物語はこの日から始まっていた-1-
「今日は何して遊ぶ?」
ある少女が2人の男女に問いかけた。
見たところ小学3、4年生くらいだ。
「秘密基地でゲームでもしようぜ!」
そう答えたのは、少学3年生の男子、神川遊牙だ。
「えー、またげーむぅ?」
この見るからに頭が抜けていそうな返事をしているのは、元気で活発そうな少女の高坂美晴。
そして、先程この2人に問いかけた少女は美晴の妹の高坂伊織だ。伊織と美晴は双子の姉妹である。
「きょうは、学校の近くの山でむしとりでもしよーよー」と美晴が話すと、
「お姉ちゃん山にいって怪我でもしたらどうするの」と伊織が返す。
伊織は美晴と違い大人しめな子でどちらかというと清楚系な女の子である。
「虫取りかー。久々にカブトムシでも取りに行こうかな」
そんなたわいもない日常を過ごしていた。
時は流れ9年後
遊牙は高校2年生へとなっていた。ルックスは、悪くは無かったが彼女が出来たことは一度も無かった。しかし、友達は多く充実した高校生ライフをおくっていた。
“だが、そこに美晴と伊織の姿は無い”
中学生の夏休み
それはごく普通の日の事だった。
遊牙は、美晴と伊織に呼び出された。そして、美晴と伊織は、真剣な表情で話し始めた。
「遊ちゃんは......」と伊織が、続いて美晴が、「美晴と伊織......」
「「どっちが好きなの」」
と。
遊牙は、突然の事で戸惑いの顔を浮かべていた。
静寂の時間が流れている。まるで、時間が止まっているかのように。
そして、その静寂を切り裂くように伊織が話し始める
「遊ちゃん、明日、子供の頃遊んだ秘密基地に6時に来て。その時、答えを聞かせて」
遊牙はそれに「分かった」と答えた。
次の日、美晴と伊織は変わらず遊牙に接してきた。
いつも通り、2人で遊牙の家に迎えにきて。
いつも通り、休み時間を過ごして。
そして、いつも通り学校が終わった。
しかし、遊牙は放課後に先生に頼まれごとをして、それを引き受けてしまった。
たかがそんなことが、3人の運命を大きく変えることに遊牙は知らなかった。