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休んじゃえばよかった

嫌な予感がするって、思ってたのに……






「圭、おまたせ」


放課後、爽やかな笑顔で教室に迎えに来た兄は、入口からこっそりと手招きした。


「なにしてんの、お兄ちゃん」


背後を気にしつつ、私の右手をつかんで歩き出した。


「ねえ、今日は生徒会良いの?」


「大丈夫。次期生徒会長もしっかり働いてくれてるからね」


「まだ、決まってません。ってかなに帰ろうとしてんすか」

ぐいっ

「いっ…痛い、お兄ちゃんストップ!!」

「圭、ごめん!おい唯斗、圭の手を離せ」

がっちりとつかんで離れない両手と引っ張り合いが痛い。

ついでに周りの目も痛い。

「ってかどっちも離せ!痛い!」

「「あ、ごめん」」

急に離された両手にバランスが崩れて、少しよろめいてしまった。

「っと、お兄ちゃん、お仕事だから行きなさい」

「いかない、だって今日は圭と買い物がしたい」

「終わったら行ってあげるから」

「しょうがない、じゃあ行くか……おい、30分で終わらせるぞ」

「お前は人質、一緒に来い。お前が居ればやるきだすから」

「嫌です!教室で待ってる」

いやだって言ってるのに、拉致されました。



3階建て校舎の最上階。結構日当りのいい生徒会室。

その中でも奥のところにある休憩場所は格好のお昼寝スッポトだ。

ここのソファ、座り心地最高です。

嫌々ながらも生徒会室に連れてこられて、はや1時間。

メールの返信をしたり、携帯の通販サイトめぐりとかしてるうちに眠くなってきた。

衝立を挟んで向こうからは兄が怒涛の勢いで仕事してる。

どんだけ仕事ため込んでたんだ。

ちゃんと仕事してるか衝立から覗き込むと、普段は見せない真面目な顔でお仕事してた。

あの調子じゃ、私がいるの忘れてるんじゃない?

私が見てるのに気づいて、一気に顔が崩れた。

「……」

そっと顔を引っ込める。

「圭も大変ねえ」

「千沙ちゃん、あれ何とかしてください」

「無理よ。光哉が一番好きなのは圭なんだもん」

外国のお姫様みたいな美人さん。

実際イギリス人のおじいちゃんがいるの。すごくカッコイイの。

家の隣のお家に住んでる幼馴染です。

そんな工藤千沙ちゃん。兄の彼女さんです。

「愛は1番にもらってるから、好きは圭が1番にもらえばいい」

ちょっとよくわからない理屈は千沙ちゃんがずっと言ってること。

千沙ちゃんのことも大好きなんだけど、よくわかりません。

多分、兄の今日の頼みごとって千沙ちゃんがらみなんだろうなと思うんだ。

だって来週お付き合い記念日だもん。

兄はうきうきしてるよ。

キモいくらいに。

「圭、今度泊りにおいで。あんた、なんか悩んでるでしょ」

「ぅ……」

さすがお姉さま。

「行かせてください、姉さま」

「よしよし、圭も可愛そうにねえ、周り変なのばっかりで」

変なのに千沙ちゃんもカウントしてしまってることは絶対言えない……





結局帰りは遅くなって、私、兄、千沙ちゃん、…唯斗と4人で帰った。

でもなあ、私以外の3人目立つんですよ。

周りの目が痛いです。

釣り合ってないのわかってます。

歩く順番は前に兄と千沙ちゃんが並んでて、唯斗がその後ろ。

私はもう少し後ろ。

だって目立ちたくないし。

唯斗が時々振り返って眉をひそめるたびに曖昧に微笑んでみる。

大丈夫、ちゃんとついて行ってますよ。

苛立ったように、手を引っ張られて、隣に並ばされた。



あんまりにも目立つあいつの傍は眩しくて。

うっかり近づけば目がくらんで。

自分の小ささに愕然とする。

隣の指定席に並ぶ権利は私にはないんだもの。

手を離す勇気も、足を止める勇気もなくて。

眩しいキラキラの雰囲気に胸が押しつぶされそう。

身分不相応にも隣に並ぶことを望みそうになってしまうから、こんな展開になる前に。

嫌な予感がするって思った時に。


すっぽかしちゃえばよかった……




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