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蒼藍2~水の魔道士現る~  作者: 環田 諷
白秋院の蒼藍
11/39

その10

 が、肝心のベッドが見つからない。雪に完全に埋まってしまっているようで、タンスやらの背の高い家具のみが顔を出している。


「イルさーん!どこですかー?」


 名前を呼びながら進んでいく。けれども全く返信がない。もはやこの寒さの中で凍死したのではないかと不安に駆られたが、さすがにそこまで馬鹿ではないだろう。雪に思い切り脚を取られた。そのまま前に倒れこむ。


「きゃっ」

「ぐえっ」


 どうやらもともとベッドは使わない主義のようだ。床に寝転がっていたイルの上にダイブしてしまった。彼女の頭が勢いよくイルの肺の上にぶつかったため、彼はゲホゲホと咳こんだ。最悪の目覚めだ。


「しゅ、しゅいまひぇんっ」


 雪に突っ込んだため、顔が冷えて呂律がうまく回らない。目も大して開かないので、シパシパと開閉したが、視力は回復しなかった。

 イルは起きるのは遅いが、寝起きは良いらしい。上体を起こすと、ロジーナが転んだ時に被った雪をパンパンと払い落してくれた。自分の髪についた雪もぱさぱさと落とす。


「あー・・・びっくりした!どうしたんだよ新人?」

「あの、あしゃごはん・・・」

「は?朝ご飯?」


 ぽかんとした顔をされた。またシュールのように拒絶されてはいけないと思い、慌ててアンディの名前を出す。


「アンディしゃ・・・アンディさんが、作ってくれているので」


 するとイルの顔がすぐ嬉しそうな顔になった。やっと視力があったと思ったところで、ロジーナは思わず何とも言えない声を上げた。


「~~~~~~~~~ッ!!」


 その大きな声に、イルはたまらず耳をふさぐ。


「なんだよどうしたんだよ!」

「服!!服着て下さい!!」


 この雪の中、イルはまさかの裸だった。流石に下は履いているのだろうが、雪で見えない限り、なかなか恐ろしいところがある。背中を向けたロジーナに、イルは不思議そうな様子で返した。


「別にいいじゃねぇか」

「良くないですよ!」


 ロジーナが必死に訴えるも全く気にも留めず、大欠伸付きで頭をぼりぼりと掻いた。


「んじゃ消すか」

「へ?」


 すると、一瞬にして周りに広がっていた雪が消えた。消えたからと言って寒さは無くならなければ、現れた床も白の塩化ビニル製でありあまり変わった印象は無い。ただ、ロジーナが余計後ろを向くのが怖くなっただけである。

 ともかくもうこれ以上いる必要はない。そのため、彼女はサッと立ち上がると彼の方を見ずに「と、とにかく伝えたんで!」と言って慌てて部屋を後にした。

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