その1
時間は昨日の午後までさかのぼる。
フォディストの村での任務を終え、帰ってきた四人を彼は待っていたのである。
「・・・誰、ですか?」
そうロジーナが尋ねると同時に、スイリスが身を乗り出した。
「アンディ!!」
「やあ、イル。久しぶり」
それに続いて各々が話を始める。
「白を離れても大丈夫なのか?」
「シュールは心配性だね」
「いいけど、連絡ぐらい寄こして下さいよ」
「やだなぁ、サプライズじゃないか」
会話を聞き、ロジーナは彼が蒼藍の一人なのだとすぐさま判断する。彼女はその場で頭を深々と下げて自己紹介をする。
「は、初めまして!ロジーナ・エヴァンスです」
「ああ、初めまして。自己紹介は中に入ってから続けようか」
「あ、はい!」
そういって全員が中に入り、扉が閉まる。ずっと扉を押さえてくれていたアンディと呼ばれたその人は、くるりと向きを変えた。そして目を輝かせてロジーナを見てくる。
「え、何?この子が新しい子なの?可愛い子じゃなぁい!」
いきなり変化した言葉遣いにロジーナは目を丸くした。動きが女性的ということもないし、先ほどと何も変わりはしない。ただ、言葉遣いだけが女性的になった。
ロジーナの方へ歩いてきた男は、触っていいのか悪いのか判別がつかないようで、彼女から数センチの距離を保ちながら、彼女の頭から肩までをなぞる。それから顔を近づけて、ロジーナを覗き込んできた。
「ちっちゃいわねぇ!綺麗な金髪碧眼でお人形さん見たいだわぁ・・・!」
困惑のあまり、ロジーナはビルを見た。するとすぐに解ってくれたようで、高身長の彼の襟元をグイと後ろに引っ張って助けてくれる。そのまま開放せずに続けて言う。
「自己紹介くらい言われなくてもして下さいよ」
「あら、そうだったわね」
彼は一度しゃがんで首に引っかけられていたビルの指を外すと、再び立ちあがって手を差し伸べてきた。