俺は楽して生きたいんだ!
俺は普通のサラリーマンだ。
いや30過ぎても、なんの役職も無く給料も手取りで20万切るぐらいだから
普通よりも下かもしれない。。。
残業も月に40時間以上しているのに・・・
特に仕事でミスをするわけでもない。
むしろ仕事が早く色々とできる方だろう。
おかげで他より多めに仕事が割り振られ残業が増えていく状態だ。
なのに!そんななのに俺の給料は20万を切る。
同期の奴や何人かの後輩は、上司の扱いが上手く、主任や係長になっている。
また会社役員の子供は、入社した段階で俺より給料が多いのだ。
あ~あ。
楽して生活できないかな~
そんなことを俺は毎日、考えていた。
ある日、大学時代の友人から
「そんななら、いっそ政治家にでもなれば」と言われた。
友人としては冗談だったのだろう。
しかし俺は、そうか!政治家か!と思ったのである。
奴らは大した事してないのに金だけは持ってるからな。
よし!俺も政治家になろう!
そうして俺は政治家になるべく動き出した。
◇◇◇◇◇
「先輩、結局政治家になって何するんすか?」
こいつは会社の後輩だ。
いや後輩だっただな。
俺が政治家になるため会社を辞めたら、何故かついて来ると言うので
色々とサポートしてもらっている。
本人曰く、自分が政治家になるよりも秘書とかで楽したいとの事だ。
「何をするかって?別に何もしないさ」
「え?そんなんで良いんすか?」
「いいか。良く考えてみろ。
政治家になるのは楽する為だ。わざわざ自分から大変なことはしたくないだろう」
「いや、まぁそれはそうなんすが・・・」
「それにだ。普通の人は政治家が何やってるかなんて大して関心ないだろう。
お前、政治家が何やってるか気にした事あるか?
もしくは政治家のやってる事に関わったりしたとか?」
「あ~確かに全くないっすね」
「そうだろそうだろ。
政治家が何やってるかなんて大抵の人はどうでもいいんだ。
むしろ政治家なんて居なくても問題ないと思うぞ。
まぁ逆に政治家は税金を巻き上げる国民がいないと困るがな」
「なんとなくわかるっすけど、政治家になろうって人がそんなんで良いんすか?」
「大丈夫。大丈夫」
「とりあえず出馬する人がの少なそうな地域で
過去に当選した人が高齢者だった所に引っ越すぞ。
今の政治家のやり方で町に活力がないを指摘して
俺の若い力で地元の活性に力をいれるってアピールすれば
当選しやすくなりそうだしな」
◇◇◇◇◇
街頭演説
「今の政治は駄目だ!
我々の税金を無駄に使っている!
それに自分達が法律であるかのように好き勝手している!
彼らは国民の代表であって、法律を自由にしていいわけではない!
一体何のための政治家なのか!みなさん、今一度良く考えて欲しい!」
俺は適当に今の政治を批判していく。
「これからは高齢者も増えていくだろう。
そういった対策が重要になってきます。
私は、それらに力を入れていきたい!
まだ若い私の視点で、色々と変えて行かなければなりません。
利用するのは高齢者ですが、働くのは若い人達です!
若者が安心して働けるようにしなければ、サービス自体を提供できません」
「働いている人達!
今の社会は収入に差がありすぎると思いませんか?
同じ会社で、同じ仕事をしているのに大きな差がある。
平社員と役員とでは、給料に100倍近い差がある。
これらを放置しておけば、今後より一層、格差が広まるでしょう!
それらについても改善にも私は力を入れていきたい!」
「高齢化と雇用制度の見直し、これが必要なのです。
みなさんの一票が私の力になります!
ぜひとも私に一票、お願いします」
俺は実際に何をするとは言わず、力を入れるとか改善したいなどと
あいまいな事を並べて演説していく。
◇◇◇◇◇
演説終わって、事務所内で
「いや~何をするとか具体的に言わなくても意外と何とかなるもんすね。先輩」
「まぁ今の政治を批判して、どうしたいか言うだけだからな。
具体的には何をするとか言わなくても問題ないな」
「でも実際に当選したとして、言った事が改善できなかったらどうするんすか?
色々と言われないっすかね?」
「別に大丈夫だろ。
『力を入れて取り組んできたが、後一歩及ばなかった』といえば良いんだよ。
実際に出来なかったからといって罰則があるわけじゃないからな」
「他にも突発的に何か問題とか起こったらどうするんすか?」
「それも大した事無い。
『想定外の事態だった』とか『予測不可能だった』とか言ってればいいんだよ。
一般の会社だったら偉い人が責任を取らなきゃいけないが、政治家が責任なんて取らないからな。
まぁ責任取らないのは天下りの役員とかも一緒だな」
「まぁ何はともあれ。当選するといいっすね」
◇◇◇◇◇
選挙開票後
「ははは~つい俺は政治家になったぞ!
これで楽な生活ができるな」
「先輩、おめでとうございます。
これでも僕も先輩の秘書として楽できるっすね」
俺達はギリギリではあったが、当選する事ができた。
その後、俺は言葉どおり楽な生活を送っている。
「先輩、高齢化社会と雇用制度についてなんすが・・・」
「ああ、適当に有識者を集めて意見をまとめてさせといてくれ。
必要なら委員会でも作って、予算を割り振っとけばいいだろ」
仕事は他人に丸投げだ。ああ政治家って素晴らしい!
そんな感じで政治家生活だが、まぁ普通にサラリーマンやってた時の20倍くらいの給料だ。
秘書は認められているから、後輩の給料は俺が出す必要もない。
そして、あっという間に任期が終わる。
「先輩、どうしましょう。
前回適当にやってた所為で、今回は落選っすよ~」
そう俺は2期連続の当選は出来なかったのだ。。。
「まぁ政治家やって大量に金を稼いだし、ある程度は持つだろ。
その間に、また楽して生活できる事を探すしかないな」
俺は今日も楽して生活できるよう色々と考えるのだった。