46歳家出しました。
「妻に給料全部渡しているのに、あと15万円家に入れろと言うので、我慢できずに家を飛び出しました。」
このセリフを今まで、TikTok配信で何回言ってきただろうか。
ちょっとした気持ちで家出して、まさかこんなことになるとはあの時は思ってもみなかった。
おそらく2022年10月か、11月だったような気がする。
ちょうど寒くなり始めたころだった。
特別な日ではなかった。
どこにでもある、ありふれた夫婦喧嘩。いつもなら私が口を噤み、嵐が過ぎ去るのを待つはずだった。しかしその日は違った。心の底で、何かが静かに、だが決定的に音を立てて壊れたのだ。
私は何も言わず、ただ財布とスマホだけを掴んで家を出た。
せいぜい数日の頭冷やし。そんな軽い「家出」のつもりだった。
安いビジネスホテルを探し、その日はそこで泊まることにした。
安いビジネスホテルのシングルルーム。汚れた天井が目に入る。
狭いベッドに横たわり、天井を見上げる。誰にも干渉されない、自分だけの時間。
YouTubeの動画を見ながら、私は久々の「自由」を噛み締めていた。
会社員として、夫として、父として、常に規律と向き合ってきた私にとって、この無秩序な孤独は甘美なものに思えた。
次の日、仕事は休みなので、ゆっくり起床し、身支度をした。
身支度といっても、服は昨日家から着てきたものしかない。
私は街を歩き、馴染みの店へ向かった。
注文したのは、大好物のつけ麺。
カウンターに座り、麺が茹で上がるのを待つ間、私は何度もスマホの画面を点灯させた。
通知はない。
家族からの「どこにいるの?」「早く帰ってきて」という言葉を、心のどこかで期待していた自分に気づく。
「家を出てやった」という優越感は、いつの間にか「自分は居なくてもいい存在なのか」という不安にすり替わっていた。
目の前に置かれたつけ麺は、いつも通り艶やかで、湯気が食欲をそそるはずだった。
「寂しくて味分からん。」
あんなに求めていた自由を手に入れたはずなのに、口の中に広がるのは、ただ砂を噛むような寂しさだけだった。
【今回の一訓】
「自由とは、誰からも必要とされない寂しさの裏返しでもある。私はその時初めて、自分が握っていたはずの人生のハンドルを、いかに他人に委ねきっていたかを思い知ったのだ。」




