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第7話 嘘
その夜。
太郎は美香にメッセージを送った。
「今日は疲れたから寝る」
真美はそれを横で見ていた。
「優しいね」
「何がですか?」
「ちゃんと連絡するところ」
真美は笑った。
「でもさ」
「それ」
「嘘だよね」
太郎は黙る。
真美はワインを飲み干す。
「もう一杯頼む?」
その夜。
二人は長く話した。
高校の話。
仕事の話。
恋愛の話。
そして帰り道。
真美は言った。
「送ってくれる?」
太郎の車に乗る。
沈黙。
信号が赤になる。
真美はふと太郎を見た。
「太郎くん」
「はい」
「私ね」
真美は静かに言った。
「昔から好きだった」
太郎の心臓が大きく鳴る。
「今も」
その言葉のあと。
沈黙が落ちた。
そして真美は。
ゆっくり太郎の腕に触れた。
それだけ。
キスもしない。
抱きつきもしない。
触れるだけ。
でも。
それで十分だった。
太郎の心は揺れた。




