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第20話:残されたもの
美香は葬儀社を退職することに。
太郎はその背中をずっと見ていた。
もう追いかける資格がないことを知りながら。
一方、美香は葬儀社を辞めていた。
理由は単純だった。
太郎と同じ職場では働けない。
それだけ。
最後の日。
太郎は事務所の廊下で美香を見つけた。
段ボールを持っている。
「辞めるのか?」
「うん」
美香は普通に答えた。
「お疲れ様」
その言葉があまりにも他人行儀で。
太郎の胸が痛んだ。
「美香」
「なに?」
「……ごめん」
美香は少し笑った。
「もういいよ」
その言葉は優しかった。
でも。
そこにはもう何も残っていなかった。
「幸せになって」
美香はそう言って去った。
太郎はその背中を見ていた。
追いかける資格がないことを知りながら。




