第2話 高校の先輩
高校の先輩の真美の美容院に通う太郎。
真美は初めから太郎を狙っていました。
その日、太郎は仕事が終わると車を走らせていた。
向かった先は――
美容室。
「いらっしゃいませ」
柔らかい声がした。
振り向いた女性が、にこっと笑う。
「太郎くん、久しぶり」
真美だった。
長い髪。
大人っぽい雰囲気。
太郎よりひとつ年上。
そして――
高校の先輩。
「先輩、今日予約してました」
「うん、知ってる」
真美は笑った。
「支店長なんでしょ?すごいじゃん」
「いや、たまたまですよ」
「昔からキャプテンだったもんね」
太郎は苦笑した。
高校時代。
太郎は野球部のキャプテンだった。
誰よりも声を出し
誰よりも走り
誰よりも仲間を守る。
そんな男だった。
そして真美は――
当時から、太郎を知っていた。
いや。
ずっと見ていた。
「ねぇ」
真美は太郎の髪を整えながら言う。
「彼女いるんだっけ?」
太郎は少しだけ間を置いた。
「います」
「同い年の子?」
「はい」
「同じ職場?」
「そうです」
真美はふっと笑った。
「そうなんだ」
ハサミが小さく鳴る。
「でもさ」
真美は静かに言った。
「太郎くんって、昔からモテたよね」
「そんなことないですよ」
「あるよ」
真美は鏡越しに太郎を見る。
「私も好きだったし」
太郎の手が止まった。
「……え?」
「高校の時」
真美はさらっと言った。
「言わなかったけど」
その瞬間。
空気が変わった。




