝ってから走り出しました。














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