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その1

ロジーナが三つ目のサンドウィッチを手に取った時だった。


「よっし!準備オッケー、アンディやろうぜ!」


 勢いよく立ちあがったイルは、アンディの返事も待たずにどこか駆けていった。シュールはそれを見て、何も言わずに手持ちの皿にサンドウィッチをいくつか乗せて後に続いていく。

 ビルとアンディはお互い顔を見合わせると、困った人ですねぇと苦笑いをした。ビルもサンドウィッチの入った大皿の一つを丸々抱えると、二人に続く。


「ほんと、仕方ないわねぇ。ビルまでああなんだもの」

「えー・・・っと?」

「ロジーナちゃんも裏庭に行きましょ」

「あの、何が?」

「ああ、『約束』よ」


 アンディが来てから、イルが繰り返し言っていたことだ。育ての親との再会で、イルとの約束だと言うのに、なぜ残りの二人もあんな楽しそうに裏庭に向かっていたのか、ロジーナには理解できない。けれども一人残されても解らないままなので、先に行った二人と同じようにサンドウィッチを手持ちの皿に乗せて、アンディについて裏庭に向かうことにした。


「あの、約束って何なんですか?」と彼女が尋ねると、

「ああ・・・」と約束についての説明を忘れていたことに、アンディがやっと気付いた。けれども彼は細かい説明などせずに、

「来れば解るわよ」としか教えてくれなかった。


 そして裏庭にいくと、そこには異常な光景があった。

 妙に手入れされた平地になっており。白い枠線とそのスペースを半分に区切る中央線が見える。イメージとして、ドッヂボールのコートに近いだろうか?しかしこんなところでドッヂボールをするわけもない。片方にはイルがスタンバイしており、ロジーナに「コートの外にいてね」と言ったアンディがその反対側に入っていく。

 近くにいたビルに、ロジーナはこそっと尋ねた。


「あの・・・一体これから何が・・・?」

「ああ、言ってませんでしたっけ?」

「聞いてません」


 またかとあきれた様子を誤魔化すように、サンドウィッチを頬張る。


「練習試合ですよ」

「ふえっ?!練習試合?!!」


 ロジーナが驚くのも当然だ。中が見られないように目隠しとして高めの塀と立派な樹木が並んでいるとはいえ、魔法合戦に耐えられるほどの物とは思えない。ロジーナのような一般的な魔道士同士なら問題ないだろうが、彼らは蒼藍だ。前回の仕事でイルの魔法の威力は彼女でも知っている。状況から推察するに、おそらくアンディはそれ以上の能力を持っていると思われる。そんな二人が「練習試合」だろうとぶつかりあえば、相当な破壊力だろう。

 ロジーナの懸念も気にせず、アンディがイルに笑いかけた。


「さあ、イル。準備は良いかしら?」

「おう!早くやろうぜ!」


 イルも満面の笑みでガッツポーズをする。周りへの心配など全くないようだ。

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