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屋上で

授業中に現れた幽霊。

その幽霊と昼休みに屋上で会う約束してしまった紅葉は、屋上に足を運ぶのだった

 授業が終わり、昼休みになってしまった。

 先ほどの幽霊少女の所へ向かわないといけない。

 憂鬱で憂鬱でたまらなかった。

 だって、幽霊の所に向かうなんて怖くて仕方ない。

 しかし、僕はコンビニ弁当を持参で屋上に向かっていた。

 弁当を持参しているのは、決して高校生活で初の誰かと一緒に昼ご飯が嬉しいのではない。

 ただ、時間を無駄に過ごしたくないからだ。

 心拍数が少し上がっているのは、幽霊少女が可愛かったからでもない。

 そう、呪われるのが怖いからだ。

 それ以外に他意はない……と思う。

「あれ?」

 紅葉は屋上への扉の前で立ち止まった。

 屋上の扉には進入禁止の貼り紙が貼ってあった。

 2日前までは貼っていなかったが……

 あっ~、僕が落ちからか

 ガチャガチャとドアノブを回してみる。

 開かない……

 物理的に入れないなら仕方ない。

 よっし諦めよう。

 僕にはどうしようもないのだ。

 きっと、幽霊少女も呪いは勘弁してくれるだろう。

 そう思い僕は階段を降りようとした。

 瞬間、扉から幽霊少女の顔がにゅっと出現した。

『こら、こら、どこに行くんですか! 待ち合わせ場所はここですよ』

 幽霊少女がドアをすり抜け手招きをしている。

「いや、だって屋上に入れなかったし……」

『そうでしたね。あなたは幽霊じゃないですもんね』

 そう言うと、幽霊少女は顔を引っ込めた。

 諦めたかと僕が思っていると、カチャンと鍵の開く音が聞こえた。

「……」

 ゆっくりと扉が開く。

『さぁ、どうぞ』

 満面の笑みで迎えられてしまった。

 退路はない。

 諦めた紅葉は屋上に足を踏み入れたのだった。


 先に言っておこう。

 僕に対人スキルは一切ない。

 一日で学校で話すことは、授業中に先生に当てられた時のみである。

 相手が幽霊になった所で変わりはない。

 だって、人の形をしているのだから

「……」

 紅葉は幽霊少女が横に座っている状況の中、コンビニ弁当を無言で食べていた。

 最初は幽霊というだけで怖いものだと思っていたが、横に座る少女から恐怖を感じなくなっていた。

 それどころか、昼間に出る幽霊って間抜けな気までしていた。

 それに可愛い女の子が横にいる状況で昼ご飯を食べる。

 それだけで訳得な気までしていた。 

『あの~、聞いてます? 聞いてないでしょ。聞いてくれないと呪いますよ』

「あ、うん。ごめん。ごめん。で? なんだっけ、お腹空いたんだっけ?」

 普段、他人が話している会話を聞いているだけのせいか、幽霊少女が自分に話しかけているんだということを完全に忘れていた。

 適当にごまかすつもりで、最後の唐揚げを箸で掴み幽霊少女の前に出す。

 ムッと頬を膨らませ、幽霊少女が箸に挟まれた最後の唐揚げを……食べた。

「……えっ⁈」

『うん。コンビニの唐揚げもレベルが上がりましたね』

「最後の一個だったのに……」

 肩を落とす紅葉を見て幽霊少女は

『話を聞いてくれなかった呪いですよ。それに私にくれたんでしょ?』

「いや、幽霊が食べれると思わなかったし」

『食べれますよ!』

 言いきられてしまった。

「そっ、そうなんだ」

『そうですよ。その気になれば物にも触れますし、食事だってできます』

 屋上の鍵を開けたんだった。

「へぇ~、なら、これも飲む?」

 紅葉が飲みかけのお茶を渡す。

『えっ、いいんですか! では、遠慮せずいただきます』

 ゴクゴクと半透明な喉を鳴らし、半分ほど残っていたお茶を飲みほした。

 幽霊相手でも関節キスは有効なんだろうか?

「……いい飲みっぷりで」

『久々のお茶は美味しいですね』

「それは良かった……」

 ニコニコと笑う少女は可愛かった。

『そういえば、あなたってよく幽霊を見るんですか?』

 幽霊少女は首を傾げる。

「初めて見るけど?」

 紅葉も首を傾げる。

『その割には、落ち着いてますよね』

「そうかな? でも、教室で見た時はビビったよ」

『あれで、ビビってたんですね。でも、今はビビってないですよね』

 ジーっと幽霊少女が紅葉を見つめる。

「それは……君がそんなに怖くないし、それに昼間に会う幽霊ってなんか間抜けぽくて」

『つまり、私が間抜けってことですか?』

「……」

 そうだけどとは言いづらい。

『なんで、黙り込むんですかね⁈』

 幽霊少女が睨んでくる。

 まったく怖くないけど……

『ところで、私ですね。あなたに相談があるんですよ』

「僕に?」

『そうです』

「相談って何?」

『それはですね……』

 幽霊少女は何かを躊躇している。

「もしかして、成仏したいとか?」

『もっ、なんで先に言っちゃうんですか!』

 幽霊少女は手をブンブンと振り回し怒りを表現する。

「いや、幽霊ならそうかなと思ったし……」

『だからって、先に言わないでくださいよ』

 頬を膨らませてぷいっとそっぽを向く。

「ごめんごめん、いいよ。手伝うよ」

『……いいんですか? あっさり引き受けてくれますね』

「どうせ暇だし、何も出来ないかもしれないけど」

『ありがとうございます』

 幽霊少女が深々と頭を下げた。

「自己紹介しとくね。僕は神崎紅葉。紅葉って呼んでいいよ」

『はい。私は森崎千世です。千世でいいですよ。これからよろしくお願いします』

 千世が右手を前に出す。

「あぁ」

 僕は千世と握手をしながら、少しだけ楽しい気分になっていた。


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