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「ここ、ですかね……?」



「……普通だな」



 覚悟を決めて昨日先生に頂いたプリントを見ながら神付きの支部を訪れました。

 なんでしょう、辺りの住宅に溶け込んでいて思ったよりも地味と言いますか、普通といいますか。ここでいいんですよね?



「あらァ、アンタ達も今来たの?」



 色気の有る声に振り向くと胡蝶さんが手を振っていました。

 後ろには城山くんもいます。



「おはよう杉守さん。昨日はごめんね、俺、まだ覚悟は決まらないけどやれるだけ頑張ってみるよ」



「おはようございます。お互い、頑張りましょうね」



 視線を逸らしてぽりぽりと頬をかく城山くんに笑いながら挨拶を交わします。

 視線は合いませんが昨日と比べて強い目に安心します。彼も昨夜いろいろ考えたのでしょう。


 たった1人の同期ですからね、仲良くしてもらいたいです。



「なあ、さっさと行こーぜ」



「あ、そうですね!」



 神様の声かけに姿勢を正して中に入ります。

 ……普通の家、ですね




「すみませーん。俺ら新しい神付きなんですけどー」



 城山くんが中に向かって声を張るとパタパタと可愛らしい足音が近づいてきました。子供の足音の様です。



「いらっしゃーい!わあ!いっせー!いっせー!いけめんとかわいいこが来たよ!いっせー!」



 ちらりと桃色の着物を着た可愛らしい女の子が見えたと思ったら直ぐに踵を返していなくなってしまいました。

 どうしたらいいのか分からず顔を見合わせる私達の元へ今度はしっかりした体格の男の人がやってきました。

 よく見ると先程の女の子が首に手を回し背中にぶら下がっています。



「あらァ、なかなか男前じゃない?」




「よく来たな。城山と杉守だったか、とりあえず中に入ってくれ。」



「はい」



「は、はい」



 中に入ると外観や玄関からは想像もできない、よくドラマで見るようなパソコンやモニターがいっぱい置いてある部屋に案内されました。

 促されて椅子に座ります。



「さて、物ノ怪対策室第9支部によく来てくれた。

 俺は、この支部を任されている藤堂一誠(とうどういっせい)だ。なんでも聞いてくれ、それからこっちの小さいのが俺に付いている神、小鞠(こまり)だ」



「よろしくね、さなちんとけんけん!小鞠は鞠の付喪神だよん!」



 真面目な藤堂さんと楽しそうにはしゃぐ小毬さんのテンションの差に呆気にとられていると城山くんが声を上げました。



「初めまして。ご存知かと思いますが、昨日から神付きになりました城山謙太です。こちらが三味線の付喪神、胡蝶です」



「よろしくねェ」



 へえ、胡蝶さんは三味線の神様だったんですね、色んな神様がいて面白いなぁ。

 ほけーっと見ていると神様に後ろからつつかれました。



「ほら、早苗」



「あっ、すみません!同じく神付きになりました杉守早苗と申します!」




「俺は、こいつに付いてる木の付喪神、樹ノ神だ、樹でいい。」




 神様の言葉に藤堂さんは目を見開いて固まってしまいました。

 どうしたんでしょう?木の神様って珍しいのでしょうか?



「え、お兄さん木の神なの?すごーい!」



「うわ!飛びついてくんなよ!」



「驚いたな、五行の神に会えるとは……」



「五行……?」



「火、水、土、金、それから木。これらの力を持つ付喪神は、小鞠達の様な物に宿った付喪神よりも強い力を持つとされているんだ。

 大切にされて生まれた神に比べて契約したがらない神が殆どだと聞いていたが、そうか……」




 そ、そんなにすごい神様だったんですね……

 神様を見ると、いつの間にかそばに行っていた小鞠さんの頭を押さえつけて楽しそうに笑っています。

 ちょ、ちょっと神様、やめてあげて下さいよ。




「うちの支部に強い戦力が増えたんだ、喜ばしい事だな。

 城山、杉守。2人ともこれから宜しく頼む。」



 深々と頭を下げる藤堂さんに私達も慌てて頭を下げます。



「こちらこそ」



「よろしくお願い致します!」



 そんな私達を見て藤堂さんは優しく笑ってくれました。

 見た目は強面ですが凄く優しそう、良かった。




「今日は来ていないがこの支部は後2人神付きがいるんだ。1人はお前らと歳が近いから仲良くやってくれ、もう1人は……まあ、会えばわかるだろう……」



 渋い顔になった藤堂さんに疑問符を浮かべながら城山くんと顔を見合わせます。

 なんでしょう?



「さて、説明に入ろう。

 神付きの仕事は大きく分けて3つだ。


 一つ、街の見回り、要人の護衛

 二つ、物ノ怪が関係していそうな事件の調査

 三つ、現れた物ノ怪を祓う


 今は女子高生が連続で行方不明になっている事件を調査している」



「やっぱり物ノ怪の仕業なんですか?」



「いや、まだわからんがその線が濃厚だ。

 警視庁と情報を共有しながら調査を進めている。お前らも調査に参加してもらいたい所だが……」




 メモを取りながら話を聞いていると、藤堂さんがおもむろに立ち上がりました。



「藤堂さん?」



「お前らには拝受はいじゅを済ませてもらわないとな、よく見ておけよ。小鞠!」



 藤堂さんが小鞠さんを呼ぶと神様の手から抜け出して藤堂さんの指に光るガラス玉に戻ってしまいました。

 小鞠さんの依り代は指輪の様です。



「拝受とは神に力を授けて貰う事だ。


 小鞠、力を貸してくれ」



 藤堂さんが呟くと指輪から桃色の光が溢れて藤堂さんの手の中に鎖が現れました。

 鎖の先を辿ると床に大きな鉄の玉が転がっています。



「神気を使ってそれぞれの神の特性にあった武器を具現化するんだ。

 これが無いと物ノ怪とは戦えないからな。」




 す、凄い……

 これが神様の力。



「神が心から力を貸してもいいと思わないと拝受はなされないんだ。早く認めて貰えるように努力する事だな。


 ちなみにもう一つだけ物ノ怪と戦う方法がある。オススメはしないが……纏いという方法だ。」



「纏い、ですか?」



「そうだ、神に身体を明け渡して戦ってもらうんだ。本人の身体能力は無視して神の能力をフルで使えるが、反動で暫くは筋肉痛に苦しむことになるぞ」



 苦笑しながらそう言うと藤堂さんは拝受を解いて鉄球を消しました。



「拝受してもらえたら現場に入ってもらう


 今日は以上だ、明日からは毎日学校帰りに寄ってくれ。緊急の呼び出しの際は電話するから必ず出るように」



「はい!」









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