窓から眺める景色
休み時間、体育館に向かう後姿。
何人かで連れ立って、体育館に入っていく。
人ごみに埋もれているときでさえ
あなたの姿は見つけられる。
ガラス一枚隔てた距離にいるような寂しさ。
窓の向こうに広がる、私の関与できない世界に、憧れと嫌悪。
君の周りとは全然違うから、君との間にあるガラス一枚に世界の隔絶を知る
「高梨圭さん、俺と付き合ってください」
昼休みの体育館裏で、
人影なんてない絶好の告白スポットで。
顔を真っ赤にして私に向かってる知らない人。
どこに?
なんてお決まりのボケをするタイミングを逃してしまった。
だって、相手の子が緊張で震えてるのが分かったから。
私なんかを好きって言ってくれるのはすごく嬉しいけど、困った。
告白なんて受けたの初めてです。
お断りってどうすればいいの?
「高校の入学式で初めて会った時から好きでした。でも、君の周りには会長とか八代がいて、声かけにくくて……」
フリーズして動けない私に彼は一歩近づく。
「高梨さん?」
どうしよう、動けない。
「あの、急がなくていいんだ、少し考えてくれたら…」
彼の手が私に向かって伸びた。
「さっさと断れ」
彼と私の間にスッと入ってきた後ろ姿に、情けないけど、安心してしまった。
見慣れた背中、聞きなれた声。
困ったときはこの背中の後ろにいれば安心できた。
「八代……?」
やっと動けるようになった手足を動かして、目の前の背中に張り付いた。
「圭、ちゃんとはっきり言え」
唯斗の声はいつも通り、ちょっととげとげ。
でもそれに安心を覚える。
「ご、ごめんなさい……」
彼は苦笑したようだ。
「うん、なんとなくわかってたから。ダメもとだったんだ」
彼が去って行ったあと唯斗が振り向いて乱暴に私の頬を拭う。
「泣くな」
そんなこと言ったって、どんどん流れてくるんです。
やや困ったように眉間にしわを寄せて、頭を撫でられた。
「びっくり……した。告白なんて思ってなかった」
大きなため息。頭をなでる手に力がこもった。
「さっき、教室からお前らが体育館のほうに行くのが見えた」
一応見に来てみたらお前固まって動かねえし。
害のなさそうなやつでよかったよ。
唯斗がぶつぶつ文句は言ってたけど、わざわざ来てくれたことが嬉しい。
「ありがと」
小さな声になってしまってけど、ちゃんと聞こえたみたいで、唯斗も少し苦笑した。