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「はちじゅういち、はちじゅうに……」



 物ノ怪と対峙したあの日から2週間、特に目撃情報もなく、私達神付きは待機命令が出されています。

 折角の時間を無駄にしてはならないと、現在支部の中にある剣道場で、神様の監督の元ひたすらに特訓の毎日です。

 そういえば城山くん達は鏢の使い方を習いに隣町に行ってるみたいですね。



 掛け声に合わせて竹刀を振り下ろします。

 正直そろそろ握力が限界を迎えているので竹刀がすっぽ抜けてしまうかも知れません……



「早苗。百までいったら少し休憩していいから集中しろ、ペース落ちてるぞ!」



 神様の声に頷きながら必死に腕を動かします。

 もっもう、限界です……!!




「きゅうじゅうきゅ、ひゃくっ……!」



 ラストのひと振りが終わった瞬間に竹刀を投げ出し床に座り込みました。道場にカランと竹刀の落ちた音が響きます。

 やっぱり2セット目はきついですね。あああ、床が冷たくて気持ちいです……



「お疲れ。結構頑張ったんじゃねーの?」



 神様はわざわざしゃがみこむと、へばっている私に目線を合わせ、頭をひと撫でしてくれました。



「あ、ありがと、ございます……」



 息も絶え絶えにお礼をすると、満足気に笑って落ちている竹刀を取りに行ってしまいました。

 あの日以来ずっとこんな感じです。

 拝受して頂いてからぐっと距離が縮まって、あ、相棒らしくなってきたんじゃないかと、思ったり……!あ、いや、厚かましいですね!あはは……

 そんな事言う前にもっともっと強くならないと!もう逃げ出さず戦えるように!



「神様!もう1セットお願い、」



「ふたりとも!モニタールームに集合!かりんときょうちゃん達が帰ってきたよお!」



 離れた位置にいた神様に話しかけようとすると入口から小鞠ちゃんの大きな声が響いて来ました。

 聞き覚えのない名前でしたが、恐らく藤堂さんが言っていた残りの仲間の事でしょう。



「あー、今日はここまでだな。行くぞ早苗」



「はい!」



 入口で待っている神様の元へ駆け寄り一緒にモニタールームに向かいます。

 カリンさんにキョウコさん……どんな方達何でしょう。仲良くなれるといいな。










「さなちん!こっちこっち!」



 モニタールームに入ると小鞠ちゃんが声をかけてくれました。

 その横では、癖のあるショートカットの女の子と背の高い美人さんが手招きしています。

 後ろにいる男性が神様でしょうか?



「今年の新人さんね?はじめまして、山内鏡子(やまうちきょうこ)です。仲良くしてね」



「あたしは凪原夏鈴(なぎはらかりん)。よろしく!」



 うっ目が……!眩しい!

 笑う鏡子さんはすらっとしていてモデルさんみたいですし、夏鈴さんも意思の強そうな大きなつり目がとても可愛らしくて……

 それにしても、2人ともすごくいい人そうで安心しました。

 あれ、そういえば、前に藤堂さんの言っていた変わり者って鏡子さんの事でしょうか?そうは見えませんけど……



「杉守早苗です。こ、こちらこそよろしくお願いします!こちらにいるのが私の神様です」



「樹の神、木の神だ。よろしくな」



「こちらこそ、私は夏鈴と契約した日方(ひかた)と申します。風鈴の付喪神です」



「ボクは鏡の付喪神。きょうと契約してる。ヤタでいいよ、よろしく」



 青髪で物腰の柔らかい背の高い男性が日方さん、白色の長い前髪で目元が隠れている線の細い男の子がヤタさん。覚えましたよー。

 胡蝶さんもそうですが、一言で神様と言っても皆さん個性的ですね。


 まじまじと御三方を見ていると鏡子さん達が驚いた表情を浮かべています。

 どうしたんでしょうか?



「木の神……って事は、貴方五行の神なのね」



「初めて見た……以外と普通……」



「こら、夏鈴。失礼ですよ。すみません樹殿……」



「あー、ごめんごめん!」



 身を乗り出して神様を見る夏鈴さんを日方さんが窘めています。

 やっぱり五行の神様って珍しいんですね。



「んや、いいよ別に。気にしてねぇから」



 その言葉通り神様は特に気を悪くした風でもなく楽しそうにしています。

 やっぱり同性の仲間は心強いですよね。

 そういえば夏鈴さんの制服、私の家の近くにあるスポーツで有名な学校のものだった気がします。後で聞いてみましょう、もしかしたら家も近いかも知れません。





「お、帰ってきたか」



 後ろから聞こえた声に振り返ると藤堂さんが書類を持って入ってきました。



「ほれ、いなかった間の事件まとめておいたから目を通しておけよ」



「別にいいわよ。大して状況は変わらないんでしょう?一誠は真面目すぎよ」



「うるさい、情報のある無しで生死が決まったりするんだ。見ておかないと困るのはお前だぞ、鏡也」



「きょうちゃんはめんどくさがりだもんねえ」



 藤堂さんは嫌そうに顔を歪める鏡子さんに、持っていた書類を押し付けていま……んん?

 鏡"也"さん……?



「きょう、ボクも一緒に見るからさ」



「…………はあ、分かったわよ」




 押し切られて不機嫌そうな横顔も凄く綺麗ですが……えーと、まさか?



「あのう……」



「……いや、ちょっとまて……鏡也って誰だ?」



 恐る恐る声を出すと神様が被せてきました。

 こくこくと無言で頷くと夏鈴さんと小鞠ちゃんがにやーっと笑みを浮かべて擦り寄って来ました。



「やっぱ気づかないよね!」



「ごぎょーの神様でもわからないのかぁ!」



「鏡子さんは、」


「きょうちゃんは、」



「「男の人なんだよ!」」



 ……え、えええええ!

 見えない!こんなに美人さんが!男性?!

 ちょっ!私、すべてにおいて負けてますよ?!

 えっへんと胸を張る2人に、呆気に取られていると神様が大声でリアクションをとっていました。神様、そんな大きな声出せたんですね……



「まじかよ!見えねぇ!!……って事は……ヤタ、お前……」



「……ああ、うん。ボクは女神って事になるね」



「うそだろ!」



 そ、そうか!基本的に神付きと神様は男女ペアだからヤタさんも……!



「ふふ、ごめんなさいね。私本名は鏡也っていうの。これでもちゃんと男の子だから。お化粧と服だけちょっと、ね?」



 くすくすと笑う鏡夜さんは、男の人には全く見えなくて空いた口がふさがりません……



「あの、鏡也さ……」



 グシャッ



 話しかけようとした瞬間鏡也さんの手の中の書類がぐしゃぐしゃになってしまいました。

 だだだダメなんですね……!



「その名前では、呼ばないでね?」



 笑っているはずなのに威圧感のある声に、さっと血の気が引いてしまいます。


 と、藤堂さん……疑ってすみません……やっと理解できました……


















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